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英雄、学園への入学(教師)
破邪ノ英雄と大暴走
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学園へと教師として赴任するまで、残り2週間を切った。
そんな今日、俺は今更に重大なミスに気付いていた。
「この姿じゃ、教師というよりも生徒だな……」
そう、俺の姿は、何かの禁呪で、12、3歳くらいの見た目になっているのだ。
そのため、このままじゃ教師としては仕事していられないだろう。
(どうする……?)
自問自答するが、良い答えは見つからない。
なんたって、自身の姿を大人に見せることなどしたこもがないらかだ。
「……気分転換でもするか」
そう誰にともなく呟き、俺はギルドへと向かった。
街中を歩きながら周囲の喧騒に耳を傾けると、新しい情報が頭に流れ込んでくる。
色々な話、声、表情、様々な情報が入ってきて、頭が覚醒するようにも思える。
中天から照りつける太陽が、輝かしく日差しを向けている。
「そういえば……だ……ねぇ」
「たい…だ…ねぇ」
ふと、耳に届いた言葉は、俺をその場に留まらせるのには充分だった。
興味を持った俺は、少しだけ位置を変えて、話し声の聞こえる建物の壁に背を預けた。
「まさか、ダンジョンで大暴走が発生するなんてね?」
「ああ。騎士達が大勢で乗り込んだから大丈夫なはずだけど」
「誰も傷付かないで欲しいね」
「その通りだね」
大暴走とは、ダンジョン、迷宮で発生する魔物の大発生のことだ。
狩られずに溜まってしまった魔物達が、流れるように迷宮の外へと溢れ出して来る。
_以前なら、嬉々として乗り込んだ”イベント”だったな。
そんなことを内心で考えながら、俺はさらに耳を傾けた。
「でも、大暴走って10年ぶりくらいでしょ?」
「ええ。以前は私達も子供の時だったわ。騎士達が何人も死んだらしいよ」
_大丈夫なのか?
そこまで聞いて、俺の頭の中にそんな考えが浮かんだ。
此処10年だけでも、人々の劣化は隠しきれない。
以前発生したのが10年前で、その時にも多数の犠牲者が出たなら、今度は――
そんな俺の考えが現実味を帯びると同時に、冷たい感触が背中を走った。
もし、成功しなかったら――
もし、生還者が0だったら――
もし、魔物と行き違いになったら――
「俺とシュンじゃ、勝てないぞ……?」
無意識に、そう呟いていた。
幸い、誰にも聞かれなかったようだが、募る不安は拭いきれない。
迷宮で生まれた魔物は、特殊な特性を持っている。
――迷宮外での、大幅な能力上昇だ。
その増幅される効果は、数倍に留まらず、数十倍にまで達する。
能力が相当落とされた魔物だとしても、数十倍まで強化されれば、成す術は無いだろう。
シュンはリィナとステファニーの護衛に当てると考えると、俺1人で魔物を討伐していくことになる。
だが、大暴走とはそんな考えでは甘過ぎる災厄だ。
以前の時代でも、同胞が大暴走へと乗り込んで息絶える姿を何度も見た。
「大丈夫、なのか?」
もう一度。
「平気なのか?」
気付けば俺は、迷宮へ向けて走り出していた。
技能が自動で発動し、暴風を引き起こしながら道を進み行く。
通った場所に風圧の道が出来るくらい、誰にも視認されないくらいの速度だ。
目前に迫った露店を右に曲がり、すぐに左へ曲がる。
そのまま真っ直ぐ進んだ後に、左に曲がった。
_短縮ッ!!
行き止まりの手前から家を跳び越え、反対の道へと降り立つ。
足への反動を抑える暇も惜しんで、そのまま走り出した。
勿論、まったく問題も無い可能性もある。
だが、100%は存在しない。
99.9%の確立でも、今その0.1%が起きない確証は何処にも無いのだ。
_見えたッ!!
迷宮の入り口が見えたと同時に、俺は走る速度をさらに一段階上げた。
_【初手の剛撃】!!
迷宮の入り口に飛び込むと同時に、前方へ大きく衝撃波を放った。
人へは無害なこの魔法の効果は――――
__あった!!
何かの塊を弾き飛ばす感覚が感じられると同時に、視界が広がった。
見えたのは、無数の狼の群れであった。
そのどれもが、俺へと紅に染まった瞳で睨みつけ、口元を激しく震わしている。
「グウゥ……ワウッ!!」
1匹が、俺目掛けて跳躍してきた。
恐らく、無害な敵と判断していたのだろう。
_勝てる!!
この油断仕切った狼たちを見て、俺はそう内心で叫んだ。
人の血の匂いが充満しており、目を凝らせば周囲には剣や盾が無造作に捨てられている。
「【デュランダル】!!」
右手に具現化した剣を1払いすると、狼の腹は綺麗に斬れ、そのまま血へ落ちた。
「間に合ったか……」
そう呟き、戦闘へと意識を切り替えた。
そんな今日、俺は今更に重大なミスに気付いていた。
「この姿じゃ、教師というよりも生徒だな……」
そう、俺の姿は、何かの禁呪で、12、3歳くらいの見た目になっているのだ。
そのため、このままじゃ教師としては仕事していられないだろう。
(どうする……?)
自問自答するが、良い答えは見つからない。
なんたって、自身の姿を大人に見せることなどしたこもがないらかだ。
「……気分転換でもするか」
そう誰にともなく呟き、俺はギルドへと向かった。
街中を歩きながら周囲の喧騒に耳を傾けると、新しい情報が頭に流れ込んでくる。
色々な話、声、表情、様々な情報が入ってきて、頭が覚醒するようにも思える。
中天から照りつける太陽が、輝かしく日差しを向けている。
「そういえば……だ……ねぇ」
「たい…だ…ねぇ」
ふと、耳に届いた言葉は、俺をその場に留まらせるのには充分だった。
興味を持った俺は、少しだけ位置を変えて、話し声の聞こえる建物の壁に背を預けた。
「まさか、ダンジョンで大暴走が発生するなんてね?」
「ああ。騎士達が大勢で乗り込んだから大丈夫なはずだけど」
「誰も傷付かないで欲しいね」
「その通りだね」
大暴走とは、ダンジョン、迷宮で発生する魔物の大発生のことだ。
狩られずに溜まってしまった魔物達が、流れるように迷宮の外へと溢れ出して来る。
_以前なら、嬉々として乗り込んだ”イベント”だったな。
そんなことを内心で考えながら、俺はさらに耳を傾けた。
「でも、大暴走って10年ぶりくらいでしょ?」
「ええ。以前は私達も子供の時だったわ。騎士達が何人も死んだらしいよ」
_大丈夫なのか?
そこまで聞いて、俺の頭の中にそんな考えが浮かんだ。
此処10年だけでも、人々の劣化は隠しきれない。
以前発生したのが10年前で、その時にも多数の犠牲者が出たなら、今度は――
そんな俺の考えが現実味を帯びると同時に、冷たい感触が背中を走った。
もし、成功しなかったら――
もし、生還者が0だったら――
もし、魔物と行き違いになったら――
「俺とシュンじゃ、勝てないぞ……?」
無意識に、そう呟いていた。
幸い、誰にも聞かれなかったようだが、募る不安は拭いきれない。
迷宮で生まれた魔物は、特殊な特性を持っている。
――迷宮外での、大幅な能力上昇だ。
その増幅される効果は、数倍に留まらず、数十倍にまで達する。
能力が相当落とされた魔物だとしても、数十倍まで強化されれば、成す術は無いだろう。
シュンはリィナとステファニーの護衛に当てると考えると、俺1人で魔物を討伐していくことになる。
だが、大暴走とはそんな考えでは甘過ぎる災厄だ。
以前の時代でも、同胞が大暴走へと乗り込んで息絶える姿を何度も見た。
「大丈夫、なのか?」
もう一度。
「平気なのか?」
気付けば俺は、迷宮へ向けて走り出していた。
技能が自動で発動し、暴風を引き起こしながら道を進み行く。
通った場所に風圧の道が出来るくらい、誰にも視認されないくらいの速度だ。
目前に迫った露店を右に曲がり、すぐに左へ曲がる。
そのまま真っ直ぐ進んだ後に、左に曲がった。
_短縮ッ!!
行き止まりの手前から家を跳び越え、反対の道へと降り立つ。
足への反動を抑える暇も惜しんで、そのまま走り出した。
勿論、まったく問題も無い可能性もある。
だが、100%は存在しない。
99.9%の確立でも、今その0.1%が起きない確証は何処にも無いのだ。
_見えたッ!!
迷宮の入り口が見えたと同時に、俺は走る速度をさらに一段階上げた。
_【初手の剛撃】!!
迷宮の入り口に飛び込むと同時に、前方へ大きく衝撃波を放った。
人へは無害なこの魔法の効果は――――
__あった!!
何かの塊を弾き飛ばす感覚が感じられると同時に、視界が広がった。
見えたのは、無数の狼の群れであった。
そのどれもが、俺へと紅に染まった瞳で睨みつけ、口元を激しく震わしている。
「グウゥ……ワウッ!!」
1匹が、俺目掛けて跳躍してきた。
恐らく、無害な敵と判断していたのだろう。
_勝てる!!
この油断仕切った狼たちを見て、俺はそう内心で叫んだ。
人の血の匂いが充満しており、目を凝らせば周囲には剣や盾が無造作に捨てられている。
「【デュランダル】!!」
右手に具現化した剣を1払いすると、狼の腹は綺麗に斬れ、そのまま血へ落ちた。
「間に合ったか……」
そう呟き、戦闘へと意識を切り替えた。
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