呪われた死にたがりの男

昆布海胆

文字の大きさ
上 下
36 / 113

第36話 最後の部屋へ

しおりを挟む
今のはなんだ?

男は頭の中に流れた映像を見た。
それは目の前の椅子に縛られ目隠しをされた領主の記憶だった。
ルイがこれまで行ってきた所業…

食べたい…

再び男の脳内に言葉が響く。
口を一度縫われそれを引き裂く形で開けられた口内から伸びてる舌は男の腹部に突き刺さっていた。
だがスライムと同化した男の体はその舌を体内に取り込み消化しつつ一体化していた。

グンッと引き寄せようとしたのだろう、領主の体が椅子ごと前に進む…
男の脳内には領主の食欲が繰り返し叫びを上げていた。
そして、無理矢理引き込もうとされた舌は立って耐える男ではなく椅子に縛られた領主を動かした。
座ったままの姿勢で前に倒れる領主、その頭部が男の体内に沈んだ。
意図せず男は領主を取り込み焦って引き剥がそうとしたがその手すらも領主の肩を取り込んでしまう。
そのまま男の体内で消化される領主だったが突如禍々しい程の純粋な欲求を感じ男は後ろに下がり領主の体を解放するのだった。

男が目の前にある頭部と両腕が無くなった領主の体から感じたのは純粋すぎる食欲だった。
それは記憶を読み取った男が直ぐに理解した通り領主の腹部に一体化したあの肉塊のモノであった。
意思もなくただ己の欲求に従い続けるその様は男が以前見たゾンビ映画を想像させるのだが男も記憶を無くしており死なずに人を食らう化け物というイメージでしかなかったが男の脳内にそのイメージが浮かんでいた。

そして、足だけ倒れた椅子に縛られた領主の胴体は尚もモゾモゾ動き続けているのを目の当たりにして男はそれを放置し部屋を出て更に奥へと向かうのであった。

その奥にある最後の部屋を覗いた男が見たのは鎖に繋がれ壁に磔にされた全裸の男。
その男の身体中に肉塊がくっついておりその体から肉塊を切り取る老執事の姿であった。
しおりを挟む

処理中です...