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第53話 増えるリリン

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奥に進むしかないと四人は互いに無言で頷いて前へ進み始める…
真っ直ぐに数メートル進んだら直角に左に曲がる角まで来てジタンがゆっくりと顔を覗かせる。

「うし、何もないみたいだ」

そう言って曲がったジタンに続いてカミラが曲がろうとした時に足を止めた。
その表情は驚きに満ちておりカインとリリンも顔を覗かせる。
そこには何もない、ただ通路が真っ直ぐに何処までも続いているだけに見えるようだが直ぐにその異変に気が付いた。

「ジタンさんは?」

リリンが口にして通路を見回すが隠れる場所も無ければあの一瞬で奥まで移動することは不可能だ。
それでも戻っても玄関からは出れはしないので進むしかない、そう考えた3人は互いに手を取って通路に足を踏み出した。
リリンの両手をカインとカミラが繋いで歩を進めた瞬間であった。
それはまるで布が垂れ下がってたように顔に体に感触が伝わった。
見えない何かがそこにありその中へ進んでしまったのだ。

「ひっ」

リリンの手に力が入り繋いだ手からそこにリリンが居ると言うのが分かったから意識を保てたが明らかにおかしかった。
空気が違う?
いや、違う世界へ来たように体に違和感が駆け巡ったのだ。
どっちを向いているのか、何処へ向かっているのか、何もかもが分からない。
だが目に見えているのは変わらない真っ直ぐな通路なのだ。

「進むぞ」

カインの言葉に握られた手から返事のように力が一瞬込められカインを先頭に歩を進めた。
暗くて見えないはずは無いのだが手を繋いでいるその手から先が見えずカミラが居るのかも分からない。
だが繋いでいるリリンのもう片方の手を繋いでいる筈だと気持ちを落ち着かせ前へ進んだ。
数歩歩いて突如視界が開けた!
真っ直ぐに続いていた通路は突然広めの部屋になっておりそこで空気が変わった。

「お、お前ら…」

部屋を調べていたのか隅に居たジタンが声を出しそっちを向いて不思議に思う。
そして、俺も気付いた。
俺と手を繋いでいるリリンが左右両方に二人居るのだ?!

「えっ?リリンちゃん?」

カミラが声をあげそっちを見るとカミラの左右にもリリンが居た。
そう、俺達はそれぞれ二人ずつ、計四人のリリンと手を繋いでいたのだ。
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