4 / 33
英雄と親友と令嬢と
破邪ノ英雄、下界に降りる
しおりを挟む
以前の時代での暦、<戦歴>は、現在の暦では<神歴>と記されている。
その時代に住まう全ての人々が、現在の人々にとって有り得ない位の力を有しているからだ。
それこそ、一般兵1人に対して、近衛騎士が100人は必要とされるほどに、だ。何故、此処まで具体的に数える事が出来るのか、というと、それは一度、その時代の兵士と戦いが起きたからだ。
現在の暦、<聖歴>において、たった一度だけ、大きな戦いが起きた。
「古代戦争」と呼ばれるその戦争は、神歴の時代の一般兵士が突如として現れ、人々を襲ったのだ。
その数、100という以前では少なすぎる程であったが、この時代においては災害ものだ。
各地で激しい戦いが起こり、国1つと街4つを犠牲にして、その数を減らした。
残った最後の兵士はそれでも暴れ続け、その兵士に対して、100の近衛騎士を行使したのだ。それでも、生き延びた近衛騎士は数名に過ぎなかった。
________________________________
パタン。
本を閉じる音が、静かな部屋に響いた。
「やっぱり、勇者様に頼るしか無いのかしら……………フィーリアッ」
翡翠の色をした髪を煌かせて、その女性は頬を伝う涙を拭っていた。
夜空に輝く月は、そんな彼女を見て、ただ輝くだけだ。
ただ、その輝きが、何時もより、嬉しそうに感じられるのは、何故なのだろうか。
◆◇◆◇◆
城へと駆け抜けた俺は、すぐさま宝物庫へと向かった。幾つもの扉を越え、角を曲がった先に、黒く重々しい扉が鎮座している。
その鍵を開ける手間すら面倒で、駆けながら右腕を引き絞った。
「ハァッ!!!」
短い気合の声と同時に右腕を前方に突き出す。その先が、扉と触れた瞬間。
激しい音と煙が舞い上がり、視界を塞いだ。
_無手7階級単発技<ウェーブナックル>
大きく穴の開いた扉を通り抜けて、その先にある幾つかの道具を収納した。
無魔法による、異空間に物を移動させたのだ。これで、荷物が格段に減らすことが出来る。輝く剣も、黄金の果物も、神の鎧も、全てが異空間に収納されていく。
見渡す限りの物を収納した俺は、そのまま天空城から飛び出し、浮遊島を駆け抜けた。
(全配下に通達!今より100年の間、下界への進軍を禁止する!!この浮遊島、しいては天空城の防衛を任せる!だが、何よりも自分の命を大事にしてくれよ!?俺の力の一部はお前達が担っているんだからな!)
なるべく広範囲に伝わるように声を響かせ、そのまま浮遊島の端まで走り抜けた。
視界が晴れ渡り、青空が見えると同時に、前方の地面は跡形も無く消える。
身に纏った黒のロングコートを風に揺らしながら、地を全力で蹴った。風が心地良い勢いで感じられ、その後一瞬で猛烈な壁となって叩きつけられる。
「我願うは大いなる障壁!全てを防ぎ、流す盾をわが身に!『防壁プロテクション』!!」
落下を始めるからだの前に透明な板が出現し、ほとんどの空気圧が失せた。
眼下を見下ろすと、丁度雲に突っ込む形となり、視界が奪われた。
「にしても、何故力が衰えるような現象が発生したんだ?なによりも、俺の加護を与えられたあいつ等が半減させられるような魔法は、存在しなかったはずだ」
そう呟きながら考える俺は、気配察知に懐かしい反応が侵入してきたことに気付いた。
「レーーーーーーイーーーーーーーー!!!!!!」
「ん?シュンか!!」
遠方から聞こえた声に振り向くと、そこには親友である<シュン>の姿があった。
彼は、東にある小さな島国からやってきた人間で、転移してきたらしい。シュンと出会ったのは戦争の中で、意気投合した俺達は親友となっていた。
お気に入りの神竜から造った大剣<バハムート>を背に掲げ、大好きだという『妖精の羽』によって飛行している。髪と目が黒という、ニホンの特徴らしい姿をしている。
「どうしたんだ?下界で勇者をしていると聞いたぞ?以前のシュンは、勇者じゃなくて英雄に成りたいと言っていいたはずだが?」
「ああ!それは、レイが英雄になったから、俺は勇者になろう!って考えたんだよ!だって、レイはチートを貰った俺よりもチートなんだから!」
この、チートという言葉はレイが良く使うのだが、どういう意味が含まれているのだろうか?
以前から聞こうとは思っているのだが、どうにも面倒な予感がしている。
まあ、とりあえずはシュンと現状を確認することにして、俺達は空中に浮遊した。
その時代に住まう全ての人々が、現在の人々にとって有り得ない位の力を有しているからだ。
それこそ、一般兵1人に対して、近衛騎士が100人は必要とされるほどに、だ。何故、此処まで具体的に数える事が出来るのか、というと、それは一度、その時代の兵士と戦いが起きたからだ。
現在の暦、<聖歴>において、たった一度だけ、大きな戦いが起きた。
「古代戦争」と呼ばれるその戦争は、神歴の時代の一般兵士が突如として現れ、人々を襲ったのだ。
その数、100という以前では少なすぎる程であったが、この時代においては災害ものだ。
各地で激しい戦いが起こり、国1つと街4つを犠牲にして、その数を減らした。
残った最後の兵士はそれでも暴れ続け、その兵士に対して、100の近衛騎士を行使したのだ。それでも、生き延びた近衛騎士は数名に過ぎなかった。
________________________________
パタン。
本を閉じる音が、静かな部屋に響いた。
「やっぱり、勇者様に頼るしか無いのかしら……………フィーリアッ」
翡翠の色をした髪を煌かせて、その女性は頬を伝う涙を拭っていた。
夜空に輝く月は、そんな彼女を見て、ただ輝くだけだ。
ただ、その輝きが、何時もより、嬉しそうに感じられるのは、何故なのだろうか。
◆◇◆◇◆
城へと駆け抜けた俺は、すぐさま宝物庫へと向かった。幾つもの扉を越え、角を曲がった先に、黒く重々しい扉が鎮座している。
その鍵を開ける手間すら面倒で、駆けながら右腕を引き絞った。
「ハァッ!!!」
短い気合の声と同時に右腕を前方に突き出す。その先が、扉と触れた瞬間。
激しい音と煙が舞い上がり、視界を塞いだ。
_無手7階級単発技<ウェーブナックル>
大きく穴の開いた扉を通り抜けて、その先にある幾つかの道具を収納した。
無魔法による、異空間に物を移動させたのだ。これで、荷物が格段に減らすことが出来る。輝く剣も、黄金の果物も、神の鎧も、全てが異空間に収納されていく。
見渡す限りの物を収納した俺は、そのまま天空城から飛び出し、浮遊島を駆け抜けた。
(全配下に通達!今より100年の間、下界への進軍を禁止する!!この浮遊島、しいては天空城の防衛を任せる!だが、何よりも自分の命を大事にしてくれよ!?俺の力の一部はお前達が担っているんだからな!)
なるべく広範囲に伝わるように声を響かせ、そのまま浮遊島の端まで走り抜けた。
視界が晴れ渡り、青空が見えると同時に、前方の地面は跡形も無く消える。
身に纏った黒のロングコートを風に揺らしながら、地を全力で蹴った。風が心地良い勢いで感じられ、その後一瞬で猛烈な壁となって叩きつけられる。
「我願うは大いなる障壁!全てを防ぎ、流す盾をわが身に!『防壁プロテクション』!!」
落下を始めるからだの前に透明な板が出現し、ほとんどの空気圧が失せた。
眼下を見下ろすと、丁度雲に突っ込む形となり、視界が奪われた。
「にしても、何故力が衰えるような現象が発生したんだ?なによりも、俺の加護を与えられたあいつ等が半減させられるような魔法は、存在しなかったはずだ」
そう呟きながら考える俺は、気配察知に懐かしい反応が侵入してきたことに気付いた。
「レーーーーーーイーーーーーーーー!!!!!!」
「ん?シュンか!!」
遠方から聞こえた声に振り向くと、そこには親友である<シュン>の姿があった。
彼は、東にある小さな島国からやってきた人間で、転移してきたらしい。シュンと出会ったのは戦争の中で、意気投合した俺達は親友となっていた。
お気に入りの神竜から造った大剣<バハムート>を背に掲げ、大好きだという『妖精の羽』によって飛行している。髪と目が黒という、ニホンの特徴らしい姿をしている。
「どうしたんだ?下界で勇者をしていると聞いたぞ?以前のシュンは、勇者じゃなくて英雄に成りたいと言っていいたはずだが?」
「ああ!それは、レイが英雄になったから、俺は勇者になろう!って考えたんだよ!だって、レイはチートを貰った俺よりもチートなんだから!」
この、チートという言葉はレイが良く使うのだが、どういう意味が含まれているのだろうか?
以前から聞こうとは思っているのだが、どうにも面倒な予感がしている。
まあ、とりあえずはシュンと現状を確認することにして、俺達は空中に浮遊した。
0
お気に入りに追加
91
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
かりそめの侯爵夫妻の恋愛事情
きのと
恋愛
自分を捨て、兄の妻になった元婚約者のミーシャを今もなお愛し続けているカルヴィンに舞い込んだ縁談。見合い相手のエリーゼは、既婚者の肩書さえあれば夫の愛など要らないという。
利害が一致した、かりそめの夫婦の結婚生活が始まった。世間体を繕うためだけの婚姻だったはずが、「新妻」との暮らしはことのほか快適で、エリーゼとの生活に居心地の良さを感じるようになっていく。
元婚約者=義姉への思慕を募らせて苦しむカルヴィンに、エリーゼは「私をお義姉様だと思って抱いてください」とミーシャの代わりになると申し出る。何度も肌を合わせるうちに、報われないミーシャへの恋から解放されていった。エリーゼへの愛情を感じ始めたカルヴィン。
しかし、過去の恋を忘れられないのはエリーゼも同じで……?
2024/09/08 一部加筆修正しました
転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
魔銃士(ガンナー)とフェンリル ~最強殺し屋が異世界転移して冒険者ライフを満喫します~
三田村優希(または南雲天音)
ファンタジー
依頼完遂率100%の牧野颯太は凄腕の暗殺者。世界を股にかけて依頼をこなしていたがある日、暗殺しようとした瞬間に落雷に見舞われた。意識を手放す颯太。しかし次に目覚めたとき、彼は異様な光景を目にする。
眼前には巨大な狼と蛇が戦っており、子狼が悲痛な遠吠えをあげている。
暗殺者だが犬好きな颯太は、コルト・ガバメントを引き抜き蛇の眉間に向けて撃つ。しかし蛇は弾丸などかすり傷にもならない。
吹き飛ばされた颯太が宝箱を目にし、武器はないかと開ける。そこには大ぶりな回転式拳銃(リボルバー)があるが弾がない。
「氷魔法を撃って! 水色に合わせて、早く!」
巨大な狼の思念が頭に流れ、颯太は色づけされたチャンバーを合わせ撃つ。蛇を一撃で倒したが巨大な狼はそのまま絶命し、子狼となりゆきで主従契約してしまった。
異世界転移した暗殺者は魔銃士(ガンナー)として冒険者ギルドに登録し、相棒の子フェンリルと共に様々なダンジョン踏破を目指す。
【他サイト掲載】カクヨム・エブリスタ
頭が花畑の女と言われたので、その通り花畑に住むことにしました。
音爽(ネソウ)
ファンタジー
見た目だけはユルフワ女子のハウラナ・ゼベール王女。
その容姿のせいで誤解され、男達には尻軽の都合の良い女と見られ、婦女子たちに嫌われていた。
16歳になったハウラナは大帝国ダネスゲート皇帝の末席側室として娶られた、体の良い人質だった。
後宮内で弱小国の王女は冷遇を受けるが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる