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番外編アリー 上を向く事
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その日の夜、夕食に現れたお母様はとても疲れた顔をしていました。
「お母様大丈夫ですか?お疲れのご様子ですが」
「えぇ大丈夫よ、3人で打合せをしていたのだけどアシュトリアム様が突然いらして。予定ではまだ10日程先の話だったのに、それで急遽スルベージュの王家にご挨拶に伺う事になって。目まぐるしかったわ」
お母様は私の心配を気遣う様にニッコリされながら仰ってました。
急に王城なんて嘸かし大変だった事でしょう。
「大変でしたね、お疲れ様でございました。それにしても⋯⋯アシュトリアム様は自由奔放な方ですか?」
「まぁアリー⋯⋯そうねそうなのかしら?私も初めてお会いしたからよく解らないわ。
でも物腰は優しい方だったわ。
性格は明るい感じで、大臣たちとも軽口を言い合ったりされてたわ⋯⋯私ったら王族を分析するなんて端無いわね。不敬かしら?フフフ」
お会いした時の事を思い出しながらお母様まで軽口を仰ってます。
それは8年間待ち望んでいたお母様の姿でした。
「お母様、この後ご相談があるのですけど」
「いいわよ、食後のお茶はサロンに用意させるわね」
お母様とサロンに移動して私はお手紙の内容と私の思いの丈を正直に全てお話しました。
オーランの事をずっと好きな事。
お茶会の後から皆に嫌われてしまってヒソヒソされるようになった事。
リリーベル様を侮辱した事。
オーランの私への態度。
学園でも独りぼっちな事。
アシュトリアム様からの求婚。
上手に纏められず感情的になりながら話してしまったので私の顔は涙でグチョグチョでしたが、ハンカチで拭いてくれながらお母様はちゃんと聞いてくれました。
「あぁアリー、もっと前から貴方の話を聞いてあげなければならなかったのに。そうしていれば貴方にこんなにも辛い思いはさせなかったのに、ごめんねアリー。聞き飽きたでしょうけど何度でも言わせて、本当にごめんなさいアリー」
お母様は何度も謝罪されながら色々教えてくれました。
「貴方がオーランを好きな事は子供の時から気付いていたわ。でもそんなに拗れてしまってたのは知らなかった。アリーはスワロ伯爵令嬢にヤキモチを妬いてしまったのね、お母様にも経験があるから解るわ。でも侮辱してしまったのは駄目だったわね。
それにしてもオーランはアリーに酷いわね。ちょっと私はオーランを怒りたいわ。私の大事な娘をなんだと思ってるのかしら」
「お母様、私が悪ったの。リリーベル様にちゃんと謝りたかったのだけど上手くいかなくて増々怒らせてしまったわ」
「それは後で考えましょう。
アリー、皆がヒソヒソ言っていたのはね養子のせいなのよ。貴方が嫌われていたからではないの。貴方の従兄弟、セスティーナ様の三男が養子になったのだけどエージェストの甥でしょう。顔が似ているのよ、それで貴方を蔑ろにして庶子を後継者にしたんじゃないかと噂になってたの。貴方を蔑ろにしているのは事実だから私その噂を放っておいたのよ、まさか貴方がそんなに言われてるなんて思わなかった。収束させるべきだったわね、セスティーナ様とエージェストが嫌な思いを味わえばいいと思ってしまって⋯⋯」
「そうだったのですか、誰も私に声をかけてくれることがなくて唯ヒソヒソされてたので悪口と思っていました」
「悪口もあったかもしれないわ。でもそれは貴方も体験してる事よ、令嬢達は貴方にヤキモチを妬いてたの。オーランとカイルは人気者だったから」
「そんな!あの頃はあの二人としか親しくなかったから、私女の子のお友達も欲しかったんです、でも出来なくて」
「それも私が悪いのよ。一番多く知り合いを作れる時に貴方から離れてしまったから、貴方の人生を寂しいものにしてしまったのは私の責任なの。
決して貴方が悪いわけではないのよ、ねぇアリーやっぱりこの国を出ましょう、そして新たに気持ちを切替えてラシュトニアで私と暮らしましょう。王族のアシュトリアム様が後ろ盾になって下さるなら不安も少しは軽減されるでしょう。それに私が付いてるわ!貴方を今度こそ守ってみせるわ」
お母様が守ってくれる。
私はアシュトリアム様の後ろ盾よりもこの言葉の方が嬉しく思いました。
そうしたら何となくオーランの事ももういいかなと思えたのです。
不思議です。何故かしら?
あんなにも焦がれていたのに。
「アリー、貴方は愛される事を自然と学ぶ時に私達のせいでそれができなかったの。だからかもしれないけれど自信が持てなくて精神的に弱くなってるのかも。私もエージェストを信じられなくなってから弱くなってしまった。
だけどそれではいけないと思うの、私も貴方もね。
私達狭い世界から視野を広げていきましょう、下ばかり見ずに上を向きましょう。しっかり顔を上げて自信を持ちましょう」
「えぇ、お母様。
私お母様と一緒にラシュトニアに行くわ。
お母様の仰るとおりこれからは上を向いて」
私は決心しました。
遠い国ラシュトニアに希望を抱いて
「お母様大丈夫ですか?お疲れのご様子ですが」
「えぇ大丈夫よ、3人で打合せをしていたのだけどアシュトリアム様が突然いらして。予定ではまだ10日程先の話だったのに、それで急遽スルベージュの王家にご挨拶に伺う事になって。目まぐるしかったわ」
お母様は私の心配を気遣う様にニッコリされながら仰ってました。
急に王城なんて嘸かし大変だった事でしょう。
「大変でしたね、お疲れ様でございました。それにしても⋯⋯アシュトリアム様は自由奔放な方ですか?」
「まぁアリー⋯⋯そうねそうなのかしら?私も初めてお会いしたからよく解らないわ。
でも物腰は優しい方だったわ。
性格は明るい感じで、大臣たちとも軽口を言い合ったりされてたわ⋯⋯私ったら王族を分析するなんて端無いわね。不敬かしら?フフフ」
お会いした時の事を思い出しながらお母様まで軽口を仰ってます。
それは8年間待ち望んでいたお母様の姿でした。
「お母様、この後ご相談があるのですけど」
「いいわよ、食後のお茶はサロンに用意させるわね」
お母様とサロンに移動して私はお手紙の内容と私の思いの丈を正直に全てお話しました。
オーランの事をずっと好きな事。
お茶会の後から皆に嫌われてしまってヒソヒソされるようになった事。
リリーベル様を侮辱した事。
オーランの私への態度。
学園でも独りぼっちな事。
アシュトリアム様からの求婚。
上手に纏められず感情的になりながら話してしまったので私の顔は涙でグチョグチョでしたが、ハンカチで拭いてくれながらお母様はちゃんと聞いてくれました。
「あぁアリー、もっと前から貴方の話を聞いてあげなければならなかったのに。そうしていれば貴方にこんなにも辛い思いはさせなかったのに、ごめんねアリー。聞き飽きたでしょうけど何度でも言わせて、本当にごめんなさいアリー」
お母様は何度も謝罪されながら色々教えてくれました。
「貴方がオーランを好きな事は子供の時から気付いていたわ。でもそんなに拗れてしまってたのは知らなかった。アリーはスワロ伯爵令嬢にヤキモチを妬いてしまったのね、お母様にも経験があるから解るわ。でも侮辱してしまったのは駄目だったわね。
それにしてもオーランはアリーに酷いわね。ちょっと私はオーランを怒りたいわ。私の大事な娘をなんだと思ってるのかしら」
「お母様、私が悪ったの。リリーベル様にちゃんと謝りたかったのだけど上手くいかなくて増々怒らせてしまったわ」
「それは後で考えましょう。
アリー、皆がヒソヒソ言っていたのはね養子のせいなのよ。貴方が嫌われていたからではないの。貴方の従兄弟、セスティーナ様の三男が養子になったのだけどエージェストの甥でしょう。顔が似ているのよ、それで貴方を蔑ろにして庶子を後継者にしたんじゃないかと噂になってたの。貴方を蔑ろにしているのは事実だから私その噂を放っておいたのよ、まさか貴方がそんなに言われてるなんて思わなかった。収束させるべきだったわね、セスティーナ様とエージェストが嫌な思いを味わえばいいと思ってしまって⋯⋯」
「そうだったのですか、誰も私に声をかけてくれることがなくて唯ヒソヒソされてたので悪口と思っていました」
「悪口もあったかもしれないわ。でもそれは貴方も体験してる事よ、令嬢達は貴方にヤキモチを妬いてたの。オーランとカイルは人気者だったから」
「そんな!あの頃はあの二人としか親しくなかったから、私女の子のお友達も欲しかったんです、でも出来なくて」
「それも私が悪いのよ。一番多く知り合いを作れる時に貴方から離れてしまったから、貴方の人生を寂しいものにしてしまったのは私の責任なの。
決して貴方が悪いわけではないのよ、ねぇアリーやっぱりこの国を出ましょう、そして新たに気持ちを切替えてラシュトニアで私と暮らしましょう。王族のアシュトリアム様が後ろ盾になって下さるなら不安も少しは軽減されるでしょう。それに私が付いてるわ!貴方を今度こそ守ってみせるわ」
お母様が守ってくれる。
私はアシュトリアム様の後ろ盾よりもこの言葉の方が嬉しく思いました。
そうしたら何となくオーランの事ももういいかなと思えたのです。
不思議です。何故かしら?
あんなにも焦がれていたのに。
「アリー、貴方は愛される事を自然と学ぶ時に私達のせいでそれができなかったの。だからかもしれないけれど自信が持てなくて精神的に弱くなってるのかも。私もエージェストを信じられなくなってから弱くなってしまった。
だけどそれではいけないと思うの、私も貴方もね。
私達狭い世界から視野を広げていきましょう、下ばかり見ずに上を向きましょう。しっかり顔を上げて自信を持ちましょう」
「えぇ、お母様。
私お母様と一緒にラシュトニアに行くわ。
お母様の仰るとおりこれからは上を向いて」
私は決心しました。
遠い国ラシュトニアに希望を抱いて
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