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幼少期編

逃亡生活

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悲鳴が聞こえない。

そう理解したのは、村から逃げ出してすぐのことだった。

必死に走った俺とリリナは、なんとか逃げ切ることが出来た。



そこで考える余裕が出来た俺は、その違和感に気付いたのだ。

燃え盛る炎の音も、盗賊達の高笑いも、風の音も聞こえる。

なのに、逃げる村人達の悲鳴はまったく聞こえなくなったのだ。



つまり、全員死んだか、全員が物凄く遠くに行ったか。

どちらかは分からないが、生きていてほしいと思う。

俺を育ててくれた村なのだ。



悲しいかといえばそうだし、悔しい。

でも、リリナが無事だったことが何よりも俺に安堵を与えてくれる。

なんとしても、リリナだけは守り抜かないといけないのだ。





【称号”神の代行者”を解放しました】





そんな声が聞こえたのは、その時だった。

驚いた俺だが、害が無いのは数秒で分かった。

そして、称号という言葉を思い出し、俺はステータスを開いた。

_____________________________________



【名前】 リュウ・シルバー(佐藤 亮太)



【LV】 3



【魔力適正】 複製 神力 氷抵抗 炎電 保管庫 弱毒



【スキル】 魔法技能 暗算 成長促進 剣術 成長補正 自然魔力



【称号】 女神の慈悲 女神の心 神々の黄昏 神の代行者

______________________________________



新たに三つの情報が増えている。

”成長補正”・”自然魔力”・”神の代行者”だ。

恐らく、スキルは称号を得たことで取得したのだろう。



自然魔力は、先ほどから感じる魔力のことだろう。

ハッキリと自分とは違う属性の魔力が、自身に当たっている。

これに魔力を込めると、自分の魔力に塗り換わっていく。



どうやら、これで魔力を操れるようだ。

自分の魔力で自然の魔力を塗り替えると、その魔力で他の魔力も塗りつぶせる。

これは、かなり有効な魔法が使えそうだ。



成長補正と神の代行者は分からないが、まあ駄目なものではないだろう。

それに、今は戦える力があるだけで充分だ。

拳を握り締めて、俺は王都の方角に目を向けた。



恐らく、軍が到着するのはまだ先だろう。

しかし、それまで俺は此処にいるしかない。

この世界の地理も何も知らない俺とリリナでは、奴隷にされて終わりだ。



そんな運命は御免だし、リリナが大切だ。

暫くは、村が見える範囲で狩りをしながら生活しなくてはいけないだろう。

最低限、俺は魔法が使えるし、リリナはかなり聞き分けが良い。



暫くの間なら待っていられるはずだ。

それまで、なんとか生き延びなければならない。

まずは、今日の分の食料を手に入れるべきだろう。



俺は後ろに広がる森に向かって足を進めた。

リリナもその横に続き、しっかりと俺を見ている。

俺も、リリナの目を見て微笑んだ。





  ◆◇◆◇◆◇◆





この森の中には大して強い魔物がいないことが幸いだった。

俺は、既に何度か戦闘を行い、敵を殺している。

その際、食べられる生き物は”保管庫”に収納している。



”保管庫”は、近所の人が持っていたのだが、かなり便利だ。

これさえあれば、持ち物の削減が可能だからだ。

既に、二日分の食料が確保出来た。



軍が来るのを四日後と仮定したならば、かなり良い方だろう。

日が暮れるのを頃合に、俺とリリナは近くの洞窟に入った。

此処は、村の人間のみが知る森の中で遭難した時のための洞窟だ。



中には最低限の日用家具がそろえられており、生活することが可能だ。

此処を、俺の氷抵抗で光の屈折を利用して隠れている。

中では炎電の炎を明かりの代わりに活用しているが、その光量はかなり少ない。



明かりに気付かれたら、堪らないからだ。

簡易的な動物の焼肉を作り食べた。

味はそこまで良いものでは無かったが、空腹だったこともあって完食した。



リリナは、流石の技量で文句も言わずに食べてくれた。

これには感謝し切れずに今度お礼をすることで決定した。

床に寝転がるとすぐに睡魔はやってきて、俺は眠った。



盗賊に襲われる、という体験をした夜にしては、静かな空間だった。
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