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第93話 デヌピサロに放たれる奇跡の究極魔法、その名は・・・

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アリアハノの南、オーストから北西へ向かう飛行物体が在った。
本来であれば入れば方向を見失う迷いの森、上空であろうとそれは同じな為、それを避ける形で大きく南から移動するそれは・・・
空を飛ぶベットであった。

「はぁ・・・魔法使いが空を飛ぶって言ったらホウキじゃないの?」

そのベットの上で寝転がりながらため息を一つ吐く彼女はアイリスである。
この空飛ぶベット、目的地をイメージして魔力を通せば自動で飛んでくれるのでアイリスは寛いだまま寝転がっているのだ。
近くまで行けば再び魔力を通して着地できるので、今現在はバラモヌ城に居るローザを目的地としている。
以前在った額の傷痕は綺麗に無くなっており、ユウキに褒められたポニーテールに紫の髪を縛ったアイリスは枕を台に前方を見詰める。
その手にはルー美術館のイーダから預かった世界に1つしか存在できない秘宝『世界樹の葉』が在った。
空飛ぶベットもイーダから借り受けた美術館の展示品の一つで、バラモヌとカヌダタが地下室と共に消えた事実を話したら快く貸してくれたのだ。

「しっかし、15分以内に死んだ死者を生き返らせる秘宝って何でもありね・・・」

そう言いながらどう見てもただの葉っぱにしか見えないそれを眺めるアイリス。
この『世界樹の葉』は世界に1枚しか存在できず、これが無くなった時に迷いの森の何処かに在る世界樹へ辿り着けるという。
まさにおとぎ話の様な秘宝であるが、使った後であれば世界樹に取りに行けると言うのでその価値はそこまで高くない。
ただ死者を蘇生させる程の秘宝であれば、王城で保管すべきだと言う者も勿論居る。
だがどういう訳か、迷いの森から離れた場所に移動すると1日ほどで枯れてしまうのだ。
なのでオースト近辺で死んだ者が15分以内に使用するという条件下でしか使い道が無いので、オーストのルー美術館で保管されているのであった。

「それにしてもあっちは大丈夫なのかしr・・・」

大きく迷いの森を避ける様に海上を迂回しながら空飛ぶベットで移動するアイリスであったが、正面からそれを感じ取り目を見開いた。
先程まで感じていた興奮作用のある気配、それを上回る瘴気の様な物が目視できる程の濃度で正面から襲い掛かってきたのだ!

「あぁ”っ♡ あぐっ――――ッ♡」

突然体が火照り、いきなりな為正気が保てなくなる程の高揚が全身を包む。
呼吸が荒くなり自我が保てなくなる程の快感、それにアイリスは心当たりがあった。
そう、ユウキに中出しされた時に感じるあのレベリングと似た様な抗えない程の快楽が全身を包み込んだのだ。

「ひぁっ あっ♡ッ♡♡お”っ♡ お”ぁ”ぉ”っ♡」

イーダから空飛ぶベットを借りていたのが幸いした。
普通に飛行魔法で空を飛んでいたら間違いなく海に落下していた事であろう。
だが、その快楽が魔物の体液の効果によるものだと理解したアイリス、幸いここは海の上で誰にも見られていない・・・
となれば・・・

「あッ♡ ん・・・ッ♡ あぁ・・・ッ♡ あっんッ♡♡ ん――――ッ♡」

海の上を飛ぶ空飛ぶベット、その上で一人自慰に浸り始めるアイリス・・・
誰も見てない野外と言う状況に一人興奮しながら彼女の喘ぎ声が響くのであった・・・

「ああ・・・♡ はああぁ・・・ァン♡ あぐ♡ はあ♡ あアン♡ イ”ツ・・・ぐぅう♡ ん”ん”う”ぅう♡♡~~~~ッ!!!」

しかし、アイリスはまだ知らない。
それ以上の強烈なパワーアップして復活したデヌピサロの体液が今まさに放出されている事を・・・









『疑似魔王化』を使用し、属性を魔に変換したローザとシズ、そして魔王バラモヌの3人はデヌピサロと対峙していた。
だが、そのあまりにも強力な強者の気配により動き出せないバラモヌ、そして状況を理解しているローザとシズは緊張の面持ちで構えた姿勢のまま硬直していた。

「グヌヌヌヌヌ・・・・」

小さく絞り出されるようなデヌピサロの声、その声に知性が宿っているのかは不明だが、5つの目が各々の動きを見逃すまいと見つめ返していた。
その体から発せられている体液は濃厚過ぎて、空間内でまともで居られる保証が全く無いのである。
その為、特にローザとシズは動くに動けなくなっていた。
デヌピサロの放つ『イキつく波動!』は光の速さで到達する全ての魔法やスキルを強制解除して絶頂させるモノ。
それを浴びれば二人の『疑似魔王化』は強制解除され、この空間に在るデヌピサロの体液の餌食になりイキ狂いするのは間違いないのだ。

「く・・・どうすれば・・・」

バラモヌも行動に出るのを躊躇っていた。
こちらも理由は簡単、魔王バラモヌが最も得意とするのは魔法による攻撃だからだ。
それは当然であろう、魔王バラモヌの本体は小さな宝石なのだ。
今現在バラモヌの肉体は妖女イシュダヌと言う魔物である、その肉体による攻撃力などたかが知れている。
つまり今現在、更に強くなって復活したデヌピサロにダメージを与える方法が皆無と言っても過言では無いのである。
しかも先程再生したデヌピサロを目撃した事で倒す方法が全く思い浮かばないのも事実・・・
それでもダメージを与えるのであれば魔法を反射する障壁をどうにかするしかない、だがそれには奴自身の『イキつく波動!』を使用させるほか無かった。
魔法反射の障壁を消すには内側からの魔法消去か時間経過しかないのだから。
だが、ここでまたもう一つの問題が在った。
デヌピサロの『イキつく波動!』をバラモヌがまともに受けた場合、魔物の肉体に定着させている本体との接続が解除されてしまう可能性があるのだ。
今現在この世界に生き残っている魔物が殆どいない為に今この肉体を離れれば、バラモヌに未来は無いと言えるだろう。

「ローザ様・・・」
「えぇ・・・分かってるわ・・・」

チラリとシズの視線の先をローザも確認する。
その先では、このデヌピサロの更に濃くなった瘴気にも似た体液を吸い込み悶え苦しんでいる男兵士達が居た。

「うっあっああっでる・・・っでっ・・・あっ・・・」

既に女兵士達との大乱交で枯れ果てた筈の精液を射精していた男兵士、それは命を精子として放出している現象である。
余りにも強い快楽に白目を剥いて射精している彼も、その横で意識を失い倒れて精子を垂れ流しにしている兵士ももう限界であろう。
延々と続く射精は心臓への負担が大きく、他の何名かは既に絶命し始めていた。
女と男の大きな違いが命運を分けていると言っても過言ではない、女兵士達は絶頂し続けていてもそうそう死ぬ事は無いのである、だが男達に至っては・・・
ユウキとの約束であった、死者を出さずに勝利が既に達成できない事実に苦悶の表情を浮かべるローザとシズ。

「んぐぐぐぐぐぐ・・・」
「ひぎぃいいいいい・・・」

そんな中、2名ほど必死にそれに抗って男性を守っている者が居た。
仰向けに寝かされ騎乗位で自ら男性器を挿入しているのはレイラとセリシアである。
既に意識が無いゼロとダノンの男性器を自ら奥まで挿入し、必死に膣を締め付けて射精を止めようと躍起になっているのである。
二人の膣内には漏れた精液が流れ込み、子宮までいっぱいになっているが、それでも命その物を精子として放出するのを押さえる事で延命にはなっていた。
だが、それも時間の問題であろう。
再びデヌピサロを睨みつける様に見たシズとローザ、突破口となる切っ掛けが在れば・・・
そう考えた時であった!

「う・・・そっ・・・」

ローザの頭上にデヌピサロの腕が振り下ろされていた。
目を放していた訳ではない、明らかに一瞬前まで離れた場所に居た筈なのだ。
誰の目にも止まらない動き、楽しそうに光景を見ていたトーマスでさえも驚いていた。
そう、これがデヌピサロの『二回行動』の神髄であった。

因果律を無視した同じ時空間において、2つの行動を両立させる事が出来る『二回行動』で驚く事にデヌピサロは・・・
『立ち尽くしている』と『攻撃』を並列時空間において両立させていたのだ。
その為、その場にいるデヌピサロとローザに攻撃を仕掛けたデヌピサロが同じ時空間に現れたのだ!
因果律的に、結果が残る現象がそのタイミングで実現し、ローザに攻撃が当たる直前に動いているを認識できた全員が動けなかった。

「死・・・」

ローザの脳裏に浮かぶ死のイメージ、目の前に迫っている攻撃が自分に当たれば即死が免れない事実がそれをイメージさせていた。
今からの回避は不可能、そして疑似魔王化した今でさえ耐えきれず死ぬと言う事が分かるイメージが脳裏に浮かび、ローザの意識全てがスローモーションとなる。
タキサイキア現象と呼ばれるそれを目の当たりにしたローザが出来た唯一の事は涙を流す事であった。

(もう一度、ユウキに会いたかった・・・)

身動き一つする事も出来ず、慌てた表情で動こうとするシズと回避に専念したバラモヌ。
目から溢れる涙が頬に到達する前にデヌピサロの攻撃が自分に当たる、それを理解してなおローザは動かなかった・・・
正確には動けなかっただが、それが・・・幸いした!

「ぶぉおっ?!」

強烈な激突音!
そして、衝撃で奥へとズレるデヌピサロの攻撃!
飛び散る木片と、吹き飛ぶアヘ顔の紫色をした髪の美女!
奇跡、まさに奇跡であった。
アイリスが乗った空飛ぶベット、その目的地はローザ・・・
そして、まさしく奇跡とも言える一瞬の出来事が流れる様に発生する。
デヌピサロに接近した際に、さらに強力になった体液をその身に浴びて、アイリスは悶絶する程の快楽の渦に悶え痙攣を始め、あふれ出る魔力をベットに注いでしまったのだ。
車のアクセルをベタ踏みのまま意識を失う状況に似た状況、それが暴走空飛ぶベットとなってデヌピサロの背中に激突したのである!
その瞬間!

『イキつく波動!』

直ぐ横に居たシズに向かって、ローザを攻撃した流れで放とうとしていたデヌピサロの触手による攻撃。
だが、背中に空飛ぶベットが激突した事でバランスを崩し、光はシズに当たらずその横を通過し、偶然にもその先でイキ狂い死にしそうになっていた兵士長ソアラに放たれた!

「お”~~~~ッ♡♡ ???!!~~~~~~ッ♡♡♡」

止まらない絶頂だった彼女に注がれた光、それは一瞬彼女を強烈な絶頂に誘うが、体液による中毒症状が達したと同時に解除された。
偶然、まさしく偶然と言えるであろう、ソアラは朦朧とする意識の中、最後に使用していたスキルが『イキつく波動!』により一時的に解除され、再び無意識に発動していた。
それはスキル『連携』!
対象へ続く攻撃を全て連続する攻撃へと繋がる攻撃同士で連携させて繋げるスキル。
これが本来ではあり得ない現象を引き起こしていた。

「ローザ様!」

『イキ付く波動!』が運よく直ぐ横を通過したシズ、その直後構えていた疑似魔王化を使用した際に出現させた魔力で作った槍をデヌピサロに突き刺した!
その技は『必中突き!』狙った相手に回避をさせない一撃、ただ攻撃としての威力は大したものでは無かった。
魔法反射障壁のせいで属性を付与した攻撃すらも防がれる可能性を考慮していた為、シズはこれを選択していたのだ。
そして、バラモヌの『メラゾーヌ』が『イキ付く波動!』を見た直後に放たれる!
魔法反射障壁が解除されたのを確認したバラモヌによる最高の火炎魔法である!
それと時を同じくして、ベットと共に吹き飛んだアイリスが落下しながら放った魔法が共にデヌピサロに迫る!
アイリスがユウキから『不屈』のスキルを持っていれば中出しされても耐えて、もう一回続けて中出しSEXが出来るという話を聞いていた事から『不屈』を会得していた。
その後、リンが連続中出しSEXをしたせいで全てのスキルを失って、レベルが☆☆という不思議な表記になるという事を聞いたので誰にも言わず、このスキルの使い道が今までなかったのだが・・・
その『不屈』を持っている結果、更に濃くなったデヌピサロの体液の中で気が狂う程の絶頂の中、ギリギリ自我を保ち続け、激突して破壊されたベットから投げ出されながらも根性で敵であるデヌピサロを睨みつけ氷攻撃魔法最強の『ヌヒャド』を放っていた。
彼女は勿論デヌピサロが復活した時にこの場に居なかったので、デヌピサロの体に魔法を反射する魔法障壁がある事など知らなかった。
それが、この奇跡のタイミングを実現していたのだ!

「これは・・・」

死の間際、タキサイキア現象の真っ只中にいるローザは全てがスローモーションで見えていた。
目の前にいるバランスを崩し、壁ドンならぬ床ドン状態で覆い被さるデヌピサロが目の前に居る。
そして、横からシズが槍による『必中突き』でデヌピサロを貫き、今まさに同じタイミングでバラモヌとアイリスの魔法が迫っていた。
目の前の敵に向かって放たれている魔法、そしてシズと自分から発生していたスキル『浄化』。
今まさにゼロとセリシア、レイラとダノンがSEXをしているので予期せず発動し、ほとんど密着状態だった為に僅かにデヌピサロに効果が届き、その肉体を弱体化させていた!
ローザは迫る二つの魔法をスローモーションの世界で確認しそれをぶつかる直前、スキル『融合魔法』で一つに変換した!
それは彼女の持つ『全能の英知』に記された伝説の魔法・・・

本来炎の魔法と氷の魔法は融合させる事は出来ない、それ以外を加える事で合成攻撃魔法として使用する事は出来るが、この2つだけを混ぜる事は出来ないのだ。
しかし、一つだけ・・・
炎の魔法と氷の魔法を全く同じ威力で混ぜる事が出来れば、生み出す事が出来る奇跡の究極魔法が存在する。
それが『全能の英知』に記された最強魔法の一つ・・・
だが、熱の上限は限りないが、冷気の下限は絶対零度である-273.15℃である。
その為、この魔法を発動させる一番簡単な方法は炎魔法の温度を273.15℃にして融合させる事と記されていた。
だがその温度ピッタリに合わせる事自体が至難な為、まさしく伝説となっている魔法なのだ。
だがしかし、ここにソアラの『対象へ続く攻撃全てを連続する攻撃へと繋げる』スキル『連携』が加わる事で奇跡が起きていた。
二つの攻撃魔法が『連携』により『繋がっていた』のだ!
そして、その直前にシズが放った攻撃・・・
『必中突き』、これは存在する可能性の中で当たる確率が0で無い限り相手に必ず命中する、確率無視の特殊攻撃。
これが連携により結合する事で『炎と氷が混ざる確率』を100%にしていたのだ!
その結果、奇跡は起こった!

「終わりよデヌピサロ・・・私達の、勝ちだ!」

ローザの手から放たれた魔法の融合空間、そこに同時に到達したバラモヌの『メラゾーヌ』、アイリスの『ヌヒャド』。
かつて宿命の相手とも言える二人の魔法がローザの手によって融合し弓矢の様な形となってデヌピサロに向けてシズの『必中突き』に続き放たれた!
その威力はデヌピサロの体を捕らえて浮かび上がらせ、空中でその巨体を包み込み飲み込んでいく・・・
まるで存在を光へと変換するかのように消滅していくその姿に向かってローザは魔法名を言い放つ!

「消えろこの世界から、消滅魔法『ヌドローア!!!!』」

自我が残っているのか分からない、だが進化と再生を繰り返したその肉体を光に変換されるかのように消滅していくデヌピサロのその表情はどこか穏やかで、完全に消滅するその一瞬、頭部も腹部も微笑んだ様に見えるのであった・・・
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