Summer Vacation

セリーネス

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~~~~♪

ピッ!

「……ん、もう朝?」

久志のスマホのアラームが聞こえ、目が覚めた。
発情期が収まらない久志に昨夜の遅い夕食後も抱かれ、彼は何度も何度も私に挿れ注いだ。最後私は意識を失う様に眠りに付いた為に何時に寝たのか判らない。身体の疲労具合からまだ寝足りなかった私は少し寝惚けていた。

「おはよう、サラ。ごめんな、アラームの設定を消しておけば良かった」

「ん~、ひ~君。ちゅ~してぇ?」

横にいる久志に抱き付き、私は幼かった頃の呼び方をしてキスをねだった。

「!? うわ、寝惚けているサラって甘えん坊。…やっぱ、彰の時とは全然違うんだな。ほら、サラ。顔上げて?………ちょっ、何、その動き?…ヤベぇ、マジで可愛い過ぎる」

何か久志が言っている様だけど、まだ眠たい私はよく聞こえていなかった。
なんとか起きたいのに目が開かなくて、久志からキスをして貰った後、久志の胸元にぐりぐりと顔を擦り寄せた。久志はそんな私に興奮したらしく、ギュッと抱き締め顔中にキスを降らせた。

「ん~!や~!ひ~君、苦しい…」

私はイヤイヤと顔を横に振り、強く抱き締めて来る久志から逃げ様ともがいた。
しかし、その仕草すら久志には堪らなかったらしく、私のパジャマをたくし上げ両手で胸を揉みしだいた。

「あっ、ん!…やん!」

「はぁ…、柔らけぇ。たまんねぇ」

胸の谷間に顔を埋め、両の指で乳首をつねり私の下半身に痺れを与えた。
私の揺れる下半身を見て、久志は身体を起こし私のズボンと下着を脱がし脚を開かせると、すかさず割れ目に顔を入れた。

「やぁん!」

「はぁ…、この匂いエロ過ぎ。…サラ?目を覚まさないと挿れちゃうよ?」

久志は割れ目を両の指で広げ、クリトリスを唾液と愛液でグショグショになる程舐め、私を喘がせた。

「……も、目、覚めてる、から!…あぁんっ!…ダメぇ、あん!……イッちゃうの~!!」

ツンと尖った所を執拗に強くしゃぶれ、絶頂を達し背中を仰け反らせた。
達した余韻でまだ身体が痙攣している私に、久志はパジャマのズボンと下着を脱ぎ、先走りを滴らせそそり起たせた陰茎をゆっくりと挿入してきた。

「やっ!太い~!あぁんっ!」

「あぁ!…スゲェ、イイ!」

愛液が溢れ、まだヒクヒクと蠢く中に久志の陰茎は膣壁を抉る様にの奥へ奥へとめり込んだ。

「あっ、あっ、…んっ!あん!…凄い、気持ち、好い!…あぁん!」

久志は抽挿をどんどん激しくしていき、寝室中に腰を打ち付ける音と私の喘ぎ声が響いた。
何度も奥を抉られ身体は気持ち良さに呑まれて行った。

「もう、駄目ぇ……、またイッちゃう!……っ!!」

「くっ!……俺のをそんなにキツく絞らないでくれッ!……あぁ!」

私がギュッと下半身に力を込めた瞬間、久志は達した。そして私も膣に注ぎ込まれる熱い精液が敏感になり過ぎている奥に当たり、その快感でイってしまった。
はぁ、はぁ、と暫く肩で呼吸を繰り返し、少し落ち着いた所で私は浄化の魔術式を展開させた。

「あぁ……、サラの中が最高に好すぎてマジで抜きたく無くなる」

そう言って軽く2~3回抽挿し私の中を味わい、久志はゆっくりと陰茎を抜いた。そしてナイトテーブルに置いておいた濡れタオルで私の割れ目を優しく拭い、自分のモノも拭いたのだった。

「…起き上がれるか?」

「うん…」

久志が背中に腕を回して支えてくれながら、私は起き上がった。多少ダルさはあるが、起きれない事は無いので手渡された下着を履き、ズボンも履こうと思い手を伸ばしたが時計の針が示す時間的に服に着替えた方が良いと判り、ベッドから降りて壁のクローゼットを開けた。

「サラ!?」

私が中から取り出した服を見て久志は驚愕していた。

「え?何?どうしたの?」

「…どうしたのって、その服」

久志が指差す先は私が手にしている男物の服だった。

「あぁ、コレ?煌夜のを借りたの♪」

部活へ行く時は制服を着れば良いので、クローゼットの中には男物の服が入っていなかった。だけど、私服で出掛ける事だってあるだろうと思い、弟が両親と共に実家に戻る際に私は1着分借りておいたのだ。
私は姿見の前でパジャマを脱ぎ、下着も男物のトランクスに履き変え、変化の魔方陣を構築した。
足元に桜色の魔方陣が現れ、私を包み込み淡く光った瞬間、彰の姿になった。身体が男になった所で弟の服を着た。彰になると、佳夜の時よりは背が高くなっているが、やはり弟の服はブカブカのままだった。
軽く溜め息を吐いた後、今度は掌に変化の魔術式を展開させ自分の頭を撫でた。髪の色を焦げ茶色に、長さも短髪に変えた。続いて眼の前に掌をかざして、瞳の色も少し濃い茶色に変化させた。これで見た目は“彰”そのものになった。続いて脚に掌をかざしブカブカだったスラックスに脚の長さを合わせた。

『出来た!……夢にまで見た身長170㎝!』

姿見に映る自分はずっと憧れていた身長になり、嬉しくて思わず小さくガッツポーズを作ってしまった。

「久志!どうだ?ちゃんと“俺”になっただろう?」

「…身長以外はな」

何故か何処か不機嫌な様子の久志。

「?」

何故不機嫌なのか判らず首を傾げると、久志は俺を抱き締めて深い溜め息を吐いた。

「……何で“彰”になってんだ?今日、部活無いだろう?」

「何でって、母さんに会いに行くから」

昨日の内に久志の魔力を視てもらいたいと連絡は済ませてある。しかし、佳夜の姿で外出はしない方が良いので彰になったのだ。

「久志が合宿に行っていた時に、駅で煌夜の同級生達に会っちゃっているって話したじゃん」

「…あぁ、そう言えばそうだったな」

久志は小さく舌打ちをしてから、自分も着替え始めた。
着替え終え、階下のダイニングに入ると都子さんが朝食をテーブルに配膳してくれていた。

「「おはようございます」」

「おはようございます。久志様、…あら、今日は彰様なんですね♪」

俺の事を赤ちゃんの時から知っている都子さんは、勿論俺が佳夜だって解っている。だから、どちらの姿でいても気にせず接してくれるから助かる。
都子さんが用意してくれた朝食を食べ、早速俺の実家へ向かった。

「…で、何でお前は不機嫌なんだ?」

庭を抜け、門へ向かいながら俺は隣を歩く久志を見た。

「お前は……」

「俺?」

「…………………」

「………」

一声発したきり口を閉ざしてしまった久志。門をくぐり、通りに出ても黙ったまま。考え込んでいる様に見えたので、久志から話し出すまで俺も何も言わなかった。
しばらく2人で無言で歩いていると、久志が立ち止まった。

「…彰」

「うん?」

「お前は、本当は“佳夜”なのに外を歩く時は“彰”にならないといけない事が嫌では無いのか?」

「……え?」

一体どういう意味だろう?
俺にとって彰でも佳夜でも一緒なので、どちらの姿でいようと気にならなかった。

「……正直、俺は嫌なんだ。が嫌なのではなくて、本来の姿では外に出られない事が未だに佳夜に不遇を強いている様にしか思えなくてそれが嫌なんだ。もし、彰の事を知っている奴らの記憶を変えられるなら、全て佳夜として生きてきた記憶にしたい。そして普通に俺の恋人で番の佳夜と外を歩きたい」

「成る程なぁ…」

久志の佳夜の事を考え、想ってくれていた優しさに嬉しさが込み上げた。

「まぁ確かに、この先何かと支障は出そうだよなぁ。……とりあえずさ、その辺の事もお袋に聞いてみようぜ」

「…そうだな」

立ち止まっていても暑いだけだし、俺達だけでは解決の糸口は見付けられそうも無いので再び実家に向けて歩き出した。

「ただいま~!」

結局、その後も久志は黙ってしまい会話が無いまま実家に辿り着いた。

「お帰り~!……って、あれ!?」

出迎えた弟が俺を抱き締めて驚いた。

「あ~、彰。やっぱりったんだ~」

彰が俺の服を借りたいって言ってきた時に実家から持ってきてやるって言ったのを頑なに俺ので良いって断るから、やるかな?とは思ったんだよな~。と呆れた声の弟に、俺は顔を赤らめつつ開き直った。

「別に良いだろ!」

弟はまだ中1なのに170㎝。久志だって高1で既に175㎝以上あるとか身長の神様を恨みたくなる。
どうせ仮の姿なんだから多少盛ったって誰の迷惑にもならないじゃないか!目で俺の言いたい事が解った2人だった。
そんな俺を見て、2人は目を合わせた。

「……久志兄ちゃん、ここ来る迄に誰かと会った?」

「いや。誰ともすれ違わなかったな」

そして2人は無言で頷き合った。

「「彰…」」

声を揃え、俺に向き合った2人に左右から挟まれた。

「却下だ、彰」

「なっ!?」

「俺と目線が同じって、彰じゃないよ。だから、駄目」

「はぁ!?」

イケメンが真顔になって迫って来ると、かなり迫力がある。俺はそんな2人から逃げたくてジリジリと後ずさるも、2人に廊下の壁際に追い込まれた。そして、俺が逃げられない様に両サイドからそれぞれ壁に手を付き、俺を囲い込んだのだった。

………世の女性が憧れる壁ドンの完成である。

しかし、それは男女がやるからトキメキが生まれるのであって、男同士(それも2対1)がやったらどう見ても強面の兄ちゃんSに絡まれてカツアゲを食らう気弱な少年の図の様だ。
だけど、流石2人共イケメンである。いくら今俺は身も心も男になっているとは言え、こんなに間近過ぎると思わず顔が熱くなってきてしまう。

「さぁ、彰?」

「ね?彰?」

俺は涙目になって身長を戻した。……途端に2人を見上げる羽目になる。俺を見下ろした2人は顔を輝かせ大変嬉し気である。

「あぁ!彰!」

「うん!やっぱ彰はこうじゃなきゃ!」

クッソー!!小さい俺見て喜ぶんじゃねぇよ!
この身長差が悔しくて、涙が零れ落ちそうになった瞬間俺はある事が閃いた。

「ひ~君♪」

「ん?」

「煌♪」

「え?」

俺は2人にニッコリと微笑み、2人が(何故か)顔を赤らめた瞬間に変化の魔術を解いた。

「「!?」」

上のシャツもズボンもブカブカ。所謂彼服状態になった。
ルーと久志に散々揉まれて2人を虜にした胸を両腕で挟み、ガバガバのシャツの胸元から谷間を見せて久志と弟を潤んだ瞳で見上げた。

「かっ!佳夜!?」

「うわっ!駄目だって!」

狼狽えまくるが壁ドンはしたままの2人。

「あらあら、まぁまぁ!」

突如驚きの声が別方向から上がる。見ればリビングから母が廊下に出てきていた。

「声はするのに中々来ないから見に来てみれば…」

あんた達、一体何やってるの?母が眉間にシワを寄せて久志と弟を睨んだ。

「「え!?」」

2人が母に怯んだスキに私はパッと母の元へ走りより、母に抱き付いた。

「母さん!あの2人が酷いのよ!」

「まぁ!佳夜!?泣いてるじゃない!………煌?久志君?」

これは一体どういう事か聞かせてもらおうかしら?と私を抱き締めて怒りのオーラを母は放った。

「リリーさん!誤解です!!…佳夜!悪かった!ふざけ過ぎた!」

「ちょっ、母さん!誤解だから!……佳夜!ズルいぞ!」

…身長170㎝の美女が怒ると本気で迫力がある。魔王降臨の如く母は2人を睨み付け、か弱い女の子を男2人で壁際に囲い込んで泣かせるなんて男の風上にもおけないわ!どんな理由があるにせよ、言語道断!と怒鳴ったのだった。

母のデカ過ぎる身長からだと、世の日本人女性はほぼか弱い部類に入るとだろうなぁ…、と思ったのは内緒にしておこう。

とりあえず、久志達から強制的に身長を戻された悔しさは母が2人を怒ってくれた事で気分が晴れ、私の機嫌は直った。怒りで我を忘れた王○状態の母にナウ○カな心で私は声をかけた。

「母さん、私もう大丈夫だから。怒らないで?」

「佳夜?泣かされたんだから、2人に雷槌の魔術式をぶち当てても良いのよ?」

光と水の精霊の合わせ魔術の最高峰の1つをさらっと言った母。…それ、私の魔力で放ったら家壊れますから。

「母さんが2人を怒ってくれたから♪2人も反省してくれているみたいだし、もう許してあげるね❤」

私がニッコリと微笑むと、項垂れていた2人もようやく顔を上げた。

「佳夜、…すまなかった」

「……まさか、佳夜が女の武器を使うなんて。だけど、俺もちょっと調子に乗り過ぎた。ごめんなさい」

仲直りをした所でみんなでリビングに移動。
私は歩き難いので、身長もきっちり盛って再度彰の姿になった。

「もう、文句は言わせないからな♪」

「…あのままが彰らしくて良いのに」

「煌、何か言ったか?」

「!? 言ってない!…だから、手に火炎の魔術式を展開するのは止めて!?」

笑顔が怖いよ兄ちゃん!とちょっと涙目になった弟が初めて俺を兄と呼んだ。

…しかし、なんかあまり嬉しくない。

「なぁに?煌ってば彰の身長に不満だったの?」

キッチンからアイスティーを人数分用意した母が入ってきた。

「久志もさ!…2人して俺のこの身長に駄目出ししやがって、それで俺に前の身長を強要しやがったんだ」

俺の話を聞いて母はクスクスと笑い声をあげた。

「成る程ね。でも、私も前の身長の彰が好きだわ♪」

「えぇ~!?」

「だって、その方が可愛いんだもの❤」

母からのまさかの発言に久志達は嬉しそうにウンウン!と頷く。

「……男に可愛いは要らないよ」

俺はガックリと項垂れた。

「ふふふ♪ごめんなさいね、彰。でも、今のその身長に彰が憧れていたのも知っているから、私は良いと思うわよ」

新学期迄に制服も新調しておいてあげるわ♪と母に言われ、本当に嬉しかった。

「ホント!?」

いよっし!やっぱ、このままで行こう!と俺は決意した。

「…ところで、久志君の魔力保有量を見るんだったわね?」

「あ、そうだった!」

うっかり用事を忘れてしまっていた。

母は久志の前に移動し、じっと久志の眼を見た。

「…確かに、久志君の魔力が目覚めているわ。それにこの保有量なら、訓練と鍛練を重ねれば煌と同レベルになれるわね」

それだけ保有出来れば、この先ファルリーアパファルで生活する事になっても仕事にも就きやすいし生活に不便は感じないでしょう。と母は言った。

「へえ!良かったな!久志♪」

「…そうだな」

「なんだ? 嬉しくないのか?」

「いや、向こうでお前と共に暮らせるのは嬉しいが、俺は出来れば将来親父の跡を継ぎたいと思っていたんだ」

「大丈夫よ♪継げば良いじゃない!」

その為のこの子の魔力保有量よ♪と、母は久志の隣に座る俺の頭を撫でた。

「今日はまだたっぷりと時間があるわ!久志君は魔力を使いこなせる様になる訓練をしましょう!彰は一旦佳夜に戻って転移魔方陣の構築の鍛練をするわよ♪」

俄然張り切る母は俺に自室で着替えていらっしゃい♪と紙袋を手渡した。

「…母さん、これは?」

「この前、見つけたの♪あなたに似合うと思って買っておいたのよ」

自室に入り、紙袋を開けると、藤色のとても清楚なデザインのワンピースだった。
これで、久志の部屋のクローゼットを占領するワンピースのチョイスがどっちのものか判明した。ポップなデザインで可愛い系が貴美恵さんで清楚なお嬢様系が母だ。

しっかり女性物の下着も揃っていたので、安心して魔術を解いて着替えた。
リビングに戻ると、カーペットの上に弟と久志が向き合って座り瞑想をしていた。
体内の隅々まで魔力を行き渡させる訓練だ。

「良く似合うわ!」

私のワンピース姿に母は手を叩いて喜んだ。髪を後ろに三つ編みに纏めてくれると、母は私の手を引きリビングを出て客間としている空き部屋に入った。
この部屋は客間としているけれど、今まで一度も使われた事が無く何も物が置かれていない部屋だった。

「さぁ、先ずは近い距離の転移魔方陣を構築して転移のコツを掴みましょう♪」

部屋を出た先の廊下を頭に思い浮かべ母が教えてくれた転移魔方陣の構築呪文を詠唱をした。

足元に桜色の魔方陣が浮かび上がった。

光が陣の総てに行き渡った瞬間体に浮遊感を受け、瞬きをしたら景色が変わっていた。ちゃんと廊下に立っていた。

「初めてなのに、流石ね!」

母とまた客間に戻り、じゃあ次は…と母が示す部屋(自室、両親の部屋、弟の部屋、風呂場等々)を順に思い浮かべては魔方陣を構築して転移し、また客間に戻って構築して転移をする。を繰り返した。
少し疲れてきたなぁ、と思っていたら母が「今度は私も一緒に佳夜の魔方陣で転移するわよ。これが成功したら、お昼休憩を取りましょう♪」と言ってくれた。
そして行き先はダイニング。テーブルやら色々ある。転移先は掃き出し窓の側の物が何も無い場所と思い浮かべ、魔方陣を構築し母と手を繋ぎ発動させた。
かなり魔力を使った様で、私は眼を開けられないままその場で膝が崩れた。座り込み肩で息をする私に母は頭を撫でた。

「お疲れ様!ちゃんとダイニングに転移出来たわよ♪あんなに転移を繰り返した後で2人で転移しても倒れないで済むなら、お昼の後は貴美ちゃんの家に転移をしましょう!」

相変わらず愛の鞭は健在の母だった。

お昼を用意してくるわね♪とキッチンへ消えた母をなんとか目で追いつつも、私はそのまま床に寝転んだ。

フローリングの床の冷たさが気持ち良かった。

「佳夜!大丈夫か!?」

その場でうとうとと眠りかけていたら、久志が駆け寄り私を抱き起こした。そのまま胡座を掻いた久志は私を膝の上に抱え込み、身体を寄り掛からせてくれた。

「転移を繰り返したら、凄く疲れちゃって…。ありがとう、久志」

「あ~、佳夜が一発で出来ちゃったから母さんスパルタモードになっちゃったんだ~」

久志の後からダイニングに入ってきた弟は、俺が教わった時は廊下に転移出来る様になるだけで1日かかったし、魔方陣を構築させるだけでかなり魔力を消費するから2~3回が限度で2時間位の休憩を挟みながらの鍛練だった。と苦笑した。

「消費を抑えて自由に転移出来る様になったのだって実は夏休み前ぐらいからなんだ」

「…そうだったんだぁ」

慣れれば2人の時でも3人の時でも自分だけが転移する時と同じ魔力消費量で発動出来る様になるそうだが、最初の頃は倒れるのは当たり前な程魔力を消費してしまうのだそうだ。

ぐったりしている私を久志は優しく抱き締め、頬を撫でた。
そして、「煌夜、手伝って~!」とキッチンにいる母から呼ばれて私達の側を弟が離れた隙に、久志は私に深い口付けを落とした。
久志の舌が口内を舐め、私の舌を捕らえると優しく絡めた。久志の舌の動きに私は気持ち良くなってきてしまい、声が漏れそうになった。

「…愛してる、サラ❤」

キッチンからこちらへ弟が来る気配を察し、久志は口付けを止めて私の耳に唇を寄せて囁いた。

「昼メシ出来たけど、佳夜食べれそう?」

私は赤い顔を見られたくなくて久志の胸に顔を埋めていた。

「メニューってなんだい?」

私の頬を撫でながら久志は弟に聞いた。

「佳夜の為の疲労回復炒メシだって」

弟はそう言って再び母に呼ばれてキッチンへ戻った。

「…俺が食べさせてあげようか?」

久志は再び耳に口を寄せてわざと息を吹き掛けながら囁いた。

「……そんな事煌夜達の前でされたら恥ずかしくて死んじゃうから、ちゃんと自分で食べます!」

私は手で耳をふさぎ、久志を睨んだ。
久志が寄り掛からせてくれていたおかげで疲れが少し和らぎ、なんとか立てそうだった。
久志は私の額に口付けを落としてから自分の胡座を解いて片膝を付いて立ち上がり、私の事も立たせて側の椅子に座らせてくれた。
タイミング良く母と弟がトレーに昼食を乗せて運んできてくれた。

「美味しそう!…手伝えなくてごめんね」

私は母と弟に謝ったが、母は「動けなくなる程魔力を消費させちゃったこっちが悪いんだから気にしないで」と笑った。弟も「午後もキツいみたいだから今しっかり休んでおけば良いよ」と然り気無く引き続きハードスケジュールが待っている事を教えてくれた。
炒メシは所謂チャーハンに似ていた。味も醤油味で美味しかった。…しかし、チャーハンは緑色でタコの様なお肉の様な不可思議な具材が使われたかなり謎な物だった。ファルリーアパファルの食材でも使ったのだろうか?でも、母の魔力保有量では転送の魔術は使えなかったはず。一体どんな食材を使用しているのか気になるけど、聞いて後悔する様な事は避けたいので食べる事に集中した。
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