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第4章 たいせつな人を守りたい

145 ずっと一緒にいたい ※

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 ――このままイかせて。
 そう言うと同時に、ヴァンに跨ったままの姿勢で下からの突き上げ始めた。
 俺は身体をびくびく痙攣けいれんさせながら、堪えきれなくなったヴァンの欲望に身体を踊らせる。

「ひぁ、ぁ、あ、ぁぁ、ぁ!」

 気持ちいい。
 身体の中を掻きまわされ、擦られるのとはまた違う。雄の欲望を叩きつけるような動き。なのに……気持ちいい。摩擦まさつで更に熱を持つ体内に、身体が蕩けていく。

「ぁあ、ぁ、壊れる、壊れちゃう、っあ、ぁ!」
「リク……」
「もっと、ぃい、い、きもち……ぃ……」

 酸欠になりそうで口をぱくぱくさせながら、ヴァンの突き上げに身体をよがらせる。ぐちゅ、ぐちゅっ、と響く水音に耳まで犯されていく。

「ヴァン……もっ、と……」
「……ん……」

 キスをして、キスし続けられない突き上げに喘いで、またキスをして。俺はぎゅうぎゅうに締め付けていく。
 ヴァンの頬が気持ちよさに歪む。

 俺と、ヴァンの間を巡る。
 快感と魔力と、愛しい気持ちが、深く繋がった場所から広がっていく。

 成人した日から何度となく抱き合って来た。
 繋がり合って来た。
 それでも、もう、これで十分……なんて気持ちには、全然ならない。繋がれば繋がるほど、更に深く求めたくなる。
 求めて、求められるのが……嬉しすぎる。

 貪欲だからか。

 好きすぎて、心が壊れちゃっているから……か。

「リク……も、イク……」
「ん……きて、いっぱい……ちょうだい」

 溢れるぐらい。

「全部……出して、俺のなか……いっぱい……に」

 ちょうだい。
 ヴァンの熱も欲も、全部受け止めるから……欲しい。
 ヴァンが、欲しい。

「く……」
「あっ、ぁ、あ、ぁぁ、あっ……んっ――」

 ひときわ深く突き上げられ、俺は腰を捕まえられたまま両手をついて胸を反らす。

「――んんっ!」

 びくっ、びくっ、と俺の中で震える。
 ヴァンから吐き出される。熱い精が更に俺の中を満たしていく。

 甘い痺れが繋がった場所から背筋を駆けのぼり、俺の脳まで蕩かしていく。

「は……ぁ……ぁぁ……」

 上半身を支えていた腕から力が抜けて、そのまま、荒い呼吸のヴァンの胸に倒れ込んだ。

 心臓の鼓動が早い。
 深く、ゆっくりと繰り返される呼吸。
 身体も……汗に光るヴァンの身体も熱くはあったけれど、さっきまでの異様な熱じゃない。俺と魔力を循環させて、吐いた精で、滞っていたものがめぐり始めたのか。

「ヴァ、ン……」
「うん……」

 柔らかな声が返った。
 一度深く息を吐いて、俺の耳元で囁く。

「こんな……はじめて、だ……」
「……ヴァン?」
「魔力まで、巡る……感覚……」

 胸の上で顔を上げた。
 俺の髪をそっと掻き上げてヴァンが微笑む。

「本当にあったんだ……ね」
「今、の……?」

 ヴァンが微笑む。

「……そう、気持ちだけじゃなくて、魔力も……繋がり合う」

 これが正しいやり方だったのかは分からない。けれど穏やかに呼吸を繰り返すヴァンの表情を見れば、間違っていなかったんだ……って感じる。

「俺……すごく、きもちよく……なって……」

 訳が分からなくなった。

「いいんだ……これで」
「……けど」
「リクの幸せな顔が、一番……見たい」

 そう言って繋がりあったまま、ヴァンは俺の肩を抱いた。
 胸の上に頬を乗せて、甘い声を受け止める。

「リクの、嬉しいっていう……顔」
「ヴァン……」
「楽しくて、笑っている顔」
「……ん」

 また、じわ……と目の奥が熱くなって、視界が歪む。
 俺、さっきから泣いてばかりだ。涙腺が壊れたのかな……。

 違う。

 ヴァンが優しすぎて、嬉しすぎて、だから……。

「俺……ヴァンのそばに、いたい」

 そう言って俺は、もとの世界に帰らずこの異世界に留まることを選んだ。
 受け入れられ、これからもきっとヴァンのそばに居られるはずだ。幸せなまま。なのに何故、こんなに切なくなってくるのだろう。

 幸せすぎて怖いから……だろうか。

「ヴァンとずっと一緒にいたい。そばにいさせて」

 俺の髪に指を絡ませ、微笑みながら額に口づける。
 そんなヴァンに、十五歳の時と変わらない願いを口にする。

「ずっと、ずっと、ヴァンのそばに……いたい。そばにいたいよぉ……」

 嗚咽まじりに呟く俺に、ヴァンは微笑む。

「もちろん、ずっと一緒だ」
「ヴァン……」
「僕の命の終わりまで……いや、命を終えても……僕をリクのそばに置いて。石になっても僕はリクを守り続けるから」

 魔力のある者は、命を終えると魔法石となって残る。
 俺にも魔力があるなら……石を、魔法石を残すのだろうか。

「俺の石もヴァンのものだ」
「うん……僕だけの、ものだ……」

 そう囁く、ヴァンの声と腕から力が抜けていく。
 微笑む顔で呟く。

「……リクはとても頑張ったから……ご褒美を、あげないと」
「え……?」

 ご褒美の言葉に俺の顔が熱くなった。

「どんな……の?」
「何がいい……かな……」

 俺の反応を楽しむように、ヴァンが囁く。

「いやらしいことが、いい?」

 俺の唇を指の腹でなぞりながら、声は続く。

「気持ちいいことも、しようね……たくさん……」

 とろとろとした眠りがヴァンを包み込んでいっているのだろう。声はだんだん、うわ言のようになっていく。

「……湖畔にある……小さな家で、昼間から抱き合うんだ。美味しい物を食べたり、イタズラしたり……」
「いたずら?」
「そう……リクの、驚く顔は……いつも可愛い……から……」

 力無く呟く。
 声は途切れて、やがて穏やかな寝息にかわった。
 俺は「うん……」と呟いてヴァンの鼓動に耳を寄せる。

 いつもは俺が先に力尽きて眠ってしまっていた。それをヴァンは、こんなふうに見守ってくれていたのかな……。

「たくさん……いたずらしてよ。俺はヴァンを誘うから……」

 静かな、朝の光をカーテン越しに感じながら、幸せを噛みしめる。

 一度瞼を閉じて、大きく深呼吸をしてから、ゆっくりと上半身を起こした。
 長い金色に光る睫毛。彫りのはっきりとした精悍せいかんな顔立ち。見かけの格好よさだけじゃなくて、人を大切にしてくれる温かさ。
 その唇に俺はそっとキスをして、柔らかな感触を心に刻む。
 
「好き……ヴァン、大好きだよ……」

 誰かを心から愛しいと思える、そんな自分を嬉しく思う。

 このままいつまでも繋がっていたいと感じながら、それても、俺は身体をよじって引き抜いた。その後を追って白濁の精が伝い落ちていく。

「んんっ……」

 この匂いも感触も、ヴァンから与えられたものだと思うと、愛しく感じる。
 それでもこのままにはしておけない。

「待っていて……身体、綺麗にしないと……ね」

 ヴァンなら浄化魔法で、一瞬で綺麗にしてしまうだろうけれど、せっかく眠ったのに起こしたくない。だから俺は重い身体をひきずるようにして、バスルームに向かった。





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