紙屑、ゴミ屑、粗大ゴミ

野田莉帆

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すっぴん

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 洗面所で鏡を見ましてね。
 鏡に映るのは、いつだって自分自身なのですが。

 誰かに似ているな、と思ったわけです。
 荒れ地の魔女のお婆ちゃんが映っておりました。

 30代からは性格が顔に出るらしいのですが。
 思いっきり悪役!
 笑うしかありません。

 子育てによって老け込んでしまったのかもしれませんね。
 人の見た目の8割は髪型で決まるそうですが。

 2ヵ月に1回、美容院に行くこともやめてしまいました。
 カットにトリートメント、カラーとパーマで忙しくしていたのですけどね。

 すっかり地毛の黒髪に戻りましたよ。
 何もしておりません。

 時間が流れるのは本当に早いです。
 お家で娘といるとき、よく考えるのですよ。

 ずっと2人で一緒に過ごしています。
 同じようなものを食べて、同じような時間に寝ています。

 確実に、娘は成長していきます。
 そして、確実に野田は老いていくのです。

 同じ日々を繰り返しているだけに思えるのですが。
 永遠に、同じ日々が続くわけではありません。

 外出するごとに、実感します。
 若くて美しい娘と老いた野田の図が出来上がっていく過程を。

 仕方がないですね。
 自然の摂理ですから。

 それでも。
 きちんとメイクさえしていれば、まだマシに見えるはずなのですが。

 きちんとメイクすることもやめてしまったのです。
 たかが15分の散歩。

 日焼け止めと眉マスカラとビューラーとマスカラのみの簡易メイクさえも、面倒くさいのです。

 もうね、マスクでカバーですよ。
 どんなときも不織布マスクが必須。

 すっぴんで外に出ても、眼鏡とマスクで顔の半分くらいが見えませんから。
 便利な世の中であります。

 散歩以外のときは簡易メイクです。
 日焼け止めのカバー力に頼りきっております。

「あんたの日焼け止め、なんか紫色なんだけど」と。
 実母に驚かれました。

 コントロールカラーです。
 あえてのパープルは、ラッキーカラーだからです。

 伝えることが難しいので、笑って誤魔化しました。
 最近の日焼け止めは、なかなか性能が良いのですよ。

 日焼け止め効果のある化粧下地にするか、化粧下地効果のある日焼け止めにするか。
 悩むくらいです。

 しかしながら。
 世界一かわいい娘を連れて歩きますとね。
「かわいい子ね」と、すれ違う人々に声をかけられるのです。

「ママに似て、おめめがキラキラね」とか。
「ママに似て、お肌が白いわね」とか。
 言ってくださる方もおります。

 荒れ地の魔女、たいへん恐縮しておりますよ。
 いえ、明らかに娘は旦那に似ているのです。
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