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その一族の男は幸運と引き換えに20歳で神隠しに遭う・・・
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「いよいよ明日ですね」
「分かってます・・・」
悲しそうに俺にそう告げる母の目が突き刺さる・・・
俺の一族『山梨家』は代々続く名家である。
だが世間からも不思議がられるのだが、特に何か特質した何かを行っている家系ではない。
俗に言う神に愛された一族と呼ばれる幸運の一族なのだ。
「母さん、これ・・・」
「・・・」
黙ったまま俺が買ってきた宝くじを受け取る母・・・
前後賞合わせて5億円の当たり宝くじである。
去年の兄と同じように俺は今朝買ってきたそれを母に渡した。
『大丈夫だよオカン、きっと俺は帰って来るって』
そう言い残して競馬の万馬券と1等宝くじとボートレースの当たりくじを母に渡した兄、翌日の誕生日に忽然とその姿を消していた。
総額8億円にも及ぶそれが兄が残したモノである。
代々20歳の誕生日になると同時に山梨家の男は神隠しに遭うとされている、共に過ごしていたとしても忽然と目の前からその姿を消すのだ。
だがその日が近づくにつれてその者の幸運は天井知らずに高まり続けるのが我が一族の宿命であるとされていた。
その為、残る親族の女はこの幸運を永劫のモノとする為に結婚する際は婿養子を取る事が決まりとされていた。
「じゃあちょっと墓参りにでも行ってくるよ」
「今夜は一緒に夕飯を食べるんでしょ?」
「うん、母さんの手料理最後にしっかり味わいたいからね」
そう会話を交わして俺は兄のお墓参りに行く事にした。
行方不明になってからまだ1年、法律的にはまだ死亡認定はされていないが、俺の一族の誰もが兄が帰ってこない事は分かっていた。
事実、親族や先祖でも帰ってきた事例が殆どないのだ。
「なぁ・・・兄貴・・・いったいどうなってるんだ?」
墓石に手を合わせて尋ねる言葉に風が返答を返す様に頬を撫でる。
まるで何かに包まれるような感覚はここ数日毎日感じていた。
これが神に愛されるという事なのかと俺は帰りに考えながら自販機で飲み物を購入した。
『ピピピピー!』
当たりのランプが点灯しもう一本ジュースが出てきた。
それを手にしてお釣りを何気に見てみると・・・
「ははっ・・・」
思わず笑いが込み上げる。
印刷がズレた10円玉がそこにあった・・・
エラーコインと呼ばれるマニアに高額で取引される物だ。
「これが・・・こんなのが一体何だってんだよ!」
思わず自販機を殴りつけるがそんな事をしたところで無駄である。
運よく怪我をする事も無ければ、自販機が運悪く壊れる事も無い・・・
まるで神に捧げる体なのだと言わんばかりに何をしても奇跡的に助かるとされている通りになっていた。
過去に最終日に自殺を試みた者も勿論居た。
だが、どんな方法を用いようとしても結果は変わらない・・・
そもそも死のうとする手段が不回避な物であれば実行に移す事すらも不可能なのだ。
それがルールと言わんばかりに殴りつけた拳に傷一つ無いのを見てため息が漏れた・・・
夕食は母の手作りカレーであった。
兄と共に楽しく食べた懐かしい味を堪能し、母に数年ぶりのハグをした。
何年経とうと変わらない母のぬくもりは優しく俺を包み込んでくれ、俺はしばらくの間そうして過ごしていた。
そして・・・その時間はやがて訪れた・・・
「じゃあ母さん、おやすみ」
「・・・ぅん」
涙ぐむ母の最期の返事は掠れていた。
何をやってもどうしても男が20歳の誕生日に居なくなるのは避けられないのを理解しているからこそ、母は俺を離した。
目の前で兄が忽然と姿を消した去年、母は自身の正気を疑う程の何かを見たらしい・・・
それが一体何なのかは分からない、頑なに話そうとしない母はそれ以降兄は元々居なかったと言うような生活態度を取っていた。
「一体何が起こると言うんだ?」
そう言って最後の仕事と言わんばかりに俺は自室で自分のパソコンを立ち上げた。
正直本当に自分が居なくなるなんて、兄が消えたあの日までは信じていなかった。
だからこそやるべきことはやっておかなければならない・・・
そう言って俺は自分のパソコンの中身をフォーマットした。
画像や映像・・・記録と言った全てのモノを削除したのだ。
「さて、どうなるかな・・・」
時計を見ると11時を過ぎていた。
これから自分が消えるかもしれない・・・
そう考えると何故か部屋を掃除したくなる気持ちが溢れだしてきた。
「自分の寿命が見えたらこんな感じなのかな・・・」
そう不意に笑いが込み上げつつも涙があふれてきた。
少なくない友達との別れを告げるかどうかも悩んだ・・・
だが、どこかで自分は大丈夫だと考えている自分の楽観的な思考に首を振って歯止めをかけた。
「せめてあいつにだけは・・・」
そう思い、一人の女友達にLINEを送る事にした。
幼い頃からずっと仲良くしてきた幼馴染、特別な関係になる事も無く高校を卒業してからは疎遠になっていた。
思い返せば兄が居なくなってから連絡を取らなくなったんだったな・・・
そう思い軽くメッセージを送ってみた・・・
『よぉ、夜遅くにごめんな。久しぶりだけど元気にしてる?』
当然返事は帰ってこない・・・
もしかしたらもう連絡先を削除されているのかもしれない・・・
俺はスマホをベット上に投げ捨て自室に仰向けに寝転がった。
天井のライトを眺めながらすぐ横の染みに目をやり・・・
「ハハッ・・・あの染み顔みたいだな・・・」
そう言ったと同時に俺の姿は忽然とその場から消え去るのであった・・・
「おはよう母さん・・・」
「う・・・そ・・・ 信二・・・信二なの?!」
「あぁ」
朝日が昇る中、食卓テーブルで泣きはらした母の顔は酷かった。
だがそれが俺を心配しての顔だと分かり気にせずに母に再びのハグを行った。
「おかえり・・・おかえり信二」
「ただいま・・・」
積もり積もった話は確かにある、だが俺は帰ってこれたんだ。
あの事は誰にも話しては駄目だと言われたので生涯俺は話す事は無いだろう。
遥か昔に交わされた女神との俺の一族の契約・・・
『女神を満足させる過去に誰も考案した事の無い新しい性癖を伝えて満足してもらえれば一族の男は帰れる』
と言う古のふざけた契約の事は誰にも言えない・・・
そして、俺が女神に教えた特殊性癖・・・
『未精通のショタとHして初精通させる』
忘れもしない俺が幼馴染と体験した初体験の経験がまさか役に立つとは思わなかった。
俺は返事が返ってきていたLINEに返事を返す・・・
『直ぐに君と会いたい、今日会える?』
俺の人生はまだまだこれからも続いていく・・・
だから俺は今日告白する事を決めていた。
駄目元で良いんだ、俺にはまだ時間があるんだから!
完
「分かってます・・・」
悲しそうに俺にそう告げる母の目が突き刺さる・・・
俺の一族『山梨家』は代々続く名家である。
だが世間からも不思議がられるのだが、特に何か特質した何かを行っている家系ではない。
俗に言う神に愛された一族と呼ばれる幸運の一族なのだ。
「母さん、これ・・・」
「・・・」
黙ったまま俺が買ってきた宝くじを受け取る母・・・
前後賞合わせて5億円の当たり宝くじである。
去年の兄と同じように俺は今朝買ってきたそれを母に渡した。
『大丈夫だよオカン、きっと俺は帰って来るって』
そう言い残して競馬の万馬券と1等宝くじとボートレースの当たりくじを母に渡した兄、翌日の誕生日に忽然とその姿を消していた。
総額8億円にも及ぶそれが兄が残したモノである。
代々20歳の誕生日になると同時に山梨家の男は神隠しに遭うとされている、共に過ごしていたとしても忽然と目の前からその姿を消すのだ。
だがその日が近づくにつれてその者の幸運は天井知らずに高まり続けるのが我が一族の宿命であるとされていた。
その為、残る親族の女はこの幸運を永劫のモノとする為に結婚する際は婿養子を取る事が決まりとされていた。
「じゃあちょっと墓参りにでも行ってくるよ」
「今夜は一緒に夕飯を食べるんでしょ?」
「うん、母さんの手料理最後にしっかり味わいたいからね」
そう会話を交わして俺は兄のお墓参りに行く事にした。
行方不明になってからまだ1年、法律的にはまだ死亡認定はされていないが、俺の一族の誰もが兄が帰ってこない事は分かっていた。
事実、親族や先祖でも帰ってきた事例が殆どないのだ。
「なぁ・・・兄貴・・・いったいどうなってるんだ?」
墓石に手を合わせて尋ねる言葉に風が返答を返す様に頬を撫でる。
まるで何かに包まれるような感覚はここ数日毎日感じていた。
これが神に愛されるという事なのかと俺は帰りに考えながら自販機で飲み物を購入した。
『ピピピピー!』
当たりのランプが点灯しもう一本ジュースが出てきた。
それを手にしてお釣りを何気に見てみると・・・
「ははっ・・・」
思わず笑いが込み上げる。
印刷がズレた10円玉がそこにあった・・・
エラーコインと呼ばれるマニアに高額で取引される物だ。
「これが・・・こんなのが一体何だってんだよ!」
思わず自販機を殴りつけるがそんな事をしたところで無駄である。
運よく怪我をする事も無ければ、自販機が運悪く壊れる事も無い・・・
まるで神に捧げる体なのだと言わんばかりに何をしても奇跡的に助かるとされている通りになっていた。
過去に最終日に自殺を試みた者も勿論居た。
だが、どんな方法を用いようとしても結果は変わらない・・・
そもそも死のうとする手段が不回避な物であれば実行に移す事すらも不可能なのだ。
それがルールと言わんばかりに殴りつけた拳に傷一つ無いのを見てため息が漏れた・・・
夕食は母の手作りカレーであった。
兄と共に楽しく食べた懐かしい味を堪能し、母に数年ぶりのハグをした。
何年経とうと変わらない母のぬくもりは優しく俺を包み込んでくれ、俺はしばらくの間そうして過ごしていた。
そして・・・その時間はやがて訪れた・・・
「じゃあ母さん、おやすみ」
「・・・ぅん」
涙ぐむ母の最期の返事は掠れていた。
何をやってもどうしても男が20歳の誕生日に居なくなるのは避けられないのを理解しているからこそ、母は俺を離した。
目の前で兄が忽然と姿を消した去年、母は自身の正気を疑う程の何かを見たらしい・・・
それが一体何なのかは分からない、頑なに話そうとしない母はそれ以降兄は元々居なかったと言うような生活態度を取っていた。
「一体何が起こると言うんだ?」
そう言って最後の仕事と言わんばかりに俺は自室で自分のパソコンを立ち上げた。
正直本当に自分が居なくなるなんて、兄が消えたあの日までは信じていなかった。
だからこそやるべきことはやっておかなければならない・・・
そう言って俺は自分のパソコンの中身をフォーマットした。
画像や映像・・・記録と言った全てのモノを削除したのだ。
「さて、どうなるかな・・・」
時計を見ると11時を過ぎていた。
これから自分が消えるかもしれない・・・
そう考えると何故か部屋を掃除したくなる気持ちが溢れだしてきた。
「自分の寿命が見えたらこんな感じなのかな・・・」
そう不意に笑いが込み上げつつも涙があふれてきた。
少なくない友達との別れを告げるかどうかも悩んだ・・・
だが、どこかで自分は大丈夫だと考えている自分の楽観的な思考に首を振って歯止めをかけた。
「せめてあいつにだけは・・・」
そう思い、一人の女友達にLINEを送る事にした。
幼い頃からずっと仲良くしてきた幼馴染、特別な関係になる事も無く高校を卒業してからは疎遠になっていた。
思い返せば兄が居なくなってから連絡を取らなくなったんだったな・・・
そう思い軽くメッセージを送ってみた・・・
『よぉ、夜遅くにごめんな。久しぶりだけど元気にしてる?』
当然返事は帰ってこない・・・
もしかしたらもう連絡先を削除されているのかもしれない・・・
俺はスマホをベット上に投げ捨て自室に仰向けに寝転がった。
天井のライトを眺めながらすぐ横の染みに目をやり・・・
「ハハッ・・・あの染み顔みたいだな・・・」
そう言ったと同時に俺の姿は忽然とその場から消え去るのであった・・・
「おはよう母さん・・・」
「う・・・そ・・・ 信二・・・信二なの?!」
「あぁ」
朝日が昇る中、食卓テーブルで泣きはらした母の顔は酷かった。
だがそれが俺を心配しての顔だと分かり気にせずに母に再びのハグを行った。
「おかえり・・・おかえり信二」
「ただいま・・・」
積もり積もった話は確かにある、だが俺は帰ってこれたんだ。
あの事は誰にも話しては駄目だと言われたので生涯俺は話す事は無いだろう。
遥か昔に交わされた女神との俺の一族の契約・・・
『女神を満足させる過去に誰も考案した事の無い新しい性癖を伝えて満足してもらえれば一族の男は帰れる』
と言う古のふざけた契約の事は誰にも言えない・・・
そして、俺が女神に教えた特殊性癖・・・
『未精通のショタとHして初精通させる』
忘れもしない俺が幼馴染と体験した初体験の経験がまさか役に立つとは思わなかった。
俺は返事が返ってきていたLINEに返事を返す・・・
『直ぐに君と会いたい、今日会える?』
俺の人生はまだまだこれからも続いていく・・・
だから俺は今日告白する事を決めていた。
駄目元で良いんだ、俺にはまだ時間があるんだから!
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