77 / 202
第3章 成人の儀
74 ずっとリクが欲しかった ※
しおりを挟む「逃げ……る?」
思いがけない言葉に俺はヴァンを見上げる。
ヴァンは俺が逃げるとでも思っているのだろうか。逃げたいなんて思うわけが無い。ずっと、俺が望んでいたことなのに。
それとも逃げて欲しいのか?
逃げて欲してくて、ヴァンは強引な手にでたのか?
沈黙が漂う。
俺は……ヴァンを真っ直ぐに見上げる。
「逃げない」
「リク……」
「絶対、逃げない俺は――」
「ここから先、僕はもう止められないだろう。リクが思う以上に僕は嫉妬深くて独占欲が強い。一生、手放さない」
「だったら!」
俺を横に着く腕を掴んで、声を上げる。
「だったら手放さないで! 止めなくていい! 最後まで。どこまでも……」
俺の気持ちはとうの昔に決まっている。
「最後まで受け止めたい。欲しいんだ。俺がこの世界で生きると決めたあの時が、俺にとっての最後のラインだったのだから……」
自覚していなかっただけで、この世界で生きると決めたあの時には、もう既に、俺はヴァンに惹かれていた。
望んでいたのは俺だ。
生まれて初めて、なにをしてでも欲しいと思った人なのだから。
ヴァンの腕を掴む、俺が指が震えてくる。
「……だから、もぅ……これ以上、俺を待たせないで……」
ここから先、何が起こるのか正直俺はよくわかっていない。
散々抱いてほしいと言いながら、具体的にどうするのか分からないまま、誰にも教えてもらわないままに来た。それでも、ヴァンを拒絶するとか逃げるとか、そんな気持ちは微塵も起きない。
ただ……ヴァンの熱が欲しい。
匂いに包まれて、直接、感じたい。
孤独でいるのが当然と思う自分じゃなくて、俺も、人を求めて求められるような……幸せを感じて受け止められるようになりたい。
それだけなんだ。
それを得られるなら、どんなことが起きてもいい。
「ヴァン……」
唇が重なる。
俺はヴァンの首に、肩に、腕を回す。
耳元で低く囁く声がある。
「……僕はずっと、リクが欲しかった」
きゅぅう……と胸が絞られた。
この苦しいほどの感覚を、どうしたら言葉に出来るだろう。
本当に? と問い返す間もなく、重なる唇の間から、もっと熱く濡れた舌が俺の歯列を割って入る。かすかに甘味の残る唾液に、俺の喉が鳴る。
絡んでくる舌にどう応えればいいんだ。
ただ、嬉しいの気持ちをどうにかしたくて……ヴァンの舌を受け入れ、同じように絡め、上顎を、喉を弄られるままに受けとめる。
呼吸が乱れて、息が続かなくなっていく。
「……ぁ……んんっ、んっ……っあ、は!」
ヴァンの肩に回した指が、息苦しさで力が入る度に唇が離れた。
貪るように呼吸を繰り返し、激しく上下する胸が落ち着くとまた、角度を変えたヴァンの唇が深く重なってくる。舌が、奥まで入り込んでくる。
喰われているようだ。
俺の舌を吸い、喉の奥ぎりぎりまで舐めねぶる。苦しさと同時に、身体の芯を痺れさせる、何かスイッチでもあるんじゃないかという感覚。
ぞくぞくする。
痺れと熱で、火花が散っていくような。
「……んんっ、あ……ふ」
枕に深く沈む、俺のうなじに汗がにじむ。
体中がじんじんと痺れるようで、踵でシーツを蹴る。
「んんっ……ん、は……ぁあ、んっ……ヴァ、ン……」
下半身が、甘く、重くなっていく。
止めないでと言ったのは俺なのに、変化していく自分の身体に戸惑い、恐怖が頭をもたげる。俺は俺の身体をどうあつかっていいのか分からない。
「リク……」
「……ぁあ……あ……熱、い……」
離れた唇で空気を求める。
ヴァンは、俺の耳元や首筋に唇を這わせながら、俺のシャツの胸元を開いていく。汗でしっとりと濡れた胸の上を、大きな手のひらが這う。
「きれいだ」
俺の喉元で、チョーカーと繋がった守りの魔法石が光を反射させた。
少し身体を起こしたヴァンが、低く囁く。
「……とても、綺麗だ……」
「ヴァ、ン……」
「……ここも、ここも……」
「ぅう……ぁ、あ」
ヴァンの指が、喉元から胸へとなぞっていく。
その先は膨らみも何も無い胸と突起で、なのにヴァンは嬉しそうにその先端を指先でなぞり、ゆっくりと、ゆっくりとこねていく。
「……ヴァン……そこ……」
「うん、綺麗な色だよ」
くにくにと指の腹で撫で、遊ぶ。
胸の先なんて自分で触っても何も感じないのに、変だ。ヴァンが指の腹でこねている内に、ざわざわと甘い痺れが起きてくる。
「……感じる、の?」
「わ、からない……」
きっと俺はすごく困ったような顔をしているのだと思う。
だって、そんな……男の俺には生涯なんの役にもたたないような、あっても無くてもいいような場所を、ヴァンがうっとりしながら撫で、こねるだけで――。
「こんなに、ぞくぞくしてくる、なんて……」
「……知らなかった?」
シャツの胸元を大きく広げる。
両肩から腕に引っかかっているだけの、胸から腹まではだけた状態でヴァンの目の前に晒される。
「リクはすごく、感じやすい……ね」
指先で摘まみ、こねている左の先端とは反対の、右の方をヴァンが口に含んだ。
「あぁぁ……っ!」
反射的に背筋が沿って首がのけ反る。
さっきまで俺の口の中で散々舌を舐めねぶっていたヴァンの舌が、俺の胸を突起を舐め、こね、歯で甘く噛んで吸う。同時に反対の胸も指先で、潰しなぞられ、つまみ上げられた。
思わずヴァンを押しのけそうになった、その両手首を大きな手でクロスする形で捕まれ、頭の上で枕に押し付けられる。ベッドに縫い付けられる。
「……ぁぁあ、そ、こ……」
「きもちいい?」
「う……ぅう、う……ぁ……」
腕の自由がきかなくなる。ただそれだけでも、ヴァンが、俺を強く求めているように感じてぞくぞくしてくる。
俺、変だ。おかしいよ。
逃げるつもりは無くても、逃げられない、逃がしてもらえないと思うだけで、たまらない気持ちになってくる。
胸をいじる、ヴァンの熱い舌と指が止まらない。
「うん……口と指、どちらが……いい?」
ヴァンの嬉しそうな囁き声と共に、とろけそうになる。
「……ぁあ、あ……どっち、も……」
「どっちも?」
息が……胸や首元をくすぐる。
「……んぅ……う」
「赤く色づいてきた」
「そんなに……同じとこ、ずっと……」
薄目で開けて見ると、弄られすぎて敏感になった胸の先が目に入る。
さんざん指先でいじられ赤く立ち上がったそれと、舌で濡れた胸と……明るい色の前髪の隙間から俺を見つめる、緑の瞳。唇の端を上げ、囁く。
「リクの気持ちのいい場所、全部、おしえて……」
ひりひりするぐらい敏感になった先端を、ヴァンが甘く噛んだ。
11
お気に入りに追加
338
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
おかわり
ストロングベリー
BL
恐ろしいほどの美貌と絶品の料理で人気のカフェバーのオーナー【ヒューゴ】は、晴れて恋人になった【透】においしい料理と愛情を注ぐ日々。
男性経験のない透とは、時間をかけてゆっくり愛し合うつもりでいたが……透は意外にも積極的で、性来Dominantなヒューゴを夜ごとに刺激してくる。
「おいしいじかん」の続編、両思いになった2人の愛し合う姿をぜひ♡
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
社内恋愛にご注意!!
ミミリン
恋愛
会社員の平井マコ(26)は同じ社内の先輩、田所義明(28)と同棲中。そろそろ結婚を視野に入れて幸せな生活を送っていた。
けど、最近彼氏と気持ちが上手く噛み合っていないと思ってしまうことも…。そんなことない!と幸せな結婚に向けて頑張るマコ。
彼氏をデートに誘ったり、食事を作ったり、業務外で仕事を手伝ったりと健気に行動するマコだが…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる