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淋しいならさびしいって言える事

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「お姉様、私これにしますわ」

「リリー今日は少し寒さが喉にくると思うからミルクティーの方がいいと思うわよ」

「いいえ。ミルクティーは昼食のときマリーナと頂きましたの。今の気分はスカッとクリームソーダですわ」

「⋯⋯随分自己主張ができるようになったのね。姉さん貴方の成長が淋しくもあり嬉しくもあり⋯うぅ」

「お姉様、カフェのメニュー選びくらいで大袈裟ですわ。でもオーラン様のおかげで自分の気持ちをだいぶ言えるようになりましたの。まだまだかもしれないけれど私今とても嬉しいです」

あれから、オーラン様は何かにつけ私の意思を聞いてくださるようになった。
あの時の一歩は、だいぶ進んだと思うの。
意思のない常にボヤーッとしていた私が少しは成長できたんじゃないかしら。

お姉様とあれこれ言い合いしてたら、エミリー様とマリーナがケラケラと笑ってる。

先日公式に我がスルベージュの王太子様とソフィーア様のご婚約が発表されました。
そして異例の早さで学園卒業後、すぐに婚姻もされる運びだそうです。
国どうしで打診はかなり前からあったそうなのですが、調整がうまくいかずこの段階での発表だったようです。
そのソフィーア様は本日は王太子様のご公務にご同行される為、学園はお休みされてます。

(まったく~びっくりしたわよ。まさか王太子ルートの悪役令嬢がソフィーア様だったなんて、隣国の王女様としか知らなかったから)
(メリー様、意外とやりこんでなかったんですね。私は知ってました。王太子ルートを3回失敗すると王女様の名前が出てくるんですよ。フフフ)
(そうだったの、しまった~失敗するの嫌だったから結構慎重に進めたのよ~まさか失敗してレアが出るとは思わなかったな~)
(子供の時、ソフィーア様に偶然会った時は感動しちゃいました。実は婚約を卒業間近に引き伸ばしたのも、王太子様が学園にあまり通わないようにしたのも、ソフィーア様と私の作戦です。私は離脱してるけど他にヒロインが出てきて攻略されちゃったら困るので⋯内緒ですよ。ふふ)
(策士~⋯脱帽)

お姉様とエミリー様がなんかコソコソ話してます。二人は学園で会う前に知り合いだったのかしら?
謎です、でもお姉様が楽しそうなので、些末な事なのかと疑問はスルーします。

「エミリー様は卒業されたら、タリスティアに帰国されるのですか?」

ふと疑問に思ったので、たずねてみました。
すると満面の笑みで待ってましたとばかりに

「リリー様よく聞いて下さいました。話したくてウズウズしてたの。
実はソフィーア様も私もタリスティアでは飛び級で既に1年前に卒業してるんです。
今回留学って形で学園に入ったのは、ソフィーア様が婚姻後の社交のために優秀な貴族の方々との顔合わせを早めにしたかったからなんですよ。
で、私はソフィーア様の侍女になる事が決まってますのでご一緒しました。
なので帰国はしませんので、これからも仲良くしてくださいね」

「まぁそれは嬉しいです。私こそよろしくお願いします」

マリーナも嬉しそうに「嬉しい」と言って端なくもエミリー様に抱きついてる。
お姉様は嬉しすぎたのかしら?
真っ赤になって「教えといてよ」とか言ってます。
これからの事を考えて気づいてしまいました。

「ソフィーア様とエミリー様にご友人にして頂いて、毎日楽しく過ごせてますけど、もうすぐ皆様卒業ですね。お姉様も領地に行ってしまうし、ソフィーア様とエミリー様はお城に住まわれる。もう簡単にお会いできません。私⋯⋯私⋯淋しいですーー卒業しないで下さいませ」

涙が止まらなくなりましたの、
私につられてマリーナも泣いちゃいました。
お姉様が優しく背中を擦りながら

「リリー。私、小さな頃から貴方の我儘を聞いたことがなかったかも⋯⋯今貴方は子供のように駄々を捏ねてるし、困るけど、それよりも嬉しいわ。
私は間違えていたのかも。
貴方が思ってる事を、考える力を私は奪ってしまってたのね。
貴方が大好きで守らなければいけない大切な妹と思うばかりで、貴方の自我を抑えつけてしまって愚かな姉だわ
ごめんね」

「そんな事⋯⋯お姉様が私を思ってくださるのは子供の時からわかってます。全身で大好きと表現してくださってました。私が⋯⋯ヒッ⋯ヒック⋯そっそれに甘えていたのです。楽だったから⋯ック⋯」

泣きながら話してしまうから私の気持ちが伝わらないと思って、ハンカチでグッと目を押さえ深呼吸を2つ。
そして、しっかりお姉様をみて私の気持ちを伝えます。

「お姉様。私お姉様が過保護に接してくれるのは嫌じゃなかったの。
だってお姉様は私の事をよくわかってるので、お姉様が決めてくれたことは嫌なことはなかったんですもの。
でも学園に入ってから色々な方と接すると、皆様私の意図は組んでくれませんの。今考えると当たり前ですわね。でも私、その頃は戸惑ってしまいました。だから流されていたのだと思います。それでも大半はマリーナが庇ってくれていて事なきを得ていたのです。
でもそれでは駄目だと、オーラン様に指摘されて、私も変わりたいと思ったの。
楽しいなら楽しい、嬉しいなら嬉しい、嫌なら嫌、いいならいいって、自分の気持ちをいう喜びを教えて頂きました。
まだ偶にマリーナに頼ってるとこもありますけど、お姉様!私成長したでしょう?」

「オーラン。あの人どの口が言ってるのかしら!」

「オーラン様も仰ってましたわ。自分が言うのもなんだけどって」

四人で目を合わせて自然に笑い合いました。

もうすぐ皆様ご卒業です。
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