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「あのっ!⋯⋯アンティ一つ聞きたいのですがよろしいですか?」
「あっああ何でもいいぞ」
愛称呼びの慣れなさから真っ赤になって質問するユメールに、これまた聞き慣れない自分の愛称にドギマギするアントリック。
初々しいカップルが爆誕ですが、回りはニコニコとそんな二人を見守っている。
「侍女に助言のノートを送って下さったと聞きました。ありがとうございます」
「何だ、そんな事か。国も違えばやり方や仕来りも違うからな、護衛騎士にも渡してあるぞ」
「えっ?それは知りませんでした。報告が無かった物で、申し訳ありません」
「いやユメールに報告無用と言っていたからな、それでいい」
「私に報告しなくても良いと判断されたのですか?」
「あぁだってそれは護衛騎士が護衛対象者にどんな事をすれば周囲に誤解を招くのかを説いたものだ」
「何ですか?それ」
「例えばモンマルトルでは良くても帝国では誤解される事もある。例えばエスコート」
「エスコート?」
「あぁ此方ではパートナーが不在の場合護衛騎士がエスコートしても何ら問題はないだろう?」
「えぇおそらくモンマルトルだけではなく、他の国でも良いのではないでしょうか?」
「あぁだが帝国は駄目だ、それは絶対にしてはならない。護衛はあくまでも護衛という考えだ」
「なるほど、勉強になります」
「それを知らずに護衛が良かれて思ってした事がユメールの首を締めかねん。だからその為のノートだ」
「ありがとうございます」
ユメールはアントリックの心遣いに心底感謝した。ただでさえこの国ではまだ本の内容をユメールと思い込んでいる者は少なからずいる。
母国でさえ王女がそんな噂に晒されるのだ、帝国に行けばユメールは他国出身の皇子妃なのだ。
少しでもアラが見えたら口撃されてしまう。
感謝の気持ちがつい潤潤の目で見つめていた。
「何だその目は止めろ!恥ずかしい」
「フフ」
「何?」
「少しアンティの事が理解出来ました。皆が言うように照れ屋なのですね。学園ではあんなに悪態をついていたのに」
「それはお互い様だ」
そう言ってユメールを眩しく見つめるアントリックは不意に胸元から箱を出してきた。
「これを着けさせて欲しい」
開けると中には指輪とブレスレットが入っていた、指輪はサイズ違いが2つある。
「結婚式は帝国で1年後だ、だが来週には此方を立つ。婚約期間は帝国に慣れてもらう期間だ。それまでの虫除けだ。絶対に外すなよ」
そう言って指に嵌めたリングはユメールにピッタリでサイズが合ってることにも吃驚したが、ブレスレットの宝石がアントリックの目の色であるモンマルトルでは珍しい黒翡翠だった。
「こんな珍しい物をありがとうございます」
「帝国ではそこまで珍しくない」
「そうなのですね」
それでもモンマルトルでは珍しくユメールは一度しか見た事がなかったので、ブレスレットをずっと見ていたら、アントリックの指がテーブルをトントンと弾く
「あっすみません」
「忘れていたであろう」
黒翡翠に夢中でアントリックの指にリングを嵌めるのを忘れていた。
「やはり女の人は宝石に目がないのだな」
「だってとっても綺麗ですわ、何の混じり気もない色ですもの」
ユメールのその言葉に何故か真っ赤になるアントリックだがユメールは全く理由が解らないので(分からない事は考えない!)とばかりにその頬の朱には気付かない振りをした。
結局アントリックのその侍女は今回帯同してなかったので会えなかった。
昼食の後は、アントリックが色々とまだやる事が残っているらしく大使館へ帰って行った。
ユメールは急ぎ部屋に帰り、湯浴みをして早起きの分のゆっくりを堪能するべくソファで寛ぎながら、先程のアントリックの赤く頬を染めた顔を思い出し、自分も頬を染めるのであった。
「あっああ何でもいいぞ」
愛称呼びの慣れなさから真っ赤になって質問するユメールに、これまた聞き慣れない自分の愛称にドギマギするアントリック。
初々しいカップルが爆誕ですが、回りはニコニコとそんな二人を見守っている。
「侍女に助言のノートを送って下さったと聞きました。ありがとうございます」
「何だ、そんな事か。国も違えばやり方や仕来りも違うからな、護衛騎士にも渡してあるぞ」
「えっ?それは知りませんでした。報告が無かった物で、申し訳ありません」
「いやユメールに報告無用と言っていたからな、それでいい」
「私に報告しなくても良いと判断されたのですか?」
「あぁだってそれは護衛騎士が護衛対象者にどんな事をすれば周囲に誤解を招くのかを説いたものだ」
「何ですか?それ」
「例えばモンマルトルでは良くても帝国では誤解される事もある。例えばエスコート」
「エスコート?」
「あぁ此方ではパートナーが不在の場合護衛騎士がエスコートしても何ら問題はないだろう?」
「えぇおそらくモンマルトルだけではなく、他の国でも良いのではないでしょうか?」
「あぁだが帝国は駄目だ、それは絶対にしてはならない。護衛はあくまでも護衛という考えだ」
「なるほど、勉強になります」
「それを知らずに護衛が良かれて思ってした事がユメールの首を締めかねん。だからその為のノートだ」
「ありがとうございます」
ユメールはアントリックの心遣いに心底感謝した。ただでさえこの国ではまだ本の内容をユメールと思い込んでいる者は少なからずいる。
母国でさえ王女がそんな噂に晒されるのだ、帝国に行けばユメールは他国出身の皇子妃なのだ。
少しでもアラが見えたら口撃されてしまう。
感謝の気持ちがつい潤潤の目で見つめていた。
「何だその目は止めろ!恥ずかしい」
「フフ」
「何?」
「少しアンティの事が理解出来ました。皆が言うように照れ屋なのですね。学園ではあんなに悪態をついていたのに」
「それはお互い様だ」
そう言ってユメールを眩しく見つめるアントリックは不意に胸元から箱を出してきた。
「これを着けさせて欲しい」
開けると中には指輪とブレスレットが入っていた、指輪はサイズ違いが2つある。
「結婚式は帝国で1年後だ、だが来週には此方を立つ。婚約期間は帝国に慣れてもらう期間だ。それまでの虫除けだ。絶対に外すなよ」
そう言って指に嵌めたリングはユメールにピッタリでサイズが合ってることにも吃驚したが、ブレスレットの宝石がアントリックの目の色であるモンマルトルでは珍しい黒翡翠だった。
「こんな珍しい物をありがとうございます」
「帝国ではそこまで珍しくない」
「そうなのですね」
それでもモンマルトルでは珍しくユメールは一度しか見た事がなかったので、ブレスレットをずっと見ていたら、アントリックの指がテーブルをトントンと弾く
「あっすみません」
「忘れていたであろう」
黒翡翠に夢中でアントリックの指にリングを嵌めるのを忘れていた。
「やはり女の人は宝石に目がないのだな」
「だってとっても綺麗ですわ、何の混じり気もない色ですもの」
ユメールのその言葉に何故か真っ赤になるアントリックだがユメールは全く理由が解らないので(分からない事は考えない!)とばかりにその頬の朱には気付かない振りをした。
結局アントリックのその侍女は今回帯同してなかったので会えなかった。
昼食の後は、アントリックが色々とまだやる事が残っているらしく大使館へ帰って行った。
ユメールは急ぎ部屋に帰り、湯浴みをして早起きの分のゆっくりを堪能するべくソファで寛ぎながら、先程のアントリックの赤く頬を染めた顔を思い出し、自分も頬を染めるのであった。
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