Summer Vacation

セリーネス

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目覚め7

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廊下を歩いていてふと違和感を覚える。
少し前を歩く弟の背が10日前よりもずいぶん高い気がする。繋いでいる手も凄く大きく見えるし。…ってか、私の手って小っさ!足も今はルームシューズで見えないけど、さっきベッドから降りた時めちゃくちゃ小さく見えた。それと、さっきから妙に頭が重い気もする。頭に触れ、髪を持つと長い様だけど、どれくらい長いのだろうか。

『あれ?そう言えば、私目が覚めてからまだ一度も自分の姿を鏡で見ていない』

「…さっきから変な動きしてどうしたの?」

繋いでいない方の掌を顔の前に持ってきて開いたり閉じたり、手首を回して手の甲と掌を見たり足を上げたり下ろしたりしていたら、弟が止まって振り向いた。

「あ、ごめん。なんか気になっちゃって。そうだ!私、鏡見ていいかな?」

「鏡?顔見たいの??」

「うん、顔もだけど、出来れば全身を見たいかな」

「それなら……。さっきの部屋に戻った方が早いね」

階段を目の前にしてUターン。
部屋に戻ると、さっきと同じ状態のままベッドで固まっている久志がいた。

「え?…久志、どうしたの?」

私は様子がおかしい久志の額に手を当てつつ声をかけると、突然ガバッって効果音が聞こえそうな勢いで久志は私の顔を見上げた。

「…戻って、来たのか?……どうしたんだ?」

「うん、ちょっと鏡見たくなって」

声は掠れているしぼうっとしている様子だけど、熱は無いみたいで安心した。
何故かじっと見てくる久志から離れ、姿見の方へ移動。
顔は両親のどっちに似ていても見目は悪くないだろうからあまり不安は覚えないけど、やっぱ胸とか尻とか胸とか!がすっごく気になる……!
さっき弟は私を抱き締めて「柔らかい、癒される」って言っていたけど、大きさは言わなかったし私自身も抱き締められた位じゃ判らなかった。

『今着ているパジャマも下は丁度良いのに上だけなんか大きいから見た感じじゃわからないなぁ』

恐る恐る横から鏡に映る様に動いて姿見の前に立つと、そこには物凄く髪の長い少女が立っていた。

『え!?何!?リアルラ○ンツェ○!?』

髪色が彰の時よりも薄い茶色だからか、光の加減で琥珀色にも見える。しかし、長い。やたらと長い。毛先が床についていた。
前髪の長さも気になっちゃって、つい前に持ってきたら某恐怖映画の御方みたいになってしまった。

『怖ッ!絶対前髪は切ろう!!』

鏡に映る姿は自分のはずなのに、貞○様(様付けして呼ばないと呪われそうな気がして勝手に敬称呼び)にしか見えなくて、身体が小さく震えてきてしまった。
姿見の前で、小さくカタカタ震える私の後ろに弟が立った。何を思ってしまったのかバレた様で、軽く苦笑しつつ前髪を耳にかけ直し私の頭をよしよしと撫でてきた。……弟に慰められる3つ上のお姉ちゃんってなんか情けないわ。

「母さんが、その髪の長さは10年分だって。」

「10年分?」

「佳夜の身体は封印されていたけど、魔玉が側に有ったから身体の成長は止まらずにいられたんだって。髪の毛は身体の成長よりも魔力の成長の方に影響が強く表れる部分だから伸び続けてしまったらしいよ。爪は伸びなくて良かったよね」

昔、何年間も手の指の爪を伸ばし続けて生活をしている人をテレビで観たけど、弟と2人「「無いわ~」」と生理的嫌悪感を感じた事を思い出した。

「もしそうだったとしたら、煌夜が速攻で切ってくれてそう」

長い髪の一房を指に絡めて遊んでいる弟に鏡越しに笑いかけ、改めて自分の姿を見直した。
顔立ちは彰の頃と同じで母親似。無駄に長いと思っていた睫毛も、細い眉毛も、男らしくなくて少し嫌だった大きくてやや垂れていた二重瞼の目も、今は全く違和感を感じない。
むしろ、それが顔立ちの良さを表していて自分が美少女に見える。

「ね?私、母さんのおかげで割りと悪くない顔立ちだね♪」

「佳夜は母さんとか関係なくかなり美少女だと俺は思うけど?」

高校生のお姉ちゃん捕まえて美少女って表現が合っているのか判らないけど、身内贔屓戴きました~!
流石中等科の王子様!!
弟は父親似の男らしい高レベルルックスのおかげで、学園内に年齢問わずファンがいる。そして、王子様❤と呼ばれている。

『さて、と。顔は違和感無いって解ったから良かったけど、次は胸と尻よね~』

さわさわさわ

ん~…。お尻はふっくら?していて柔らか~い♪彰のお尻はぺったんこで硬かったから、やっぱ女の子って違うんだ~!

もみもみもみ

胸、は……、結構重い?コレって大きいのかな?

もみもみ もみもみ

『あっ…、ヤダ…。胸って柔らかくてお尻よりも気持ち良い。んっ!あっ…、乳首立っちゃった。どうしよう!なんか変な気分になっちゃいそうなのに手を止めらんな~い!』

薄いパジャマの上から胸を持ち上げ揉んでみると、思っていた以上の柔らかさに驚いた。
揉んでいると乳首がピンッと硬くなり、指が布の上から乳首を軽く擦っただけで下半身に甘い痺れが走り、変な高揚感に襲われた。

「佳…夜…?どうしたの?」

後ろに立っていた弟から声をかけられ、ハッと意識が戻り鏡を見ると、弟の顔はうっすらと赤くなっていた。

「あっ、あの。大きさを知りたくて!」

変な気分になってしまっていた事を誤魔化したくて思わず声が大きくなった。

「そう、なの?……だったら脱いで確認した方が早いんじゃ?」

『あっ、確かに!』

そう言われ、パジャマのボタンを外し胸を開けさせ様とした瞬間

「「待った~っ!!」」

見事に2人がハモって叫んだ。

「え?…何?」

驚き、振り返ろうとしたら

「「ちょっ!だから駄目だってば~~!!」」

またもやナイスハモり!

『……この2人ってこんなに仲が良かったっけ?』

「今!すぐっ!出ていくから、脱ぐな!!」

珍しく焦り声の久志が、弟の腕を引っ張り部屋を出て行った。

「……別に気にしないんだけど?」

相手が良く知る久志と弟だったので、意味が解らなかった。


※※※※※※※※※※※※※※※


コンコン

しばらく姿見の前で自分の身体を見ていたらドアにノック音。
振り返ると、部屋に蕾紗さんが入ってきた。

「あら!あらあらあら♪」

少し目を見開き、困り顔の蕾紗さんに私は首をかしげた。

「佳夜ちゃんってば、もしかしてその格好を久志達に見せちゃったの?」

「その格好?……いえ、脱いだのはさっきです。上は着ていましたよ?前は開けてましたが振り返ろうとしたら、なんか止められました」

「成る程ね。もうっ!佳夜ちゃんってば、女の子に戻った自覚足りてないぞ!年頃の男の子達の前で胸を晒しちゃ駄目でしょ~!いくら小さい頃からお互いの裸を見てきた仲だからって、それは男の子同士だったからでしょう?今は佳夜ちゃんは女の子なのよ。胸はおろか裸を見せたら食べて下さい♪って言ってる様なものだからね!」

そう言われて、顔が真っ赤になった。

『そうよ!私、女の子じゃん!!自分の事を口ではお姉ちゃんって言ってるくせに全然女の自覚が無かった!』

つい、変化した身体への興味が勝り、久志と弟は男で自分は女だって解っていなかった。

はっ恥ずかしい!
私ってばお尻とか胸揉んでなんか変な気分になっちゃっていたし、胸を晒そうとしちゃっていたじゃん!……つ~か、鏡越しに胸見えていたんじゃない!?

「~~~~っ!!!」

完全に痴女な自分が恥ずかし過ぎて、顔どころか全身が赤くなり、その場に踞った。

「下まで脱いじゃわなくて良かったわね♪」

と、今の私には何の慰めにもならない言葉を明るく言われた。
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