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もう、見えなくなっちまった。
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最後に顔を見た時、いや、最後じゃなかったな。ん?どうだったか。
とにかく前に見た時あいつは校舎裏の芝生で四つん這いになっていた。
よくマンガとかであるように小説を読んでたわけじゃなかった。タバコを吸ってた訳でもなかった。金髪の巻き毛には砂埃が付いていた。綺麗なお顔にもついていた。
4月らしい春の青空の下、あいつは目を皿にして芝生に這いつくばっていた。
何やってんだ
そう聞いた時あいつは初めてオレに気付いたみたいだった。
けど返事をする舌を落っことしちまったのか、返事をする気がなかったのか、言葉の意味が分からなかったのか。
あいつは返事をせず、また芝生とにらめっこを始めた。薄情な妹だぜ。あの調子だと今度は目を落っことしそうだぜ。
「見つけた!」
急にあいつは顔と大声を上げた。
ビビったぁ。
何をだよ
「四つ葉のクローバー」
あいつはにへぇと笑った。
「これでお兄ちゃんもあたしも幸せになれるよ!」
1個しかねぇからお前1人分だな
そう誂った瞬間オレは初めて未来を察知した。その察知は当たり、あいつはまた芝生に這いつくばった。
そういや東洋に「口は災いのもと」って言葉があったな。当っちまったよ。
めんどくせー
オレも探すよ
オレも芝生の草をかき分け始めた。誰も来ないように祈りながら。
もうちょいしたら寮の門限がある。女子寮は男子より30分早いから時間がねえ。ねえ時間を捻って会いに来てやったのによ。
見っけ
見つけたもんをあいつの髪に挿してやった。
「ほんと!?」
あいつはニッコニコ顔だ。
時間がないから寮に帰れよ。
「じゃあこれはお兄ちゃんの」
そう言ってオレの手にさっきあいつが見つけたくちゃくちゃになったクローバーを乗せてきた。
「これで2人分だね!」
だな
あいつは寮に向かって走り出した。
オレはともかくあいつならどこ行っても幸せになれるな。
ただの願望かもしんねえけど、口に出したら本当になるだろ。
オレがいなくなってもあいつは幸せになる。
もうじきあいつは1人になっちまうけど……。
走っていったあいつの後ろ姿が霞んだ。もう、見えなくなっちまった。
とにかく前に見た時あいつは校舎裏の芝生で四つん這いになっていた。
よくマンガとかであるように小説を読んでたわけじゃなかった。タバコを吸ってた訳でもなかった。金髪の巻き毛には砂埃が付いていた。綺麗なお顔にもついていた。
4月らしい春の青空の下、あいつは目を皿にして芝生に這いつくばっていた。
何やってんだ
そう聞いた時あいつは初めてオレに気付いたみたいだった。
けど返事をする舌を落っことしちまったのか、返事をする気がなかったのか、言葉の意味が分からなかったのか。
あいつは返事をせず、また芝生とにらめっこを始めた。薄情な妹だぜ。あの調子だと今度は目を落っことしそうだぜ。
「見つけた!」
急にあいつは顔と大声を上げた。
ビビったぁ。
何をだよ
「四つ葉のクローバー」
あいつはにへぇと笑った。
「これでお兄ちゃんもあたしも幸せになれるよ!」
1個しかねぇからお前1人分だな
そう誂った瞬間オレは初めて未来を察知した。その察知は当たり、あいつはまた芝生に這いつくばった。
そういや東洋に「口は災いのもと」って言葉があったな。当っちまったよ。
めんどくせー
オレも探すよ
オレも芝生の草をかき分け始めた。誰も来ないように祈りながら。
もうちょいしたら寮の門限がある。女子寮は男子より30分早いから時間がねえ。ねえ時間を捻って会いに来てやったのによ。
見っけ
見つけたもんをあいつの髪に挿してやった。
「ほんと!?」
あいつはニッコニコ顔だ。
時間がないから寮に帰れよ。
「じゃあこれはお兄ちゃんの」
そう言ってオレの手にさっきあいつが見つけたくちゃくちゃになったクローバーを乗せてきた。
「これで2人分だね!」
だな
あいつは寮に向かって走り出した。
オレはともかくあいつならどこ行っても幸せになれるな。
ただの願望かもしんねえけど、口に出したら本当になるだろ。
オレがいなくなってもあいつは幸せになる。
もうじきあいつは1人になっちまうけど……。
走っていったあいつの後ろ姿が霞んだ。もう、見えなくなっちまった。
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