114 / 136
109.
しおりを挟む「ちょっと失礼するわねん」
言うが早いか、奴は我のかぶったフードをはねあげた。
がっと我の両頬を手で包み、まじまじと見つめる。そして…
「艶々の黒髪!マリアンちゃんの髪も眩む紅い目!可愛らしいお顔!可愛いの暴力!そして何より歳をとっても肉体の成長が乏しそうなところ!間違い無いわ!アルフ「待て待て待てい!!!」きゃんっ!…んもう。相変わらず照れ屋さんなんだからん!!」
全力で振り払ってラギアの背中に隠れる。
「照れてない!というかどこで判断しているんだ!」
特に1番最後!
「怒っちゃやーよん!感動の再会なのにん!」
どこに感動があったのかはさておき、とりあえず、ラギアの時とは違ってきちんと我が誰か分かっているようだ。
「……そう易々と信じていいのか?」
「トーゼン!マリアンちゃんはいつでもご主人様のために生きてるのよん?それに…いつの間にか私がグレちゃんにかけてた暗示が解けてるし、グレちゃんのこの心酔具合。疑いようが無いわん」
ラギアに暗示かけてたのはやはりコイツだったらしいな。まったく。
「前と違ってちょっと感じ取りにくいけど…その人間の皮剥げば元通りじゃないかしらん?」
怖っ!こんな可愛らしい皮引っぺがすとか正気では無い!…可愛くなければ剥がすのか?…剥がすだろう?………え?剥がさないの?
「アリス様に近づくな変態」
「ぁああん…!グレちゃんのこの冷たい目も久しぶりだわん…!」
怖いっ!皮剥がれるのやだとラギアにくっ付く。動きにくいだろうが、本人も嬉しそうだからいいだろう。
「ラギア、その変態を絶対我に近づけるな」
「アルちゃんまで…!あ。アルちゃん、アルちゃん。そろそろ離れてあげて頂戴。グレちゃんが…」
ラギアが?
「アルちゃんに可愛くお願いされて、色々限界みたいなのよん」
恐る恐る上を向けば、ラギアは昇天しかけていた。幸せそうなのだが、風に散る前の灰のような穏やかさ!
「我が生涯に…一片「ラギア、問題がいろいろ片付いていない。我、どこぞの王子と結婚させられるぞ?」…以上の悔いありぃいいい!」
よし、正気に戻った。こんな古典的な壊れた機械叩いて直す的な戻し方でいいのか。
「想定通りではないが、出てきてもらえたのは予定通りだ。見たところ、あの王子を助けにきたわけでは無いのだろう?…何故、出てきた?」
「え?………あー!そうそうそうよん!リビルドちゃんから頼まれたのよ!第五王子の回収と、アリスちゃんを城に招待してくるようにって!
"耳"からの報告で目をつけてた可愛い子が今日はグレちゃんと一緒にいるって言うじゃない?それがまさかのリビルドちゃんが狙ってる令嬢っていうから、もう楽しみすぎて、思わずアタシが行くって言っちゃったのよん!」
第五王子の事については自業自得だから不敬の一切は不問、ついでに既に格の高い方が粉かけてた相手に横槍入れてきた第五王子は無条件でぎるてぃー。今後、第五王子側からの我への干渉一切禁止。…ということらしい。
「…で?そのリビルド殿下とやらと、我の婚約推し進める気か?」
「さっきまではねん。でも、アルちゃんがアリスちゃんなんでしょう?なら却下。断固拒否よん。私のダーリンをどうしてあんな小僧にやらなきゃいけないのよ」
「…小僧?」
「そのリビルドちゃんよん?」
こいつ、今の主人を小僧って言った?
「私のだーい好きなご主人様が居なくなって、もう2度と戻ってこないなら、…それなら、自分が跪くに値する存在を作るしか無いでしょ?だから頑張ったのよん。で、まあ好みからは外れてたけど……意欲は十分だったからん(悪あがきの姿が、その地位に分不相応な姿が、滑稽で、憐れで、…それが物凄く…可愛かったのよねん)」
…急に黙ったが、ラギアは物凄く顔を顰めていた。前世含めて我よりも付き合いが長いから、恐らく何を言おうとしているのか分かっているのだろうが、聞いても知らない方がいいとか、知らなくていいとか言って教えてくれないんだよな。まあ、教えてもらわんでもロクでも無いこと考えてるのは間違いないが。
「…ともあれ、敵対意志はなく、…我が婚約することには反対してくれるということか?」
「モチロンよん!誰が可愛いアルちゃんをお嫁になんてやるもんですか!」
「…我、今はアリスなんだが」
「どっちでも一緒よん!」
一緒じゃ無いと思う。我は元魔王であって、今は多少規格外な魔法を使えるだけの少女アリスだしな。
「私たちは、称号じゃなくて、アルちゃん自身に惚れて慕って下ったの。じゃなきゃ今ここに居ないわよん。
あの時もう居ないって言われたこと、忘れてないわ。でも、姿形は違っても、私たちはあなたがそうだと思うから、それでいいと思わない?…あなたはいつだって、自分の勝手も他人の勝手も止めないもの。
だから、私たちはいつでも、あなたを探してあなたに付き従う」
それがいいの。と、マルシュヴェリアルは言った。私たちにはラギアも勿論含まれているようで、不満顔ながらラギアも異論は無いようだ。
ならばよし。
「…我の元にまた下るというのなら、それなりに扱き使うから覚悟をしておけ」
「喜んで!」
と、言うわけで最初にコイツにやらせる仕事は、アノクの呪解である。
そんなこんな、場所を変えて宿の中。アノクを寝かせている部屋に入ると、灼華が嬉しそうに我に抱きつき、マルシュヴェリアルと何か火花を散らして一悶着あったがそれはまあいい。些末なことだ。
「お安い御用だけど、こんなのアルちゃんなら簡単に解けるんじゃないのん?」
すりすり、と忙しなく手を動かしながら、マルシュヴェリアルは我に聞いた。我は止めてくれと訴える目を無視して答えた。
「解いたらお前にバレるだろ。うざい」
「酷いわッ!?マリアンちゃんはこんなにもアルちゃんが大好きなのにぃいいい!」
「……それ、一応我の従者を撫で回しながら言うセリフか?」
アノクの呪解と称して、彼の割れた腹筋を撫でてテンションを上げている奇人に引きつつ、アノクにはドンマイ、ファイト!とジェスチャーで応援の意だけは伝えた。あ。目が死んでる。洗礼というやつだから甘んじて耐えてもらおう。
「それはそれ、これはこれ。いい筋肉って正義よねん」
うっとりとしているマルシュヴェリアルに対して、趣味だけならリィと物凄く上手くやっていけそうだなと思った。
0
お気に入りに追加
292
あなたにおすすめの小説
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
転生したらチートすぎて逆に怖い
至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん
愛されることを望んでいた…
神様のミスで刺されて転生!
運命の番と出会って…?
貰った能力は努力次第でスーパーチート!
番と幸せになるために無双します!
溺愛する家族もだいすき!
恋愛です!
無事1章完結しました!
異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。
星の国のマジシャン
ファンタジー
引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。
そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。
本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。
この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
悪役令嬢は最強を志す! 〜前世の記憶を思い出したので、とりあえず最強目指して冒険者になろうと思います!〜
フウ
ファンタジー
ソフィア・ルスキューレ公爵令嬢5歳。 先日、第一王子セドリックの婚約者として初めての顔合わせでセドリックの顔を見た瞬間、前世の記憶を思い出しました。
どうやら私は恋愛要素に本格的な……というより鬼畜すぎる難易度の戦闘要素もプラスしたRPGな乙女ゲームの悪役令嬢らしい。
「断罪? 婚約破棄? 国外追放? そして冤罪で殺される? 上等じゃない!」
超絶高スペックな悪役令嬢を舐めるなよっ! 殺される運命というのであれば、最強になってその運命をねじ伏せてやるわ!!
「というわけでお父様! 私、手始めにまず冒険者になります!!」
これは、前世の記憶を思い出したちょっとずれていてポンコツな天然お転婆令嬢が家族の力、自身の力を用いて最強を目指して運命をねじ伏せる物語!!
※ この小説は「小説家になろう」 「カクヨム」でも公開しております。
上記サイトでは先行投稿しております。
チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。
異世界転生したら何でも出来る天才だった。
桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。
だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。
そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。
===========================
始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。
【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~
イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」
どごおおおぉっ!!
5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略)
ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。
…だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。
それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。
泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ…
旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは?
更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!?
ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか?
困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語!
※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください…
※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください…
※小説家になろう様でも掲載しております
※イラストは湶リク様に描いていただきました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる