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英雄と王女。学園まで1ヶ月

破邪ノ英雄、休日を満喫する?

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 教師陣として学園に向かうのを1ヶ月後に控えた今日。

 俺は、特にすることも無く、休日となっていた。

 以前ならば、毎日が戦いの日々だったが、今は違う。勿論、万が一に備えて鍛えるという手段もアリだが、それの必要はあまり無い。



 詳しくは割愛するが、俺の身体能力は時が経つ程強化されていくのだ。

 自身で鍛えるのも必要だが、それでも既に1000年分くらいの運動を終えている。

 暫く何もしなくとも、半永続的に力は増え続けていくだろう。



 という訳で、今日は休日だ。



「では、とりあえず街に向かおうと思う」



「ん?分かった。じゃあ、レイのいない間は、僕が公爵家を守るね!」



「シュンが守るのはリィナだろうが」



「てへっ」



 男がそれをやっても気持ち悪いだけなのに、シュンがやると意外と様になっている。

 これが、男なのに男では無いという奴なのだろうか。



「あ、今絶対僕を侮辱したでしょ?」



「いや?それよりも、リィナが呼んでるぞ」



「え!?嘘ッ!」



 そう告げると、シュンは一瞬で屋敷の奥へと消えていった。



 _まったく。アイツも人間らしくなったな。



 思わず溜息が零れてしまうのは、どうしようも無いのだろう。



「では、行ってくる」



 返事が無い挨拶をしてから、俺は屋敷を出た。久しぶりの外だ。

 中庭には何度か出ていたが、こうやって玄関から外に出るのは久しぶりである。

 眼下に広がる街を見下ろしながら、俺は歩き始めた。



「賑わっていそうだな」



 人々の行き交う街を見ながらそう考え、俺は坂を下った。

 この屋敷は、どうやら小高い丘の上に立っているようだった。




 街に辿り着くと、先ほどの言葉通りの光景があった。



「いらっしゃい!新鮮な野菜だよ!」



「おらぁ!獲れたての獅子肉だぞぉ!」



「おばちゃん!あと銅貨一枚まけて!」



「邪魔だ邪魔だ」



 五月蝿いくらいの喋り声が聞こえ、足音が鳴り響いている。

 賑わっている、という評価だけでは、過小評価かもしれない。



 _さて。まずは、この時代の金を集めないとな



 そう考え、俺は少し遠くに見える高い建物へと足を向けた。

 以前の、神話時代の金貨という類なら異常な量を持っているが、この時代でそれが使えるかは不明だ。

 公爵から少しだけ貰っているが、それは全て銀貨と呼ばれるものだった。



 まあ、何をするのか、と聞かれた時に何もしない、と答えたのが悪いのだが。

 しかし、何があるのかすら分からないのだからしょうがない。



 今俺が向かっているのは、ステファニーから聞いた、ギルドという施設だ。

 そこで、魔物や魔獣の討伐を仕事として受けられ、金を貰うことが出来るらしい。

 以前から考えれば、革命とも呼べる事業だ。



 その建物、ギルドは、街の中心に存在する。

 そこへ辿り着いた俺は、すぐに中へと入った。扉の前で立ち止まるのは、常識的にも邪魔だろう。



 中は、ギルドというよりかは居酒屋に近かった。

 テーブルが幾つも設置され、中年の男達が酒を飲んで騒いでいる。

 俺が中に入ったことにすら気付かない者もいるようだ。



 そんな連中は無視しておいて、俺は受付に向かった。



「はい。御用は何でしょうか?」



「すまないが、初めて来たのでな。依頼を受けたいのだが」



「ギルドカードはお持ちでしょうか?」



「いや、無いな」



「分かりました。それでは、作成しますので、此方に記入してください」



 対応してくれたのは、蒼い髪をした綺麗な女性だった。

 慣れた作業なのか、戸惑うことも無く紙を差し出され、驚愕したのは秘密だ。

 出された紙を見ると、様々なことの記入項目があった。



 _まぁ、正直に書けば大丈夫だろう。



 ____

 職業 破邪ノ英雄



 LV 3209



 特技 神剣術 最上級魔法



 魔物討伐最高階級 4000



 魔物討伐最高階級個体名 破壊ノ邪神



 住居 天空城最上階・英雄ノ間



 年齢 4031



 備考

 ____




 正直に書いたのだが、大丈夫だろうか。



「出来た」



「はい。……………………承りました」



 女性が紙に目を通した瞬間、落胆の表情が見えたのは何故だろうか。



「それでは、この水晶に手を乗せて、質問に答えてください」



「?分かった」



 言われた通りに水晶に手を置くと、淡く水色に光った。

 それを見て、女性は1つ頷き、俺と視線を合わせる。

 此方も、蒼い瞳をしている。



「この紙に書いたことは真実ですか?」



「?ああ。真実だ」



「……………え?なんで…………」



 俺が答えたあと、水晶を見つめていた女性だが、暫く経つと途端に戸惑い始めた。

 どうしたのだろうか。

 俺は、水晶を見つめながら、技能を発動させた。



 <真実の水晶>

 この水晶の上に手を乗せた人物の証言が、嘘か真実かを判定する。

 嘘だった場合は、水晶は赤く輝き、真実だった場合は淡く水色に輝く。



 つまりは、俺の書いた紙が事実とは思えなかったってことか。



「嘘………英雄…?………!!ッ!!……ご、ごめんなさい!!英雄様とは知ら「静かに」…」



 だんだんと顔を青くさせていき、大声を出そうとしていた。

 咄嗟に俺は女性の口を塞ぎ、なんとか周知しなくて済んだようだ。



 _まあ、男達からの殺意は素晴らしいほど膨れ上がったが。



 女性が対応した時から、若干の殺意があったのだが、今では驚くほどに増えている。

 まあ、個々が弱過ぎる殺意の所為でまったく脅威でもないのだが。



「頷いてくれるだけでいい。落ち着いたか?このことは喋っては駄目だ」



「(コクコク)」



「なら良い」



 そうやって手を離すと、女性は顔を赤くして奥へと入って行った。

 まあ、流石に公衆の面前で口を塞がれるというのは侮辱だろう。

 内心で謝罪を告げながら、俺はその場で待っていた。





 __女性が、ギルドカードを作成するのを忘れていることも知らずに。
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