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幼少期編
王都へ(2)
しおりを挟む王都への道は、まだ暫くかかる。
大体二日程掛かるらしく、それまでは馬の上だ。
俺は、その間が魔力適正を知るためのリミットだと考えている。
まず、適正を知るにはステータスを見ることが必要だ。
もしかしたら別の方法もあるのかもしれないが、今はそれしか無い。
では次に、どうしたらそのステータスを見れるだろうか。
一般的には、”鑑定”とかそうゆうスキルで見れたりするのだが、この世界での仕組みは分からない。
なら、見せてもらうのはどうだろうか。
しかしこれだと、プライバシーに関わるために駄目だといわれる可能性が高い。
なにより、その所為であらぬ疑いをされたら堪らない。
ならばこの方法は却下だろう。
そうなると、他の方法を探すしか無い。
魔力適正が聞いて複製出来るかどうかを試してみるか。
「すみませんキールさん。キールさんの魔力適正って何ですか?」
「私、ですか?私は”絶空”ですよ」
「絶空、とは?」
「なんでも、空間の領域の支配権を入手し、その空間内での重力を変化させる魔法らしいです」
「なるほど」
ふむ。
これを複製すれば適正が取得出来るのだろうか。
とりあえず、複製発動。
【複製により、”絶空””取得””炎剣””強奪””反撃”を取得しました。尚、死亡記録も存在します】
ん?
この内容を見ると、俺が殺した相手の魔力適正、ということか?
もしかして、俺の複製って、かなり有用なんじゃないか?
とりあえず、ステータスを開いた。
____________________________________________
≪名前≫ リュウ・シルバー
≪LV≫ 12
≪魔力適正≫ 複製 神力 氷抵抗 炎電 保管庫 絶空 取得 炎剣 強奪 反撃 弱毒
≪スキル≫ 魔法技能 暗算 成長促進 剣術 成長補正 自然魔力
≪称号≫ 女神の慈悲 女神の心 神々の黄昏 神の代行者
____________________________________________
これは・・・・・・・・・・・・・・
ハッキリ考えて、かなり強くなっただろう。
まず、魔法が使えるだけでかなり優遇される世界だ。
このステータスは、ハッキリ分かるほどに異常だ。
一応、ステータスは見られないように警戒しておこう。
そう考えた俺は、次に鍛錬をどうしようかと思った。
日中は馬に乗ったままなのだ。
何か出来るだろうし、しないというのも勿体無い。
ならば、鍛錬をするべきだと思った。
◆◇◆◇◆◇◆
夜、俺達の一行は森の中で野営をしていた。
テントを幾つか張り、見張りを立てて監視している。
一番危険なのは、盗賊や危険な魔物だ。
弱い魔物類は、俺達のように大量の人間には突っ込まない。
魔力を感じ取り、直感で逃げ出すのだ。
そこは、上位の魔物よりも下位の魔物の方が賢いといえるのかも知れない。
俺は日中魔法の鍛錬をしていたこともあって、かなり魔力が少ない。
そのため、テントで休憩しておくことになっている。
魔法の鍛錬をキールさんの後ろで行っていたのだが、そこからキールさんの態度が変わった。
何故か、俺の方が偉いように振舞うのだ。
まあ、今のところは苦労していないので大丈夫だ。
騎士団の者も、副団長の態度を疑問視している。
「リリナ、どうした?」
「お兄ちゃん・・・・・・・・・・えっと・・・」
リリナがやって来たので声を掛けると、少し俯いた。
小声で何かを呟いているが、此処までは聞こえないのだ。
「中入る?」
「・・・・・・・・・・うん!」
そう提案すると、途端に明るい笑みを見せた。
(うん。リリナはやっぱり笑顔が一番だな)
中は俺専用のテントとなっていて、寝具のみがある。
まあ、どのテントも寝具しか無いのだが。
明かりは俺の”炎電”で創った炎を松明に灯している。
とりあえず床に腰を下ろすと、リリナは立ったままだ。
そして、なんとかして何かを伝えようとしている。
少し不可解だが、喋るように待つことしか出来ない。
「どうした?」
「あ、あの、その・・・・・・・・・・・・お兄ちゃん」
「うん?」
「わ、私と一緒に、ね、寝てくれないぃ・・・・?」
最後の方は恥ずかしかったのか、どんどん声が小さくなった。
しかし、何を言いたいのかは分かった。
まあ、問題はほとんど無いから良いだろう。
「良いよ」
「ッ・・・・・・・・・・ありがとう!」
笑顔になったリリナは、テントから出て行った。
それを見送った俺は、掌から炎の剣を召喚した。
これは、”炎剣”による魔法だ。
この魔法には、”炎の剣を創る”という単純な効果しか無い。
その代わりに、絶大な切れ味と熱量を持っているのだ。
それこそ、普通の建物や、果ては魔法すら斬れるだろう。
その剣を持った感覚は、ほとんど重量を感じないことだ。
剣の形を象っているが、物質は炎。
やはり、重さはほとんど無いのが問題に繋がるかもしれない。
そこで俺は剣を消し、テントの入り口を見た。
そこから、リリナが入って来る。
手には、簡易枕と簡易掛け布団がある。
それを床に置いたリリナは、俺の隣に座った。
俺は無言でテントの上を眺めている。
この布を超えた先には、今や満点の星空が広がっているのだろう。
そんな空を思いながら、俺は横になった。
それに習ってリリナも横になり、俺の隣になった。
リリナの体温を少しだけ感じながら、俺の意識は沈んでいく。
五歳の子供は、やはり睡眠が大事な時期のようだ。
明日は、他の騎士団員の魔力適正も聞き出せたら良いと思う。
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