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10話 僕の立場

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 楽しい食事を終えて、ランス様と一緒に部屋へと戻る。僕の今後の話もしたいからと、そのままランス様のお部屋へとお邪魔した。

 ソファに向かい合わせに座り、ランス様が話を切り出す。
「ルミエル、お前は今自分の立場に戸惑っている事だろう」
「……はい。僕はキャシー姐様と一緒に屋敷の手伝いをしなくていいのか、と思っています」
「結論から言うと、俺はルミエルを使用人として雇うつもりはない。母上がさっきちらっと言っていたが、俺の付き人をしてはくれないだろうか。それも含めて、領主夫人の部屋にお前を置いたんだ」
「付き人……と言うのは、使用人とは違うのですか?」
「違う。屋敷の事を手伝うのではなく、俺の公務に同行したり、主に俺の手伝いをする事になる」
「それでは……今の付き人さんは、どうなってしまうのでしょう?」
「俺は今まで付き人を付けて来なかったんだ。だから前任はいないし、難しい事を押し付けるつもりもない。ただ、俺の側にいてくれたらそれでいいんだ」

 "俺の側にいてくれたらそれでいい"って……なんだかプロポーズされてるようで、僕の心臓がドクンと跳ねた。
「そんな風に言ってもらえて嬉しいです。でも……ランス様は、何で僕なんかにそんな良くしてくれるんですか?」
 今日会ったばかりなのに。いくらなんでも待遇が良すぎる。保護したんなら、孤児たちの仲間入りをさせればいいだろうに。
 ただ単純に疑問に思ってそう尋ねたが、ランス様の顔は真っ赤になっていた。
「それは……正直俺自身もよく分からないんだ。お前を初めて見たときから、直感で助けてやりたい、守ってやりたいと、そう思った。それに……お前の笑顔は……いやされるからな」
「えぇ……!? 癒し……ですか? ぼ、僕が!?」
 そんな事言われたのは人生で初めてで、ボンボンと顔が熱くなってくる。
「……と、とにかく。お前を側に置いておきたい理由はそれだ。それに……ルミエルが今日来てくれたお陰で父上の縁談ラッシュから逃れる事も出来たし、俺にとっても良いこと尽くめではあるんだぞ」

 そっか……。ランス様は結婚したくないから、僕が付き人として領主夫人の部屋を占領する事は彼の為にもなるんだ。
「分かりました。僕なんかがランス様のお役に立てているのなら、僕は喜んであなたの付き人になります」
 僕がそう言うと、ランス様はホッとした表情を見せた。
「ありがとう、そう言ってくれて助かる。では、よろしくな」
 差し出された大きな手を、僕は両手で握り返した。
「はい、よろしくお願いします!」
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