守護うさぎ

神永 遙麦

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守護うさぎ

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 大人になろうとしているうさぎはひょいと望遠鏡を覗き、今日も人間たちは慌ただしく細々と動いていることを確認した。

 日本の守護者となってからもう少しで1年経つ、あと1週間で。
 元旦、虎さんに役目を譲られたあと、赤子同然だった僕は守護者として精一杯頑張った。去年、虎さんは上手くやれず、「日本」という島国に衝撃が走るほどの大事件を起こしてしまった時、母ちゃんは「駄目な虎」だと思ったらしい。
 虎さんですら上手く行かなかったんだ。うさぎの僕に何が出来るだろうか?

 それでも僕は精一杯、世界を良くしようと決めて頑張った。だけど、空回りしてしまった。
 どこかの問題をどうにかしようとしたら、争いが起きてしまった。小さな子が親に殴られているから、助けを求めさせるために泣いてもらったら、小さい子はいなくなってしまった。
 どうすればいいのか分からなくなって、僕はちょっぴり、ほんのちょっぴり泣いてしまった。あまりに自分が不甲斐なくて……。

 でもそれからは、小さな幸せが降り積もるように頑張った。
 あそこのお父さんは初めて手取り給料が20万を超えた。小さな迷子ちゃんにはおもちゃ売り場に留まってもらった(するとお母さんに発見された)。関西の男の子はノーミスで弾ききり、ピアノコンクールで優勝した。戦地には静かな夜を。あっちはシュトーレンが上手く焼けた。あそこのハイスクールの子はガールフレンドを連れて家族と聖夜を過ごした。そこでは蕎麦が特売をやっている。


 もう少しすれば、赤ちゃん龍くんと交代する。
 今年の元旦、虎さんの表情は解放感と寂しさ、そしてどこかスッキリとしていた。
 来年、龍くんと交代する時、僕は一体どんな表情をが出来るんだろう? そして、再来年、龍くんが次の子と交代する時、龍はどんな表情をしているんだろう?
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