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The road to space derby
Earth Derby
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アースダービー当日。
パドックの周回を現地で見ていた一部の競馬ファンがスーパーツイッターで呟いた。
「あれ?アーステイルがブリンカー付けてるよ?!」
その場ではザワつく事はなかったが、ギャラクシーネット(全宇宙ネット)上では瞬時に話題に上がった。
タリーがレース前の騎手の控え室で、馬威人に話しかけた。
「馬威人さんアーステイルに初ブリンカーですか、気合が入ってますね、、、僕も負けませんよ」
そう言って向かったタリーが騎乗したサークルエナジーを見ると、なんとも優雅な振る舞いで、その歩みは大地を知り尽くしたような完歩であったため、流石の馬威人もグッと下唇を噛み締め、負けまいと心を鼓舞した。
もう1頭の注目のジャパンダービー馬であるティアーズオブファラオには、昨年の宇宙ダービーを制覇した篠屋騎手が騎乗していた。
憧れの騎手が目の前に、、、すると篠屋は馬威人を見るとクイっと口角を上げ、小さく頑張ろうと口を動かした。
(きゅぴーーーん!!!)
心も身体も全てが震えた。
憧れの人であり、最大の敵でもある篠屋騎手にスポーツマンシップとしてこれ以上はない崇高でフェアな姿勢を学んだ気がした。
昨年の療養時に観た、宇宙ダービーのレースが頭に浮かんでいた。
(凄かった、、凄すぎた、、、
いや、何を思い出している。今はその凄さに打ちひしがれてる場合じゃない。
長かった、、、ここまでくるのに必死に食らいついてきたんだ。苦しかった、痛かった、たくさん涙も流して来た。
その全てはこのレースと、一歩先の宇宙ダービーのためだけに重ねてきたんだ。
そう、僕は勝ちにきているんだ。脚を失って、金属を付けてまでここに来たんだ。
フェアな姿勢は保ちたいが、それを守れるほどできた人間ではないと、自分では思っている。
篠屋さん。
僕は勝ちますよ。)
馬威人は心の奥底で闘志を激らせた。
パドックが済み、各馬が本馬場へと向かう中、最新のオッズが発表される。
( さぁ~この日がやって参りました!地球馬最強の称号を決める
第245回S1アースダービー!
ここクイーンズランド競馬場で芝の右回り2400Mコース、18頭で行われます!さぁ、こちらは各国で中継され、全宇宙にも配信されております!
時間帯を気にすることもなく非常に多くの人がこのレースに注目、熱い眼差しで見つめておられることでしょう!
さぁ、現在のオッズは1番人気はオーストラリアのサークルエナジー。鞍上は現地リーディング1位のタリー騎手!。
2番人気は日本から来ました現在日本一のダービー馬!ティアーズオブファラオ!鞍上は日本の要であります、昨年宇宙ダービーを制しました現レジェンド篠屋騎手!
3番人気はフランスからの刺客、フランスのダービー馬ヴィエヌリュージュ!お父さんはなんと日本の古きディープ系の血を継いでいる唯一のセントディーパです!鞍上はフランスのリーディング2位マラリス騎手!
あとは綺麗に割れていますが、注目の日本馬のもう1頭!ジャパンダービー2着馬!そして人類初の黄金の義足を持って復活してきました!鞍上は馬威人騎手!こちらは少し人気を下げており、現在6番人気となっております!)
錚々たるメンバーが各国から集まる中、それぞれの競馬人が注目をしていたのは、やはり1番人気のタリーが乗るサークルエナジーだったが、意外にも次世代のレジェンド候補がどんなレースをするのか?そこに多くの宇宙競馬人は興味を抱いていた。そんなことは露知らずに、馬威人はレースの展開にだけ気持ちを集中させていた。
テイル用のブリンカーを付けた。ブリンカーは後ろや多方向を見れないようにする馬具だ。馬威人はミーティングでの三輪の言葉を思い出していた。
(テイルは他馬を気にするといっても何故かそれは右側の自分の後ろに居る馬だけだ。
左に馬が居てもそんな素振りは見せない。だから、左回りのジャパンダービーで好走できたのは、左回りで外目を追走したから右側の後方には馬が居なかった。
今回は残念だが右回りだ。そして内目の枠で6番に入った。
今回出走頭数は18頭。
外目に入るとかなりキツかったが、幸い内目だ。そして、何より今回のコースは前が有利だ。
コーナーを4回周る。後ろからだとテイルの脚でも届かない可能性がある。だから逃げる。
内目を活かして逃げれば右後方にはせいぜい1頭、追走してくるくらいだ。それを遮れさえすれば、気にせずに走れる。
だからブリンカーは右側のみだ。
右側だけ前方しか見えないようにしている。これがテイルの作戦だ。)
馬威人の脳裏にしっかりと作戦のフィルムが焼き付いている。
やるしかない、、、やるしかないんだ。
各馬がゲートに納まり、枠入り完了。
スタートした。
ポンと出る事ができた。
偶数番はゲート入りが後半だから待たされる時間が少ないために、スタートしやすい面があるのだ。
客席スタンドは少しザワついている。
アーステイルが逃げたからだ。
作戦通りにテイルを前へ前へと押し出す。
折り合いは強烈な強さで結ばれている。
テイルは馬威人の指示をしっかり聞き入れ、ハナを取ることができた。
よしっ!、、三輪がレースビューを観ながら小さく言う。
先頭を走るテイル。馬威人は注意したい馬がどのあたりに居るかを素早く振り向き確認をする。
(タリーさんの馬は中団インコースで脚を溜めている。篠屋さんは4、5番手か、好位でスマートな機動力を使うはず。3番人気のマラリスさんの馬は見えない、後方か、、、他の馬にも気をつけないと、、、それにしてもすごい圧力だ。テイル、落ち着いていこうな。)
スタンドを一度通り過ぎる。
歓声は大きいが離れている分、さほど馬に影響はない。白色のターフに18頭の蹄の音と痕跡が残っていく。
各馬が正面を過ぎていく中、三輪は先頭を過ぎていく馬威人とテイルの走りを観て、一抹の不安を感じた、、、
「 うそだろ、、、」
チームが問う。
「三輪さん、、どうかしたんですか?」
三輪は、ごくりと唾を呑みこんで言った。
「*落鉄しているかもしれない、、、」
*蹄鉄から蹄が外れてしまうこと、アスリートがスパイクや、シューズを脱いだような状態と例えられることがある
一同は、一斉に空を仰いだ、、、
パドックの周回を現地で見ていた一部の競馬ファンがスーパーツイッターで呟いた。
「あれ?アーステイルがブリンカー付けてるよ?!」
その場ではザワつく事はなかったが、ギャラクシーネット(全宇宙ネット)上では瞬時に話題に上がった。
タリーがレース前の騎手の控え室で、馬威人に話しかけた。
「馬威人さんアーステイルに初ブリンカーですか、気合が入ってますね、、、僕も負けませんよ」
そう言って向かったタリーが騎乗したサークルエナジーを見ると、なんとも優雅な振る舞いで、その歩みは大地を知り尽くしたような完歩であったため、流石の馬威人もグッと下唇を噛み締め、負けまいと心を鼓舞した。
もう1頭の注目のジャパンダービー馬であるティアーズオブファラオには、昨年の宇宙ダービーを制覇した篠屋騎手が騎乗していた。
憧れの騎手が目の前に、、、すると篠屋は馬威人を見るとクイっと口角を上げ、小さく頑張ろうと口を動かした。
(きゅぴーーーん!!!)
心も身体も全てが震えた。
憧れの人であり、最大の敵でもある篠屋騎手にスポーツマンシップとしてこれ以上はない崇高でフェアな姿勢を学んだ気がした。
昨年の療養時に観た、宇宙ダービーのレースが頭に浮かんでいた。
(凄かった、、凄すぎた、、、
いや、何を思い出している。今はその凄さに打ちひしがれてる場合じゃない。
長かった、、、ここまでくるのに必死に食らいついてきたんだ。苦しかった、痛かった、たくさん涙も流して来た。
その全てはこのレースと、一歩先の宇宙ダービーのためだけに重ねてきたんだ。
そう、僕は勝ちにきているんだ。脚を失って、金属を付けてまでここに来たんだ。
フェアな姿勢は保ちたいが、それを守れるほどできた人間ではないと、自分では思っている。
篠屋さん。
僕は勝ちますよ。)
馬威人は心の奥底で闘志を激らせた。
パドックが済み、各馬が本馬場へと向かう中、最新のオッズが発表される。
( さぁ~この日がやって参りました!地球馬最強の称号を決める
第245回S1アースダービー!
ここクイーンズランド競馬場で芝の右回り2400Mコース、18頭で行われます!さぁ、こちらは各国で中継され、全宇宙にも配信されております!
時間帯を気にすることもなく非常に多くの人がこのレースに注目、熱い眼差しで見つめておられることでしょう!
さぁ、現在のオッズは1番人気はオーストラリアのサークルエナジー。鞍上は現地リーディング1位のタリー騎手!。
2番人気は日本から来ました現在日本一のダービー馬!ティアーズオブファラオ!鞍上は日本の要であります、昨年宇宙ダービーを制しました現レジェンド篠屋騎手!
3番人気はフランスからの刺客、フランスのダービー馬ヴィエヌリュージュ!お父さんはなんと日本の古きディープ系の血を継いでいる唯一のセントディーパです!鞍上はフランスのリーディング2位マラリス騎手!
あとは綺麗に割れていますが、注目の日本馬のもう1頭!ジャパンダービー2着馬!そして人類初の黄金の義足を持って復活してきました!鞍上は馬威人騎手!こちらは少し人気を下げており、現在6番人気となっております!)
錚々たるメンバーが各国から集まる中、それぞれの競馬人が注目をしていたのは、やはり1番人気のタリーが乗るサークルエナジーだったが、意外にも次世代のレジェンド候補がどんなレースをするのか?そこに多くの宇宙競馬人は興味を抱いていた。そんなことは露知らずに、馬威人はレースの展開にだけ気持ちを集中させていた。
テイル用のブリンカーを付けた。ブリンカーは後ろや多方向を見れないようにする馬具だ。馬威人はミーティングでの三輪の言葉を思い出していた。
(テイルは他馬を気にするといっても何故かそれは右側の自分の後ろに居る馬だけだ。
左に馬が居てもそんな素振りは見せない。だから、左回りのジャパンダービーで好走できたのは、左回りで外目を追走したから右側の後方には馬が居なかった。
今回は残念だが右回りだ。そして内目の枠で6番に入った。
今回出走頭数は18頭。
外目に入るとかなりキツかったが、幸い内目だ。そして、何より今回のコースは前が有利だ。
コーナーを4回周る。後ろからだとテイルの脚でも届かない可能性がある。だから逃げる。
内目を活かして逃げれば右後方にはせいぜい1頭、追走してくるくらいだ。それを遮れさえすれば、気にせずに走れる。
だからブリンカーは右側のみだ。
右側だけ前方しか見えないようにしている。これがテイルの作戦だ。)
馬威人の脳裏にしっかりと作戦のフィルムが焼き付いている。
やるしかない、、、やるしかないんだ。
各馬がゲートに納まり、枠入り完了。
スタートした。
ポンと出る事ができた。
偶数番はゲート入りが後半だから待たされる時間が少ないために、スタートしやすい面があるのだ。
客席スタンドは少しザワついている。
アーステイルが逃げたからだ。
作戦通りにテイルを前へ前へと押し出す。
折り合いは強烈な強さで結ばれている。
テイルは馬威人の指示をしっかり聞き入れ、ハナを取ることができた。
よしっ!、、三輪がレースビューを観ながら小さく言う。
先頭を走るテイル。馬威人は注意したい馬がどのあたりに居るかを素早く振り向き確認をする。
(タリーさんの馬は中団インコースで脚を溜めている。篠屋さんは4、5番手か、好位でスマートな機動力を使うはず。3番人気のマラリスさんの馬は見えない、後方か、、、他の馬にも気をつけないと、、、それにしてもすごい圧力だ。テイル、落ち着いていこうな。)
スタンドを一度通り過ぎる。
歓声は大きいが離れている分、さほど馬に影響はない。白色のターフに18頭の蹄の音と痕跡が残っていく。
各馬が正面を過ぎていく中、三輪は先頭を過ぎていく馬威人とテイルの走りを観て、一抹の不安を感じた、、、
「 うそだろ、、、」
チームが問う。
「三輪さん、、どうかしたんですか?」
三輪は、ごくりと唾を呑みこんで言った。
「*落鉄しているかもしれない、、、」
*蹄鉄から蹄が外れてしまうこと、アスリートがスパイクや、シューズを脱いだような状態と例えられることがある
一同は、一斉に空を仰いだ、、、
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