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8話 幸せを願って
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「……ン、ディオン……!」
「ふぇ……カミユ。あ、俺、気絶してた!?」
カミユの声で目を覚ます。俺のベッドに2人仲良くパンイチで寝転んでいた。
「はぁ、良かった……。悪い、やり過ぎたみたいだ……」
「あはは、そんなの謝らないでよ」
カミユらしい。そう思うと自然に笑みが溢れた。でも、カミユの表情は暗いままだった。
「いや、ちゃんと謝らせてくれ。俺、アリス様と正式に婚約した。なのに、俺、お前に手、出して……」
カミユの唇に人差し指を当てて、続きを遮った。
「俺も、分かってる、それくらい。分かってて受け入れたから、俺も同罪だよ」
「ディオン……」
「むしろ、あのままじゃ俺、立ち直れなかったと思うから……。カミユと両想いだって分かっただけでも良かった。なんていうか、これで俺もようやく吹っ切れて、親友の婚約を祝ってあげられそうだよ」
「ごめんな、ディオン……。俺も、今日でお前への気持ちにケジメをつける」
「うん。アリス様、すごく良い人なんだから、ちゃんと愛してあげないと」
「そうだな、ありがとう……」
ベッドから降りて、立ってカミユと向き合う。
「俺、また魔物の討伐再開するよ。だから、また今まで通り、親友として、一緒に討伐行ってくれる?」
「あぁ、もちろんだよ。アリス様もお前のこと心配してたからな。元気な姿見せてあげないと」
「あれ、アリス様、また町に来てるの?」
「あぁ。昨日から正式な婚約の話で屋敷に来てるんだ」
「そっか、じゃぁ早速、もう心配しないでって言いに行かないと」
「だな。今から行くか」
「うん、出かける準備するね」
「了解。俺、外で待ってるな」
⸺⸺
さっきの夢のようなひとときは、最初で最後のこのディオン少年へのご褒美。俺はまた、今まで通り親友のカミユとギルドのお仕事を続けていく。今日を最後に、カミユへの想いは全部断ち切ろう。それで、親友の素敵な婚約を祝って、彼の幸せを心から願おう。
そうして開き直った俺は、部屋から出て外で待つカミユのもとへと向かった。
俺の部屋の窓の先には町長の屋敷が建っている。
まさかそのバルコニーから窓越しに俺らのやり取りを見て涙を流していた人がいたなんて、この時の俺たちは知る由もなかった。
「ふぇ……カミユ。あ、俺、気絶してた!?」
カミユの声で目を覚ます。俺のベッドに2人仲良くパンイチで寝転んでいた。
「はぁ、良かった……。悪い、やり過ぎたみたいだ……」
「あはは、そんなの謝らないでよ」
カミユらしい。そう思うと自然に笑みが溢れた。でも、カミユの表情は暗いままだった。
「いや、ちゃんと謝らせてくれ。俺、アリス様と正式に婚約した。なのに、俺、お前に手、出して……」
カミユの唇に人差し指を当てて、続きを遮った。
「俺も、分かってる、それくらい。分かってて受け入れたから、俺も同罪だよ」
「ディオン……」
「むしろ、あのままじゃ俺、立ち直れなかったと思うから……。カミユと両想いだって分かっただけでも良かった。なんていうか、これで俺もようやく吹っ切れて、親友の婚約を祝ってあげられそうだよ」
「ごめんな、ディオン……。俺も、今日でお前への気持ちにケジメをつける」
「うん。アリス様、すごく良い人なんだから、ちゃんと愛してあげないと」
「そうだな、ありがとう……」
ベッドから降りて、立ってカミユと向き合う。
「俺、また魔物の討伐再開するよ。だから、また今まで通り、親友として、一緒に討伐行ってくれる?」
「あぁ、もちろんだよ。アリス様もお前のこと心配してたからな。元気な姿見せてあげないと」
「あれ、アリス様、また町に来てるの?」
「あぁ。昨日から正式な婚約の話で屋敷に来てるんだ」
「そっか、じゃぁ早速、もう心配しないでって言いに行かないと」
「だな。今から行くか」
「うん、出かける準備するね」
「了解。俺、外で待ってるな」
⸺⸺
さっきの夢のようなひとときは、最初で最後のこのディオン少年へのご褒美。俺はまた、今まで通り親友のカミユとギルドのお仕事を続けていく。今日を最後に、カミユへの想いは全部断ち切ろう。それで、親友の素敵な婚約を祝って、彼の幸せを心から願おう。
そうして開き直った俺は、部屋から出て外で待つカミユのもとへと向かった。
俺の部屋の窓の先には町長の屋敷が建っている。
まさかそのバルコニーから窓越しに俺らのやり取りを見て涙を流していた人がいたなんて、この時の俺たちは知る由もなかった。
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