Summer Vacation

セリーネス

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終わり、そして始まり6

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「…これが、そうなんですか?」

「そうよ~♪」

ルーが帰った後、地下のリビングに貴美恵さん、蕾紗さん、久志、私の4人で集まった。雅鷹さんは今夜は出張で帰らないそうだ。
そして蕾紗さんがコーヒーテーブルの上に花瓶を置いた。それは、何の装飾も無いシンプルなデザインだったが、大変美しいコバルトブルーカラーで上から下にかけて段々と色合いが濃くなっていくグラデーションにもなっていて、いつまでも見つめていたくなる魅力があった。

「触って良いわよ♪」

「え!?」

真正面に座る貴美恵さんから、はい♪と手渡されてしまったので思わず受け取ってしまった。
一見、瀬戸物か七宝焼物かと思っていたけど、冷たく硬い手触りと小振りな割にはズッシリとした重さを両の掌に感じた。

「…石で作られているんですね」

私は、両手から少し余る大きさの花瓶の感触を充分に感じてからそっとコーヒーテーブルに戻した。

「そうなの!しかも、コレって青・翡翠って呼ばれている、めちゃくちゃ希少な宝石を丸彫りして作られているのよ!」

青翡翠と呼ばれる硬玉は、現在日本では指輪やピアスに使われる大きさ程しか存在しない。しかし、薔薇が1~2輪なら活けられそうな大きさがあるこの花瓶は、木根家秘蔵の文書によると恐らく安土桃山時代の頃の作で、国内で翡翠が採れる有名な場所で採掘され、藩主の娘の誕生の祝いの品として花瓶に加工されて献上されたらしい。しかし、そもそも花瓶として丸彫り出来る程の大きさの青翡翠が採れた事自体本当に信じられない事だと蕾紗さんは話してくれた。
そして、この花瓶を藩主の子孫達が家宝として代々大切に受け継がれてきていたのだが、大戦中の混乱の中で盗まれ行方不明となってしまった。

「コレを橘家が所有しているって、良く判りましたね」

「まぁ、そこは色々とね、手があるのよ♪」

その後、どの様な経緯で橘家が花瓶を手に入れたのかは不明だが人の口に戸を立てられない様に石で作られた花瓶の噂が立ち、現在でも様々な情報の収集を行ってきていた木根家の耳にも入り、調べ出し確証を得たのだそうだ。

「…で、この花瓶を本来の持ち主に返すんだけど、それを今回は久志と佳夜ちゃんの2人でやってもらいたいのよね」

特別に誂えた箱に花瓶を丁寧に片付けながら、貴美恵さんがそう言った。

「私も?……“怜悧”の修行を受けていないのにお手伝いして良いんですか?」

「大丈夫よ♪…あ、ただ彰ちゃんになっての方が良いかも知れないわね」

体力や身体能力的に女の子よりも男の子の方が良いと思う。と貴美恵さんは言った。

「解りました。……久志は、私が一緒で良いの?」

隣に座る久志を見れば、彼はノートパソコンに凄い早さで何かを入力していた。しかし、話はきちんと聞いていた様で、訪ねる私に顔を向けると、優しく微笑み頷いた。

「俺は構わないぞ。それに、彰と組むのも面白そうだよな。…後で少し身体能力を見させてくれ。彰に合わせた行程表を考えるよ」

「了解。よろしくお願い致します♪」

じゃあ、これは下の保管庫に戻して来るわね♪と蕾紗さんはソファを立ち上がってリビングを出て行った。

「私達は夕食の用意をしましょうか♪」

「はい!」

貴美恵さんと私は地上へ戻り、キッチンへ移動した。共に上がった久志は、調べ物があるとかで雅鷹さんの書斎へ向かった。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



「さすが、今まで鍛えてきただけはあるな」

「まあな♪」

夕食後、早速彰になり久志と裏庭に向かった。
外はすっかり暗くなっていたが、外壁や木々の上に取り付けられた照明のおかげで裏庭は昼間の様に明るかった。俺は久志から言われるままに軽い柔軟体操を行い、家の外壁に設置されているロッククライミングの壁の登り下りを数回繰り返し、更に久志と合気道の模擬戦と剣道の模擬戦を行った。

「…跳躍力も瞬発力も申し分ないし、反射神経も悪くない。持久力もあるみたいだし、……うん、これなら大丈夫だな」

「そうか、足を引っ張らなくて済むなら良かったよ」

嬉しくて俺がニカッと歯を見せて笑うと、隣に立っていた久志にすかさず抱き締められた。

「なっ!?…ちょっ、何いきなり抱き締めてくるんだよ!俺汗臭いぞ!?」

「………お前、可愛い過ぎ。煽ってんのか?」

全然臭わない。むしろ良い匂いがする。等と言いながら、ぎゅ~っと強く俺を抱き締めると更に久志は俺の首すじに顔を近付けた。

「はぁ!?煽っていねぇし!…ってか、首舐めんな!」

「無理」

久志は腰に回していた両手で今度は背中や尻を撫でて来たので、俺はその拘束から逃れたくて身体をよじった。しかし、離れ様にも、久志の方が力が強くて腕を解けなかった。

『……同じ男の姿なのに敵わないとか腹が立つ』

「…彰」

「なんだよ?」

「彰」

「だから、なんだよ。………ちょっ、おまっ!押し付けてくんな!!」

俺が身体をよじった際に、久志は俺の両脚の間にすかさず己の脚を割り入れ更に俺の動きを封じると、そのまま自己主張し出した息子を擦り付けてきたのだった。

「おいっ、マジぶけんなよ!俺、今男なんだぞ!?なんで男の姿の俺に欲情すんだよ!?」

俺は封じられている腕を何とか動かし、久志の背中を強く叩いた。

「…お前、彰になると本当に嫌がるのな」

溜め息を吐きながら久志は腕を緩め、俺を解放してくれた。

「……自分でもよく解んねぇけど、なんか気持ち悪い感じがして嫌なんだよ」

「ちょっと、佳夜に戻ってくれないか?」

「? あぁ、良いぞ」

魔術を解き、佳夜の姿になるとまた久志は私を抱き締めた。

「……どうだ?」

「どうだ?って言われても、……その、嫌じゃないよ?」

久志が先程と同じ様に首すじに唇を這わせて舐めてきたり両手で背中やお尻を撫でられたけど、私は何故か気持ち良くなりそうになってきてしまい、ドキドキと心臓が高鳴り全身が熱くなってきてしまった。

「んっ!」

久志は、ぶかぶかになったTシャツの中に左手を入れて、乳首を人差し指と親指で弄り始めた。

「……俺にとっては彰も佳夜も同じなのに、サラは違うんだな」

「あんっ、だ…駄目っ!」

久志は右の耳たぶを軽く噛み、私の身体から力を奪うと、素早く膝裏に腕を入れて横向きに抱き上げた。

「…続きは?」

「あぁ、彰の身体能力なら充分に判ったから。終わり」

それよりも部屋に戻って一緒に汗を流そう?と言いながら、早足で久志は歩き始めたのだった。
そのまま脱衣場に連れて来られて降ろされたが、久志は無言のまま手際よく私を脱がし始めた。

「自分で脱げるよ!?」

「駄目。俺がサラを脱がしたい」

ぶかぶかになっていた為、あっという間に全てを脱がされると、久志は続いてさっさと己の服も脱ぎ全裸になった。そして私は手を引かれるまま一緒に浴室に入り、久志から頭と身体を洗われたのだった。

「……先に上がって、寝室で待っていてくれないか?」

シャワーで私の身体の泡を流し終えた久志からそう言われ、私は頷いて浴室を出た。
バスタオルとドライヤーで軽く髪の水気を取り、下着だけを身に付けてバスローブを着た。

『どうせまた脱がされちゃうのだろうから、これで良いよね』

浴室での久志の陰茎の怒張した状態と先程の台詞からして、今夜も抱かれるのかな?と思い、パジャマに着替えるのを止めた。

『…なんか落ち着かない』

1人でベッドに腰掛けて久志を待つなんて無かったので、妙に緊張してきてしまい、私は顔が熱くなった。

「…お待たせ」

どう待っていたら良いのか判らなくて、ベッドの上で体育座りになりタオルケットを抱き締めていたら、髪を拭きながらトランクスのみ履いた姿で久志が寝室に入ってきたのだった。

「長かったね」

いつもなら私が脱衣場で髪を乾かしている間に浴室から出てくるのに、今日はかなりゆっくりだった。

「あぁ、…ちょっと抜いてきた」

「?」

『え?抜く?何を???』

久志の台詞の意味が判らず、首を傾げると久志は私の隣に腰掛けた。

「なあ」

「うん」

「…彰になってくれないか?」

「は?」

思わず久志の顔を凝視した。

「……さっきも言ったが、俺の中では彰も佳夜も同じでどちらも心から愛しているんだ」

臆面も無く堂々と「愛している」と言い切る久志に、私は『情熱の国の住人の血でも入っているんですか!?』と内心ツッコミを入れてしまった。

「俺は、彰にも欲情してしまうのか、それともサラだと解っているから彰の姿でも抱きたくなるのか判らないんだ」

絶対に無理強いはしない。彰が嫌だと言ったら直ぐに止めるから、身体を触らせて欲しい。そう言いながら久志は真剣な眼差しを私に向けた。

「…欲情しても止められるの?」

「あぁ。その為にさっき2回抜いたんだ」

「…えっと、その抜くって意味が解らないんだけど???」

「あぁ、そっか。…つまり射精してスッキリしてきたんだ」

「!?」

意味が判らなくて聞いたのは私だけど、久志からのあまりのストレートな物言いに私は絶句してしまった。

『シャワーが長かったのはその為だったとは言え、2回もって…っ!!』

「…サラ、顔が真っ赤」

くくくっと久志は少し意地悪な表情で楽し気に笑い声を上げた。

「…良いけど、本当に嫌になったら言うから、止めてね?」

「あぁ」

私はベッドから下りて数歩歩いて少し離れ、久志に背を向けたままでバスローブの帯紐を解き、袖から腕を抜いて肩に羽織った。そして、そのまま軽くかがみ下着を脱いでバスローブのポケットにしまった。

「タームヤンラ・ナクーマウラグリグナムアフ」

その場で変身の魔方陣を展開し、彰の姿になった。…身長は盛らなかったけど。

「これで、良いか?」

久志の方に振り向くと、ベッドに腰掛けていた久志は立ち上がり、俺の手を握って引き寄せそのまま優しく抱き締めた。

「……彰、やっぱり気持ち悪くて嫌か?」

「う~ん?…抱き締められるぐらいなら大丈夫かな?」

「キス、しても良いか?」

「……唇にか?」

「最初は額、次に頬、もし嫌じゃないなら唇にもしたい」

「解った。良いぞ」

俺は覚悟を決めて頷いた。正直いくら久志でも男に抱かれるのは抵抗感しか湧かないが、少し我慢する事で久志の悩みが解決出来るなら耐え様と思った。
久志は腕を緩め、左手で俺の顎を軽く持ちあげ上に向かせると、優しく額に口付けた。そして両の頬にも口付けを落とすと、最後に軽く触れるだけのキスを唇にしてまた抱き締められた。

「嫌だったか?」

「いや、なんか解らんが緊張した」

「…俺もだ。でも、彰のファーストキスを俺が貰えて嬉しかった」

佳夜のはグヴァイに奪われたからな。そう久志が呟いた。

「同じ身体だろう!?」

俺は思わずツッコミ、苦笑した。

「……で、やっぱり俺に欲情するのか?」

抱き締められているが、別に久志が息子を押し当ててくる事は無く、手もサラの時の様に胸や尻を触ってくる様な感じは無かった。

「う~ん。確かに、キスもしたし抱き締めてもいるけど、これ以上何かしたいって気持ちにはならないな。…さっきも、彰の言動が可愛いと思って思わず抱き締めたりキスをしたくなる衝動には駆られたが、やっぱりサラだからって判っているから欲情してしまったのかも知れないな」

「そうか。それを聞けてなんか安心したよ」

今後彰の姿で久志と行動を共にする事に不安を覚えていた俺はホッとした。

「佳夜に戻って良いか?」

「あぁ」

久志から離れ、魔術式を解きポケットから下着を取り出して履こうとすると、久志は私の腰を掴み抱き寄せそのままベッドに私を押し倒した。

「やっぱり、サラの身体に俺は欲情する」

抱き締めた時の身体の柔さと長い髪から香るシャンプーの匂い、そして赤く可愛らしい唇や大きな瞳の全てにそそられて思わずむしゃぶり付きたくなる。久志はそう言いながら、覆い被さる様に抱き締めてくると唇に口付け、舌で私の口を開けて私の舌を捕らえ絡めてきた。
私が久志の舌の動きに夢中になりだすと、久志は左腕で自分の身体を支えながら、右手は胸や乳首を揉みしだき私の感じる所を執拗に責め、身体を熱くさせた。

「あ…んっ、そこ、ばっかり弄らないでぇ………っ」

「サラのその声、好きだよ」

サラの喘ぐ声を聞くと興奮する、と久志は言いながら右手を脚の付け根に動かし、割れ目に指を滑り込ませた。

「あ…っ」

「もう、濡れまくっているな。……挿れて良いか?」

「うん…」

久志は私の身体を抱き起こし、胡座を掻いた上に私を跨がせてそのまま腰を下ろさせた。

「あぁっっ」

「くっ!そんなに絞めたらダメだよ…」

一番奥深くまで挿れられ、軽く腰を揺らされるだけで亀頭がグリグリと最奥を擦り、耐えられない気持ち良さに襲われ、身体を震えさせた。

「あん!気持ち良すぎちゃうっ!」

「あぁっサラ!」

久志は私の腰を持ち、自分の腰を強く押し付ける様に抽挿し出した。

「あっ!あん!あん!あぁ!ダメ!イッちゃう!」

激しく揺さぶられ、最奥と膣壁を硬く反り起つ陰茎が抉り、快楽が全身に走ると身体を強ばらせた私は弾ける様に快感に飲み込まれた。

「ダメぇ~~~!!」

「あぁっ!」

キツく絞めた膣の気持ち良さに支配された久志も一気に達した。
身体を弛緩させた私は、お腹に手を当てて浄化の魔術式を展開した。
肩で息をしていた久志は、呼吸が整うと挿れたままで胡座を解いて私を優しくベッドに寝かせ、またゆっくりと抽挿を開始した。

「あんっ……もう、ダメだよ。明日、朝早いんでしょう?」

さっきイッたばかりなのに、久志の陰茎は衰えずむしろ更に怒張して私の膣壁を抉り快感を与え続けた。

「ごめん、気持ち良くて抜きたくないんだ。……なぁ、今夜は挿れたまま寝ないか?」

「あっ!……そんな事言って、あん!……私、イかされ続けられちゃうんじゃない?」

「そんな、無理は、したくないけど、……くっ!サラ、絞めちゃ駄目だよっ」

眉間にシワを寄せて久志は一旦抽挿を止めると、私をうつ伏せにして四つん這いにすると、強く奥まで突き出した。

「あっ!…そっんなに、激しくしちゃダメぇっ!」

「サラっ!サラ!……あぁっ!ヤバいぐらい気持ち良い!」

後ろから何度も何度も最奥を突かれ、膣壁が抉られ続けられた私はイッたばかりの身体がまた熱くなった。

「ひ~君!!……あんっ!やぁ!またイッちゃう!」

強く弾ける様な快感に飲み込まれ、私は先程以上の気持ち良さに襲われた。
イッてしまい身体が強ばる私の膣に久志も達し、精液を奥深く熱く注ぎ込むと、私のお腹に手を当てた。

「スファン・ワヤサクヒヤ・ラクサ」

いつ覚えたのか、久志は綺麗な発音で浄化の魔術式を展開させたのだった。

「いつ、の間に…?」

凄く気になったけど、私は先程の運動と2度も連続でイかされた為に久志の返答を聞く前に睡魔に捕まってしまった。
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