28 / 37
捜索
しおりを挟む
「困りましたねぇ」
頬杖をついて遠い目をしているのはセイ・ルー。彼は、深刻な問題を二つ抱えていた。
一つは、要としてラセルの所在がつかめないこと。
そして、もう一つは……、
「セイ・ルー、食事が出来ましたわ」
語尾にハートマークをつけそうな勢いで駆け込んで来たのはメイシア。引きつった笑顔で礼を述べるセイ・ルーをマリムが冷たい視線で睨みつける。
「マリムっ、その視線やめてくださいよっ。仕方ないでしょう? 私はピグルの作法など知らなかったのですからっ」
小声で、訴える。
「まさか手の甲にキスするのが正式なプロポーズ法だったなんて……、」
そう精霊の間では当たり前の行動が、ピグルにとっては一生に一度の大切な儀式だったのだ。自分の取った軽はずみな行動に、セイ・ルーは反省しきりなのであった。
「メイシアちゃんはすっかりその気ですぞっ。一体どうするんですかっ」
マリムが返す。
「撤回するいい方法はないんですか? マリム、」
溜息交じりに言うと、マリムはふんっと鼻で笑い腕を組んだ。
「ないこともないですがね」
「……何を喋ってるの?」
メイシアが皿を片手に尋ねる。
慌てる二人。
「あっ、何でもないですよメイシアっ」
「いい匂いがするなー、って言ってたんですぞ、メイシアちゃん!」
「そう?」
メイシアは鼻歌など歌いながら、食事の支度をしていたのだ。アーリシアンは、というと、布団の中である。
「アーリシアンはまだ寝てるんですか?」
「そうみたいですな。『果報は寝て待て』を忠実に再現しているようで」
うむ、とマリムが唸った。
このままでは少しも前には進まない。なんとかして打開策を見つけなければならない。セイ・ルーはメイシアの作った手料理を食べながら、頭をフル回転させていた。
(ラセルと連絡をとる方法はないもんだろうか? ……白の術にはそんなものないし、それならラセルの方から連絡をとる手段はないのか? ……って、あればとっくに連絡が来てる頃だしなぁ)
ラセルが姿を消してから、もう丸一日が過ぎている。ムシュウも姿を現さないし、万が一相打ちだった、なんて事だったら一体これからどうすればいい?
「って、そうか!」
カツン、とスプーンをテーブルに置くと、驚いているマリムとメイシアをそのままに寝室へと飛び込む。ベッドでゴロゴロしているアーリシアンに声を掛けた。
「アーリシアン、ちょっといいですかっ?」
「なぁにぃ?」
だるそうに声を上げるアーリシアン。本当なら、女性の眠っている部屋に転がり込むなど失礼極まりない行動だったが、思い立ったが吉日だ。セイ・ルーは無礼と知りつつアーリシアンの額に自らの手を置いた。
「私、別に病気じゃないよ? セイ・ルー」
アーリシアンが不思議そうに声を掛けてくる。
「わかってますよ。ちょっとの間、じっとしててくださいね」
意識を研ぎ澄ます。アーリシアンとラセルは契約を結んでいるのだ。今、ラセルがどこにいるかまで読み取れずとも、安否の確認くらいは出来る筈。アーリシアンの体を通じてラセルの気配を追おうというのである。
「……まさか、」
研ぎ澄まされた意識の向こう側、ぼんやりと浮かぶラセルの気配。追って、追って、そして捕まえようと手を伸ばす。
「遠い、」
思った以上に大変な作業だった。セイ・ルーは一度手を退けると、アーリシアンに向かって言った。ドアの向こうからはマリムとメイシアが何事かとばかりにこちらを覗き込んでいる。
「アーリシアン、少しの間、ラセルのことだけを考えてくれませんか?」
「私はいつだってラセルのことばっかり考えてるよっ?」
「いえ、そうではなく、集中して欲しいのです。出来る限りでいいですから」
「集中?」
アーリシアンにとっては一番難しい注文かもしれない。なにしろ今まで、ひとつのことに集中などしたことないのだから。
しかしラセルの名を聞いた途端、アーリシアンはガバッと布団を跳ねのけ言ったのだ。
「ラセルに集中するっ!」
「では、やってみましょう。もしかしたら居場所がわかるかもしれない」
「うんっ」
俄然、やる気である。
アーリシアンは「集中」の意味などよくわからなかったが、とにかくラセルの事を考えた。ラセルの怒った顔、ラセルの笑った顔、ラセルの困った顔、ラセルの……、
(どこに行っちゃったのよ、ラセル。私を一人にしないでよっ。私、ラセルがいないと不安で仕方ないよっ)
思い出すにつけ、寂しさや心細さががこみ上げてくる。会いたい。今、すぐに。
(ラセル!)
そして、その想いはセイ・ルーと見事に同調した。
「いた!」
セイ・ルーがそう叫んだ瞬間、アーリシアンの体が発光する。キラキラと青白い光を纏い、そしてパッと消えた。
消えたのだ。
「……アー…リシ…アン?」
今の今までそこにいたはずのアーリシアンの名を呼んでみる。が、当然返事はない。
「ええっ?」
頭を抱えるセイ・ルー。
「なんですっ、これは一体どういうことですかっ、セイ・ルー!」
「消えてしまった……?」
マリムとメイシアとが寝室に入り込み、辺りをキョロキョロ伺った。
「なんでアーリシアンが消えたんですかっ」
「どうしたんですのっ?」
矢継ぎ早に言葉を発する二人を制し、呼吸を整える。
「今、アーリシアンの意識を通じてラセルの居場所を突き止めようとしたんです。で、」
「でっ?」
「なんですのっ?」
「で、ラセルの気配が感じ取れたので、なんとか捕まえようと手を伸ばしたんです。ラセルは無事で、どうしてか、天上界にいるみたいで……」
「天上界にっ?」
「そんなっ」
「……で、パッとラセルの意識を捕まえた瞬間、その……アーリシアンを飛ばしてしまったような、」
「アーリシアンさんだけ移動させたってことですの?」
「はぁ……まぁ、そんなつもりはなかったんですが、アーリシアンの意思が伝わってきたのは確かです。ラセルに会いたい、と。それで、私の力を通じて勝手に飛んで行ったようでして……、」
そんなことが可能なのか、セイ・ルーにはわからなかった。ただ、あの瞬間に感じたのはアーリシアンの、強い思念。そうだ、天上界でも似たような事があった。アーリシアンに命ぜられ、地上への道を開いたとき。あのときも逆らえない強い力に動かされてしまったのだ。あの力は一体なんなのだろう?
「じゃあ、二人は天上界にっ? そうと知ったらこうしちゃおれん! セイ・ルー、行きますぞ!」
「……行くって?」
「天上界に決まってるでしょうっ」
マリムが拳を突き上げた。
「ええっ?」
「そうですわね。ラセルさんが天上界にいるということは、ムシュウもそこにいるはず。さぁ、参りましょうか、セイ・ルー!」
メイシアもその気である。
「……天上界に……ですかぁ?」
一人、憂鬱なセイ・ルーであった。
頬杖をついて遠い目をしているのはセイ・ルー。彼は、深刻な問題を二つ抱えていた。
一つは、要としてラセルの所在がつかめないこと。
そして、もう一つは……、
「セイ・ルー、食事が出来ましたわ」
語尾にハートマークをつけそうな勢いで駆け込んで来たのはメイシア。引きつった笑顔で礼を述べるセイ・ルーをマリムが冷たい視線で睨みつける。
「マリムっ、その視線やめてくださいよっ。仕方ないでしょう? 私はピグルの作法など知らなかったのですからっ」
小声で、訴える。
「まさか手の甲にキスするのが正式なプロポーズ法だったなんて……、」
そう精霊の間では当たり前の行動が、ピグルにとっては一生に一度の大切な儀式だったのだ。自分の取った軽はずみな行動に、セイ・ルーは反省しきりなのであった。
「メイシアちゃんはすっかりその気ですぞっ。一体どうするんですかっ」
マリムが返す。
「撤回するいい方法はないんですか? マリム、」
溜息交じりに言うと、マリムはふんっと鼻で笑い腕を組んだ。
「ないこともないですがね」
「……何を喋ってるの?」
メイシアが皿を片手に尋ねる。
慌てる二人。
「あっ、何でもないですよメイシアっ」
「いい匂いがするなー、って言ってたんですぞ、メイシアちゃん!」
「そう?」
メイシアは鼻歌など歌いながら、食事の支度をしていたのだ。アーリシアンは、というと、布団の中である。
「アーリシアンはまだ寝てるんですか?」
「そうみたいですな。『果報は寝て待て』を忠実に再現しているようで」
うむ、とマリムが唸った。
このままでは少しも前には進まない。なんとかして打開策を見つけなければならない。セイ・ルーはメイシアの作った手料理を食べながら、頭をフル回転させていた。
(ラセルと連絡をとる方法はないもんだろうか? ……白の術にはそんなものないし、それならラセルの方から連絡をとる手段はないのか? ……って、あればとっくに連絡が来てる頃だしなぁ)
ラセルが姿を消してから、もう丸一日が過ぎている。ムシュウも姿を現さないし、万が一相打ちだった、なんて事だったら一体これからどうすればいい?
「って、そうか!」
カツン、とスプーンをテーブルに置くと、驚いているマリムとメイシアをそのままに寝室へと飛び込む。ベッドでゴロゴロしているアーリシアンに声を掛けた。
「アーリシアン、ちょっといいですかっ?」
「なぁにぃ?」
だるそうに声を上げるアーリシアン。本当なら、女性の眠っている部屋に転がり込むなど失礼極まりない行動だったが、思い立ったが吉日だ。セイ・ルーは無礼と知りつつアーリシアンの額に自らの手を置いた。
「私、別に病気じゃないよ? セイ・ルー」
アーリシアンが不思議そうに声を掛けてくる。
「わかってますよ。ちょっとの間、じっとしててくださいね」
意識を研ぎ澄ます。アーリシアンとラセルは契約を結んでいるのだ。今、ラセルがどこにいるかまで読み取れずとも、安否の確認くらいは出来る筈。アーリシアンの体を通じてラセルの気配を追おうというのである。
「……まさか、」
研ぎ澄まされた意識の向こう側、ぼんやりと浮かぶラセルの気配。追って、追って、そして捕まえようと手を伸ばす。
「遠い、」
思った以上に大変な作業だった。セイ・ルーは一度手を退けると、アーリシアンに向かって言った。ドアの向こうからはマリムとメイシアが何事かとばかりにこちらを覗き込んでいる。
「アーリシアン、少しの間、ラセルのことだけを考えてくれませんか?」
「私はいつだってラセルのことばっかり考えてるよっ?」
「いえ、そうではなく、集中して欲しいのです。出来る限りでいいですから」
「集中?」
アーリシアンにとっては一番難しい注文かもしれない。なにしろ今まで、ひとつのことに集中などしたことないのだから。
しかしラセルの名を聞いた途端、アーリシアンはガバッと布団を跳ねのけ言ったのだ。
「ラセルに集中するっ!」
「では、やってみましょう。もしかしたら居場所がわかるかもしれない」
「うんっ」
俄然、やる気である。
アーリシアンは「集中」の意味などよくわからなかったが、とにかくラセルの事を考えた。ラセルの怒った顔、ラセルの笑った顔、ラセルの困った顔、ラセルの……、
(どこに行っちゃったのよ、ラセル。私を一人にしないでよっ。私、ラセルがいないと不安で仕方ないよっ)
思い出すにつけ、寂しさや心細さががこみ上げてくる。会いたい。今、すぐに。
(ラセル!)
そして、その想いはセイ・ルーと見事に同調した。
「いた!」
セイ・ルーがそう叫んだ瞬間、アーリシアンの体が発光する。キラキラと青白い光を纏い、そしてパッと消えた。
消えたのだ。
「……アー…リシ…アン?」
今の今までそこにいたはずのアーリシアンの名を呼んでみる。が、当然返事はない。
「ええっ?」
頭を抱えるセイ・ルー。
「なんですっ、これは一体どういうことですかっ、セイ・ルー!」
「消えてしまった……?」
マリムとメイシアとが寝室に入り込み、辺りをキョロキョロ伺った。
「なんでアーリシアンが消えたんですかっ」
「どうしたんですのっ?」
矢継ぎ早に言葉を発する二人を制し、呼吸を整える。
「今、アーリシアンの意識を通じてラセルの居場所を突き止めようとしたんです。で、」
「でっ?」
「なんですのっ?」
「で、ラセルの気配が感じ取れたので、なんとか捕まえようと手を伸ばしたんです。ラセルは無事で、どうしてか、天上界にいるみたいで……」
「天上界にっ?」
「そんなっ」
「……で、パッとラセルの意識を捕まえた瞬間、その……アーリシアンを飛ばしてしまったような、」
「アーリシアンさんだけ移動させたってことですの?」
「はぁ……まぁ、そんなつもりはなかったんですが、アーリシアンの意思が伝わってきたのは確かです。ラセルに会いたい、と。それで、私の力を通じて勝手に飛んで行ったようでして……、」
そんなことが可能なのか、セイ・ルーにはわからなかった。ただ、あの瞬間に感じたのはアーリシアンの、強い思念。そうだ、天上界でも似たような事があった。アーリシアンに命ぜられ、地上への道を開いたとき。あのときも逆らえない強い力に動かされてしまったのだ。あの力は一体なんなのだろう?
「じゃあ、二人は天上界にっ? そうと知ったらこうしちゃおれん! セイ・ルー、行きますぞ!」
「……行くって?」
「天上界に決まってるでしょうっ」
マリムが拳を突き上げた。
「ええっ?」
「そうですわね。ラセルさんが天上界にいるということは、ムシュウもそこにいるはず。さぁ、参りましょうか、セイ・ルー!」
メイシアもその気である。
「……天上界に……ですかぁ?」
一人、憂鬱なセイ・ルーであった。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる