呪われた死にたがりの男

第５２話 少年の記憶２

集められた9人の男女。
少年は気付かなかったが全員性別か年齢が違ったのだ。
これから有名な医者の助手として働けると考え気合いを入れる者、他人を蹴落として上に上がろうと考える者、口減らしに捨てられるところを拾われて希望を見出だす者、様々な思いを持つ9名だったがその日の夜事件は起こった。

「野党だ！皆逃げ…」

誰かの叫びに飛び起きた少年は荷馬車の入り口に居た青年が胸から刃物を生やし口から血を吐き出しながら最後まで言葉を発せれなくなっているのを見た。
そこからは悲惨だった。
慌てて逃げ出す者が闇の中背中から斬り付けられ殺されていくのを少年は馬車の中で見ていた。
最初に馬車に乗ったときに話しかけてくれた男が少年に動かないようにと伝え殺された青年の死体を自分に乗せるように動かしその姿を隠して斬り殺された人がいる反対側へと飛び出し駆け抜けていく。
早い、その男は足が凄く早く闇に隠れていた野党と思われる人達が一斉に男を追い掛けていくのを少年は見ていた。

やがて辺りが静まり返った中にゴソゴソと誰かが何かをしている音が聞こえた。
少年は死体の影からそれを見るとそこには少年を迎えに来た男性の姿があった。
あの人は難を逃れたんだ！
そう思った少年は今のうちに逃げようと話しかけようとしたところで見てしまった。

男は死体の首を持っていたノコギリ型の刃物で切断しその生首を集めていた。
暗い中でゴリゴリと首を切る音と斬られた部分から吹き出す血が草などに降りかかる音が静寂の中少年の耳に反響し恐怖で少年は動けなくなっていた。

そして、男が外にあった死体の首を集め終わり馬車の中の少年に覆い被さる形でのし掛かっている死体に手を伸ばした時に少年はその死体を男に押しやり馬車から逃げ出すのだった。