上 下
1 / 10
序章

ふわぁ・・・・・眠い

しおりを挟む

朝。

「ふわぁ・・・・・あー・・・・【召喚・召使いサモン・デーモン】」

『朝食で御座います』

「さんきゅー」

黒い人の形をしたナニかが渡してきた、パンに野菜を挟んだサンドイッチ。
パクリと咥えれば、新鮮な野菜の味が染みて、そこにパンの柔らかさがマッチしてくる。

「・・・・美味い」

「お褒めに預かり、光栄に御座います」

恭しく一礼したナニかは、そのまま”瘴気”となって霧散していった。
アイツが消え去るときは、大抵誰かが来るということだ。

「・・・・相変わらず、意味わかんねぇ生活してんなぁ?」

「礼儀がなってないぞ?せめて俺の家でくらい静かにしろ」

「そこは他人の家でくらい静かに、だろ」

そうなのか?

「そうなんだよ」

「ほう。俺の考えが読めるのか?」

「ああそうだな。お前の間抜けな顔面に大きく書いてありましたよ」

刺々しいながらも親しい声音で話してくる男。
確か名前をオムレツとか言った気が・・・・・

「ウイルズだよ。お前もいい加減覚えろよ?」

「ああそうだったな。すっかり忘れてた」

訂正。
ウイルズだった。
そういえば、東の方にある国では、害のある”きん”というモノをウイルスと呼んだ気がするな。

「そうなのか?」

「ああ?何の話してるのか分からねぇよ」

心の底から分からないといった顔で聞いてくるウイルズに、首を傾げる俺。
確か、心が読めるのでは無かっただろうか?

「・・・・・・・・そういう奴だったな、お前」

「その言い方だと、何だか蔑まれているような気がするな?」

「気のせい気のせい。とりあえず、さっきのは言葉の綾だ。人の心なんて読めねぇよ」

そういうことか。
納得したお陰か、苛立ちも収まってきた。
まあ、イライラする時は殺せばきっと収まるだろう・・・・・・・・・・・

っと。
そういえば、こんな考えになってしまうのは駄目なんだっけな?
確か、400年前・・・・・程昔に父が言っていた気がする。

何だっただろうか?
確か――

『いいか。お前は人じゃない。だからこそ、その異常性を知られないようにするんだ。いいな?』

だっただろうか。
その忠告をしっかりと聞きうけたお陰で、俺も今ではすっかり人間界に馴染んでいる。

「そうか。まあいい。それで?今日も仕事だろう?」

「ああ、今日も頼むぜー」

文面だけを見ると、かなり怪しい男だなウイルズは。
まあけれど、内心はしっかりとした男だとわかっている。
なにせ、【読心】を使ったんだからな。

「――――って、聞いてるか?」

「ん?すまない、もう一度言ってくれ」

どうやら、物思いに更けていたようだ。
反省反省、と内心で呟きながら、俺は耳を傾けた。
金とやらは家に大量にあるし、稼ぐだけなら1日で国程度買えるくらいには稼げるだろう。

けれどまあ、稼いでも使い道が無いし、何よりも動くのは面倒だ。
体が鈍らない程度で良い。

「――――ホントに聞いてるのか?」

「ん?聞いてないな。もう一度頼む」

にしても、俺も歳を取ったのだろうか。
考え事に集中すると、周りの声が一気に遮断されるようになってしまった。
以前、といっても200年ほどまえは全盛期なのだろうかと疑う程に今の俺の調子は悪いな。

「じゃあ、よく聞けよ?――お前の仕事は、精霊術の取得だ」

「・・・・・・は?」

いや、遂に耳まで壊れてしまったのかもしれない。
なにせ、俺の耳には今精霊術禁句が聞こえたような気がしたのだから。

「だから、精霊術を取得するのが仕事だよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・死にたいか?」

気付けば、ウイルズの周囲、360度全てに”小規模”の<最上級魔法>が展開され、俺の右手には錬金術によって創り出した<神剣>が握られ、その切っ先はウイルズに向けられていた。
まさに、1秒にも満たない出来事。

しかし、俺にとって1秒とはに過ぎない。
戦闘程度に1秒も掛けるのならば、そいつの程度が知れているだろう。
『天守雨龍』に2秒チャレンジをした時は、俺の貧弱さの所為で殺すのに1.3392秒も掛かってしまった。

思い出すだけで、あの龍には謝罪したくなってくるな。

っと、俺の悪い癖だな。
本題を見失ってしまった。
俺が全盛期より培ってきた、魔王とかいう人類最大の敵を秒で殺せるを放ち、俺はウイルズを睨みつけた。

「・・・・・・・・・・・・」

「?なんだ、この程度で気絶するほどに弱かったのか」

案外、俺の力量を測る”眼”も腐っているのだろうか。
この国の中で最も強い男だと判断されたから少なくともくらいはあるのかと思っていた。
けれど、この様子からすると・・・・・・・

「んー・・・・・・魔王0.02体分か?」

あくまで、人類の平均能力値の100倍を魔王の力量と判断した場合、だがな。
気絶したウイルズに『二度と精霊術なんていう言葉を放つな。聞かせるな。sの時点で殺す』と書いた紙を放り投げ、家を出る準備をした。

もう、この場所に用は無い。

「【転移】」

さ、次の住居を探すかな。なんて考えながら、俺はその姿は春か遠方の未だ知らぬ地へと飛ばした。

(ふわあ・・・・・眠い)

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

鬼神の刃──かつて世を震撼させた殺人鬼は、スキルが全ての世界で『無能者』へと転生させられるが、前世の記憶を使ってスキル無しで無双する──

ノリオ
ファンタジー
かつて、刀技だけで世界を破滅寸前まで追い込んだ、史上最悪にして最強の殺人鬼がいた。 魔法も特異体質も数多く存在したその世界で、彼は刀1つで数多の強敵たちと渡り合い、何百何千…………何万何十万と屍の山を築いてきた。 その凶悪で残虐な所業は、正に『鬼』。 その超絶で無双の強さは、正に『神』。 だからこそ、後に人々は彼を『鬼神』と呼び、恐怖に支配されながら生きてきた。 しかし、 そんな彼でも、当時の英雄と呼ばれる人間たちに殺され、この世を去ることになる。 ………………コレは、そんな男が、前世の記憶を持ったまま、異世界へと転生した物語。 当初は『無能者』として不遇な毎日を送るも、死に間際に前世の記憶を思い出した男が、神と世界に向けて、革命と戦乱を巻き起こす復讐譚────。 いずれ男が『魔王』として魔物たちの王に君臨する────『人類殲滅記』である。

気づいたら隠しルートのバッドエンドだった

かぜかおる
ファンタジー
前世でハマった乙女ゲームのヒロインに転生したので、 お気に入りのサポートキャラを攻略します! ザマァされないように気をつけて気をつけて、両思いっぽくなったし ライバル令嬢かつ悪役である異母姉を断罪しようとしたけれど・・・ 本編完結済順次投稿します。 1話ごとは短め あと、番外編も投稿予定なのでまだ連載中のままにします。 ざまあはあるけど好き嫌いある結末だと思います。 タグなどもしオススメあったら教えて欲しいです_|\○_オネガイシヤァァァァァス!! 感想もくれるとうれしいな・・・|ョ・ω・`)チロッ・・・ R15保険(ちょっと汚い言葉遣い有りです)

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

頭が花畑の女と言われたので、その通り花畑に住むことにしました。

音爽(ネソウ)
ファンタジー
見た目だけはユルフワ女子のハウラナ・ゼベール王女。 その容姿のせいで誤解され、男達には尻軽の都合の良い女と見られ、婦女子たちに嫌われていた。 16歳になったハウラナは大帝国ダネスゲート皇帝の末席側室として娶られた、体の良い人質だった。 後宮内で弱小国の王女は冷遇を受けるが……。

【R15】人生は彼女の物語のなかに(生真面目JKの魂が異世界の絶世の美人王女の肉体に?!運命の恋?逆ハーレム?それどころじゃありません!)

なずみ智子
ファンタジー
いろんな意味でヤバすぎる絶世の美人王女の肉体にて人生続行中です。 4月。高校受験に失敗した15才の少女・河瀬レイナは、現在の状況を受け入れられず、滑り止めの高校の環境にもになじむことができずに、欝々とした日々を送っていた。 そんなある日、レイナは登校中に暴走車に轢かれ、死亡してしまった。 だが、滅んだのはレイナの肉体だけであったのだ。 異世界のとある王国の王族に忠誠を誓う女性魔導士アンバーの手により、彼女のその魂だけが、絶世の美貌と魅惑的な肉体を持つ王女・マリアの肉体へといざなわれてしまった。 あたりに漂う底冷えするような冷気。そして、彼女を襲うかつてない恐怖と混乱。 そのうえ、”自分”の傍らに転がされていた、血まみれの男の他殺体を見たレイナは気を失ってしまう。 その後、アンバーとマリア王女の兄であるジョセフ王子により、マリア王女の肉体に入ったまま、レイナは城の一角にある部屋に閉じ込められてしまったのだが……  ※お約束のイケメンはまあまあの数は出てきますが、主要人物たちの大半(主人公も含め)が恋愛第一主義でないため、恋愛要素とハーレム要素はかなり低めです。 ※第4章までの本編は1話あたり10,000文字前後ですが、第5章からの本編は1話あたりの文字数を減らしました。※ ※※※本作品は「カクヨム」にても公開中です※※※

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

かつてダンジョン配信者として成功することを夢見たダンジョン配信者マネージャー、S級ダンジョンで休暇中に人気配信者に凸られた結果バズる

竜頭蛇
ファンタジー
伊藤淳は都内の某所にあるダンジョン配信者事務所のマネージャーをしており、かつて人気配信者を目指していた時の憧憬を抱えつつも、忙しない日々を送っていた。 ある時、ワーカーホリックになりかねていた淳を心配した社長から休暇を取らせられることになり、特に休日に何もすることがなく、暇になった淳は半年先にあるS級ダンジョン『破滅の扉』の配信プロジェクトの下見をすることで時間を潰すことにする. モンスターの攻撃を利用していたウォータースライダーを息抜きで満喫していると、日本発のS級ダンジョン配信という箔に目が眩んだ事務所のNO.1配信者最上ヒカリとそのマネージャーの大口大火と鉢合わせする. その配信で姿を晒すことになった淳は、さまざまな実力者から一目を置かれる様になり、世界に名を轟かす配信者となる.

処理中です...