絶対無敵のアホウ

昆布海胆

文字の大きさ
上 下
22 / 25

第22話 最終決戦へ

しおりを挟む
ヒロシは最終決戦を前にいつものスナック大田に来ているヒロシはいつものデュワカレーではなくコーヒーを飲んでいた。
それもただのコーヒーではない、ミルクとコーヒーの分量が逆になったカフェオレの様なものである。

「うん、疲れたときは甘い物に限るね」

コーヒーからは溶けきってない砂糖が見えており口の中でジャリジャリと咀嚼する音が聞こえる。
そんなヒロシの様子をチラリと見る大田は何も言わない。
ヒロシがあの戦いを前にここへ寄っていると言う事は伝えていないが今日の雰囲気がいつもと違う事を感じ取り大田はヒロシが口にするまでは一切何も言わない。
古くからの付き合いであるからこその気遣いでもあった。

「聞いてくれよ大田君」
「なんでしょうか?」

いつも通り丁寧な大田にヒロシはここ数日の苦労を簡単に話す。
勇者にしか抜けないとされる光の聖剣を力の種を食べまくって筋力のみで引き抜いた話や、裏の世界へ行く為のマジカルミラーと言うアイテムを入手する為にランプを無くしたおじさんを家まで送り届けるのに大型トラックを使用したり、魔力を力と融合させるカードを手に入れるためにドラゴンボー○ヒーローズと言うカードゲームに子供に混じって連コしたりと非常に濃密な日々を送っていたのだ。

「それは大変でしたね~」
「分かってないなぁ~その言い方は全然分かってないよ~」

酒が入っている訳でもないのに絡んでいるヒロシであるが大田はいつもの笑顔でヒロシを励ます。
それを知っているからこそヒロシは愚痴にも近い話をしているのだ。
そして、ヒロシはおかわりにアレを注文する。

「大田君、もう一杯・・・今度はウインナーコーヒーを頂こうか」
「はい、少々お待ちを」

ウインナーコーヒー、それはオーストリアのウィーン風のコーヒーと言う事で本来はコーヒーの上に生クリームが乗っている物である。
しかし、ヒロシも大田も本物のウインナーコーヒーを知らない。
その結果がこれである。

「ををっ今日も見事なもんだわ」
「恐れ入ります」

出されたのは腸の中にコーヒーが詰められて水風船の様に膨らまされている物であった。
明らかに間違っているのだが本物を知らない二人はそれが本場のウインナーコーヒーだと勘違いしたままなのである。
知らぬがほっとけと言う言葉の通り他の客が居る営業時間にそれを出していたらググレと突っ込みを入れられる事間違い無しのそれをヒロシは美味しそうにかじって吸う。
歯で腸に穴を開けて中のコーヒーを吸い上げるその姿はタマゴアイスを食べている姿の様で大田もホンワカと見ていた。

「ごちそうさん、あのさ大田君・・・」
「ヒロシさん、次来た時は新メニューを考えているので是非味見をして欲しいのですが」
「えっ・・・」

ヒロシは今回がもしかしたら最後の来店になるかもしれないと大田に告げようと考えていたのだが大田はそれを感じ取ったのか先回りして告げる。
遠まわしに生きて帰って来いと応援されているのを理解したヒロシは笑顔で頷いて机に置いていた帽子を手にとって被る。
嬉し涙を大田に見せない為にそうしたのだ。
そして、代金の金貨をいつもの様に置いてヒロシは席を立つ。

「美味しかったよ大田君、また・・・来るね」
「はい、お待ちしております」

ヒロシはスナック大田を後にする。
今回はヒロシの好物の3品、デュワカレー、深田飴、トメェイトジュースは一切頼まなかった。
好物を口にする為にまた来ようと考えていたからだ。
勿論ヒロシはアホウを使えば自分で用意が出来る、だがそれでは駄目なのだ。

「明日は晴れると良いな」

空を見上げながらヒロシは何事も無かったように他所の家の塀に近寄りそのままアホウで作られた穴の中へ歩いて入っていく・・・
いつの間にか両手の指全てに身体能力を向上させる指輪が装着されいつもの前掛けも着けられていた。

「これが本当の最後の戦いになる、俺にとっても・・・」

誰かに語りかけるように口にしたヒロシは月面の様な場所に立っていた。
宇宙空間を見上げながらヒロシはそれを使用した!
アラームと呼ばれるアイテムである。
ファイナル大作4でピンクのしっぽを手に入れる為の必須アイテムと言えば分かる人には分かるだろう。
これは一種の賭けであった。
今まで通り巨大な餌を用意して呼び寄せる方法が一番無難ではあるがヒロシは考えていたのだ。

もしかしたらデビルバハムートはこの世界で食べる物が既に無いのかもしれない・・・

この世界は既にデビルバハムートによってあらゆる生物等は食われている。
つまり常に空腹であろう事は予想できる、そしてそのデビルバハムートに餌を与えるという事は無駄に回復をさせている事と同意なのではないか?
先代から伝えられたデビルバハムートを討伐する為の呼び寄せる方法ではあるがそれのせいで討伐が出来なくなっている事を懸念したのだ。
やがてアラームが鳴り終わり壊れて次のを出し10個目に入った時であった!

宇宙の遥か彼方から黒い影がこちらへ真っ直ぐ飛んできているのが見えたのである。
ヒロシは天体望遠鏡をアホウで取り出してそれを見た。

「やはりそうか・・・」

そこに映ったデビルバハムートはその体に傷が残っていた。
つまり前回戦ったダメージは餌をしようして毎回回復させてしまっていた事が判明したのだ。
同時にあれから日数が経過しているのにダメージが抜けていない事も分かった。

「よし、先手必勝だな!」

そう言ってヒロシは腕を組んでデビルバハムートを見詰める!
するとその背後に物凄い数の光の渦の様な歪みが発生しそこから様々な武具がゆっくりと出てくる。
そう、F○teのギルガメッシュが持つ宝具『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』である!
そこから射出される様々な星の数ほどの武具は真っ直ぐにこちらへ向かうデビルバハムートに向かって飛んでいく!
だが・・・

「ゼタフレア」

数光年も離れた距離で語られたそれはヒロシにも届いた。
音が高速を超えて届いたのだ。
それと同時にデビルバハムートの口から全てを飲み込み消滅させる光のレーザーが放たれた。
メガの上のギガ、更にその上のテラ、そしてその上に位置するペタの更に上エクサ、その更に上の名を持つフレアが放たれたのだ。
その名前の通りフレアの十垓倍の威力を持つその光のレーザーは真っ直ぐにヒロシに向かって飛んでくる。
だがヒロシは慌てる事無く一枚の布とライトを取り出してライトを布に当てる。
すると見る見る布が巨大化してデビルバハムートの放ったゼタフレアを反らした!
ヒロシが使用したのは皆大好き『ヒラ○マント』と『ビッ○ライト』である!
銀河を余波だけで消滅させるほどのエネルギーを何事も無かったかのように回避したヒロシは一本の槍を手にしていた。
残り少なくなった魂を更に削り極限まで身体能力を上げる為に手にしたそれはあの『獣の槍』であった。
野球帽からはみ出す様に髪が一気に伸びてヒロシの目は鋭くなる。

「さぁ、一緒に踊ろうぜ!デビルバハムート!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

世界最強の精技士 vs 絶対無敵の女魔王

昆布海胆
ファンタジー
異世界に邪神の手で無敵最強となった女魔王がいた。 存在するだけで破滅をもたらす女魔王の肉体を狙っていた邪神であったが、返り討ちにあってしまった。 自らが作った無敵の女魔王を倒す為に邪神は世界最強の一人の男を戦わせる・・・

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

異世界の餓狼系男子

みくもっち
ファンタジー
【小説家は餓狼】に出てくるようなテンプレチート主人公に憧れる高校生、葉桜溢忌。 とあるきっかけで願望が実現する異世界に転生し、女神に祝福された溢忌はけた外れの強さを手に入れる。 だが、女神の手違いにより肝心の強力な108のチートスキルは別の転移者たちに行き渡ってしまった。 転移者(願望者)たちを倒し、自分が得るはずだったチートスキルを取り戻す旅へ。 ポンコツな女神とともに無事チートスキルを取り戻し、最終目的である魔王を倒せるのか? 「異世界の剣聖女子」より約20年前の物語。 バトル多めのギャグあり、シリアスあり、テンポ早めの異世界ストーリーです。 *素敵な表紙イラストは前回と同じく朱シオさんです。 @akasiosio ちなみに、この女の子は主人公ではなく、準主役のキャラクターです。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

ヒーロマン

原口源太郎
大衆娯楽
我らが正義の味方、無敵のヒーロー、ヒーロマン! 今日も悪い奴らを懲らしめるために、物陰でヒーロースーツに着替えてどこに行く!

シャーロットは一度死んで蘇る。僕はこの世界が素晴らしく、そして手に余るほど自由であることを知った。

夜空
ファンタジー
 シャーロットはごく普通の人間でありながら、何の手違いか、破滅の魔女ニアとして蘇ってしまった。  そんな彼を蘇らせたネクロマンサー、名前はルル。  夢である『永遠』。そのカギを握る破滅の魔女を多大な苦労をかけて蘇らせたが、なんと彼女は中身を取り違えてしまったのだ。  とんでもないミスを犯した彼女だが、しかし持ち前の切り替えの良さと潔さから、なんとか彼女は立ち直る。  そしてルルはシャーロットが破滅の魔女の魔法を使えるようにするためにと、自身が所属するギルド『舞台裏』へ連れていくことを決める。  若干流されつつも、新たなる破滅の魔女は冒険者として、2度目の人生を始めるのだった……。    夢を追う少女と回復魔法しか使えない少年の、それぞれを縛る運命と決別する物語。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

処理中です...