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現代から不思議の国へ:少女時代
間話 花嫁修行
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吹雪く2月から、5月となり私フリーダもまた1つ歳を重ねました。エルサ様の婚約が決まってから4ヶ月。未だ婚姻の準備を始められずにおります。
エルサ様には文官として、私の孫娘マカレナが就きました。また、お付きの護衛として男爵の未亡人であるアンネリースが就きました。
ですが、エルサ様は困惑なさっているようです。
「ねえフリーダ、文官にはどういう役割があるの? 私はどうすればいいの?」
「エルサ様はハイド伯爵の第一夫人となられるから、ついたのでしょう。主に事業を行うさいに、手足として用いる者なのですが……」
本音を申しますと、事業も社交もなさらない、と言うよりは外部との交流に制限を掛けられているエルサ様に文官がいるのか、分かりかねます。
エルサ様は考え込むように首を傾げました。それから何か思い浮かんだのか突然、マカレナの名を呼びました。
「ねえ、マカレナ。レース編みや刺繍の仕方を教えてくださらない?」
「えっ? 承知しました」
マカレナは承諾はしましたが、助けを求めるようにこちらを見ています。マカレナ、困惑しているのは私もです。
エルサ様がなさるべきことは1日でも早く初潮を迎えられること。ですがそれは人の力ではどうにもならぬもの。次にするべきことはベールの刺繍です。ですが初潮を迎えられぬ限りは婚姻の準備を始められません。そうなると、刺繍やレース編みの練習をなさることはとても良いことですが……文官にさせることなのでしょうか?
「こんな感じかしら?」とエルサ様が刺繍枠を掲げました。
エルサ様の刺繍枠にはピンク色のお花が咲いております。エルサ様は簡単な縫い物は出来るそうで、刺繍の模様が歪なこと以外はこれといった問題はないようです。
マカレナは自分の刺繍枠を見下ろしています。どうしたのかしら?
マカレナは「お嬢様は飲み込みが早いお方なのですね。私が初めて刺繍をした時よりもずっと綺麗ですもの」と感動したように呟きました。
マカレナ、あなたが初めて刺繍をしたのは7歳の時だったでしょう。こうして見ているとマカレナは教師役としては優秀なのですね。それにマカレナの花嫁修行が順調なようで何よりです。
エルサ様が静かに立ち上がりました。
「フリーダ、少し席を外します」と、アンネリースと共に部屋を出て行かれました。
それからマカレナは両頬に手を当て感嘆したように私を見ました。
「お祖母様、お嬢様は本当にお美しい方ですね! それに外国人とは思えないほど綺麗にゴーディラック語を話しますのね!」
「マカレナ、分かっているとは思うけど」
「分かっています、お祖母様。お嬢様が外国人だということは内密なのでしょう。ちゃんとお兄様にもお母様にもお友達にも漏らしておりませんわ」
「それなら安心ね」
「でも誰もいない時にお嬢様に外国のお話を伺った てみたいわ」
「旦那様から許可を取ってからになさい」
マカレナの「お嬢様」自慢を聞いていると、青白い顔をしたエルサ様が入って来られました。そして一直線に私のもとに近づき、私の耳に口を寄せました。
「フリーダ、月のものが来たの。アンネリースに貰った布を着けているのだけど……。私、どうすればいいの?」
エルサ様には文官として、私の孫娘マカレナが就きました。また、お付きの護衛として男爵の未亡人であるアンネリースが就きました。
ですが、エルサ様は困惑なさっているようです。
「ねえフリーダ、文官にはどういう役割があるの? 私はどうすればいいの?」
「エルサ様はハイド伯爵の第一夫人となられるから、ついたのでしょう。主に事業を行うさいに、手足として用いる者なのですが……」
本音を申しますと、事業も社交もなさらない、と言うよりは外部との交流に制限を掛けられているエルサ様に文官がいるのか、分かりかねます。
エルサ様は考え込むように首を傾げました。それから何か思い浮かんだのか突然、マカレナの名を呼びました。
「ねえ、マカレナ。レース編みや刺繍の仕方を教えてくださらない?」
「えっ? 承知しました」
マカレナは承諾はしましたが、助けを求めるようにこちらを見ています。マカレナ、困惑しているのは私もです。
エルサ様がなさるべきことは1日でも早く初潮を迎えられること。ですがそれは人の力ではどうにもならぬもの。次にするべきことはベールの刺繍です。ですが初潮を迎えられぬ限りは婚姻の準備を始められません。そうなると、刺繍やレース編みの練習をなさることはとても良いことですが……文官にさせることなのでしょうか?
「こんな感じかしら?」とエルサ様が刺繍枠を掲げました。
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マカレナは自分の刺繍枠を見下ろしています。どうしたのかしら?
マカレナは「お嬢様は飲み込みが早いお方なのですね。私が初めて刺繍をした時よりもずっと綺麗ですもの」と感動したように呟きました。
マカレナ、あなたが初めて刺繍をしたのは7歳の時だったでしょう。こうして見ているとマカレナは教師役としては優秀なのですね。それにマカレナの花嫁修行が順調なようで何よりです。
エルサ様が静かに立ち上がりました。
「フリーダ、少し席を外します」と、アンネリースと共に部屋を出て行かれました。
それからマカレナは両頬に手を当て感嘆したように私を見ました。
「お祖母様、お嬢様は本当にお美しい方ですね! それに外国人とは思えないほど綺麗にゴーディラック語を話しますのね!」
「マカレナ、分かっているとは思うけど」
「分かっています、お祖母様。お嬢様が外国人だということは内密なのでしょう。ちゃんとお兄様にもお母様にもお友達にも漏らしておりませんわ」
「それなら安心ね」
「でも誰もいない時にお嬢様に外国のお話を伺った てみたいわ」
「旦那様から許可を取ってからになさい」
マカレナの「お嬢様」自慢を聞いていると、青白い顔をしたエルサ様が入って来られました。そして一直線に私のもとに近づき、私の耳に口を寄せました。
「フリーダ、月のものが来たの。アンネリースに貰った布を着けているのだけど……。私、どうすればいいの?」
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