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しおりを挟む「一仕事後の飯は最高だな!」
「いやお前が働いたわけじゃねえだろ」
我は現在あの煩い2人組を案内役に荷運びを行なって再度ルイーダ殿のお店でご飯を食べてる。怪我したルイーダ殿の旦那やその部下達も含めて大宴会をしている。
因みに、ルイーダ殿の旦那はグンジと言って、仲卸業のようなこともしているらしい。その関係で荷運びをしている最中の怪我だったらしい。まあ、荷運び終えて帰ってきた我の回復魔法により、全員既に回復。秒で治った。
最初からそうすればよかった?
……何が楽しくて野郎どもの怪我をなおしてやらんといかんのだ。不正文書の証人になってくれた商業ギルドの女性職員の彼氏が偶々今回怪我した中にいて、そのせいで落ち込んでいるのでなければ治す気無かったぞ。
だって男は部分欠損以外なら、大抵唾付けとけば治るって料理長言ってたもん。
「嬢ちゃん!ほんっとーに、ありがとうな」
「気にするな。ただ荷物を運んだだけだからな」
「いやいや!嬢ちゃんじゃなけりゃあんだけの荷は運べなかっただろ。ウチにも収納持ちはいるにはいるが、何往復もする必要がある。しかも、怪我まで治してくれて!」
「まあ、許容量は人によりけり。あるだけマシだろう。それに今回は非常時のようだったので思わず首を突っ込んでしまったに過ぎないのだから、グンジ殿ももう気になさるな」
我の口調にはまだ慣れていないのか、だいぶ酔ってきているはずなのだがおよび腰になったグンジに、その部下が再度乾杯の音頭をとった。
再度店の中は騒がしくなる。
ルイーダ殿は今日の昼営業は無しだなと笑っているのでまあいっか。女性の笑顔はいくつになっても魅力的である。
「アリスちゃん。本当にありがとう。皆の怪我を治してくれて!…本当に、お礼はいいのかい?ウチのふつーの飯を食わせたくらいで、こんなに…」
「ルイーダ殿も気にしなくていい。この程度我にとってはただの日課にも満たないからな。それに普通など謙遜はしないでくれ。我の為に作ってくれたご飯は、我にとって特別だ。とても嬉しい」
ルイーダ殿はいたく感動した様子で、我の頭を撫でる。
「それにしても、よくこの"権利書"を取り返せたね」
ルイーダ殿の手にしている権利書とは、この店が立っている土地の権利書だ。正当な持ち主はグンジらしいのだが、何故かいつの間にやら権利書があまり性格のよろしくない商会長の手に渡っており、仕事の依頼を嫌々受けていたらしい。
そんな訳で今回受けていた仕事中、恐らく向こうが仕掛けてきたと思われる事故により、仕事未完遂を理由に商会長は、ルイーダ殿達をこの店なら追い出そうとしていた(と、思われる)。
しかし!
ルイーダ殿の旦那達が運ぶ予定だった荷を我が代わりに運んだ。収納するスペース余りまくってるからな。そして届け先の商会に飾られていた信用証書という名の自慢証書を何気無く見ていたところ、1番重要と思われる領主からの許可証が偽物だった。ついこの間見たのと全く同じだった。
そこにある他の証書は全て本物であるが、余程この商会長は信用されていないのか、【領主リアシュ・ヴェイン閣下の許可の下、これを許可する】と、全てに必ず書かれている為、領主からの証書が偽物である以上、その証書は効力を持たない。
そこで我はその偽物証書を偽物と証明してみせたのだ。
我の犯行は至ってシンプル。領主からの証書に水をぶっかけただけ。それも忙しく動き回る職員にぶつかられたと見せかけて。
手元のコップの水かけちゃった!えへっ。
「丁度来ていた商業ギルドの職員が、水のかかった証書の文字が滲んでしまったのを確認したからな。話が早かった」
領主からの証書は特別な紙やペンを用いたもので、超特別仕様の防水加工に破損不可加工してある。つまり文字が滲むはずがないので偽物。
そのままその商会は営業停止、今している取引は全て中止、差し押さえていた建物などについても元の持ち主に返還、その他諸々。ルイーダ殿の店も含めて、権利書を持ち出した上であの商会だけで地上げ的な事が出来るはずがないので恐らく協力者も芋蔓式に炙り出されるだろう。
まあそんな面倒かつ我に関係ない話はおいておこう。
「我の活躍ではなく、商業ギルドが無能ではなかった事を喜ぶといい」
トップまで完全黒って場合もあるかもしれんと思ったしな。その場合この結果にはならなかった。
紛れもなく彼らは幸運だった。
何せ我に出会えたのだから!朝食を振舞ってくれたルイーダ殿に感謝をするがいい!!
さて、そのルイーダ殿は肉に齧り付く我の隣で甲斐甲斐しく世話をしてくれている。至れり尽くせり、我至福。
我を挟んで反対側にはあの騒がしい2人組のうち、女性の方…名前はラナといったが、そのラナが座っている。両手に花!どうだ!羨ましかろう野郎ども!!
「実際に対処にあたったのは商業ギルドだからな」
「それでも!ギルドが動いてくれたのは、アリスちゃんがあいつの不正を見抜いてくれたからだよ~!ありがとう!」
がばっと抱きついて頭を撫でられる。うむ、うむ!煩いがそれはそれ。我、女の子でよかった!
その後は昼近くにリィが匂いをたどって呼びに来るまで、ルイーダ殿に生魚の捌き方飾り編を教授いただき、街の名産品やらを貰い、我の職業は冒険者と知ると驚愕され(心外)、いつでも遊びにおいでといわれ、笑顔で我はこの街のギルドへと足を向けたのだった。
…身分証まで見せたのに、最後の最後まで冒険者という所を疑われたのだが。我、可愛すぎるからかな?
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