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第二章:私の心を掻き乱さないでくださいっ!
41.知らなかった真実①
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復帰初日は恙なくとは言えなかったが、とりあえず無事に終わった。
イリアのおかげであの後はロジェに捕まることもなく、帰る支度をしていると突然聞き覚えのある声に名前を呼ばれた。
「フェリシア」
「あ……、エルネスト様!」
振り返るとそこには優しい表情で立っているエルネストがいて、目が合うと思わず表情が綻ぶ。
ずっと会いたかったエルネストに会うことが出来て、ほっとしていたのだと思う。
一度会ってちゃんと話がしたいとずっと思っていたからだ。
「久しぶりの学園はどうだった?」
「色々ありました」
ロジェが教室に来たことや新しい友人が出来たことなど、思った以上に色々あった一日だった。
私が答えるとエルネストは「そうか」と小さく呟く。
その表情はどこか穏やかで、優しい雰囲気に包まれていた。
(今日はもう会えないかと思ってた)
「あのっ、エルネスト様と話がしたいと思っていたんです!」
「最近は色々あってフェリシアの屋敷に顔を出せてなかったからな。私もフェリシアと話したいと思っていたよ」
(やっぱり忙しかったんだ。王女殿下のことかな)
エルネストも私と話したいと思っていてくれた事を知り、なんだか嬉しくなった。
そして私達はいつものあの部屋に向かうこととなった。
***
「ここに来るのもすごく久しぶりな気がします」
「そうだろうな。暫くフェリシアは学園を休んでいたからね」
「はい。今日はグランさんはいらっしゃらないんですか?」
「グランには少し遣いを頼んでいてね。直に戻って来ると思うよ」
「そうなんですね」
「それまでに色々と話しておきたいことがあるから、早速だけど話を始めてもいいかな?」
「はい!大丈夫です」
きっと話というのは間違いなく王女殿下のことだろう。
直ぐに本題に入ることになり、ドクドクと胸の鼓動が早くなるのを感じる。
私達はテーブルを挟んで対面する様に座っていた。
室内はとても静かで、久しぶりなこともあり何となく緊張してしまう。
(ただ話をするだけなのに。なんで私、こんなにも緊張しているの)
「まずはフェリシアも噂等で聞いているとは思うけど、姉上と君の元婚約者であるロジェ・オクレールの婚約は近々正式に決まるだろう」
「あの噂って本当だったんですね」
「フェリシアはどこまで知っているのかな?」
「婚約のことは学園に来て始めて知りました。二人はすでに深い仲で、王女殿下のお腹にはロジェの子供がいて……」
私が気まずそうに話すと、エルネストは「そういう事になってるのか」とぼそりと呟いた。
「半分は誤りだな」
「え?どういうことですか?」
「姉上と彼が深い関係であると言うことは、王宮内で以前から噂されていた。毎日のように私室に通っていたのだから、そういう関係であると思われても仕方はない事だと思う。だけど姉上に子供が出来たというのは誤りだ。勝手に噂が一人歩きして、そんな風に伝わってしまったんだろうな。そういう行為に及んだのは間違いないとは思うが、相手が本当に彼かは分からない」
「え……?そう言えばロジェは王女殿下に嵌められたって言ってました」
「やはりな。私もそうだろうと思っていた。オクレール子息が相手だと証言すれば、姉上にとってのメリットはかなり大きいからな」
「…………」
エルネストは深くため息を漏らした。
今の話を聞いて私の心は大いに動揺していた。
(あの噂は全部でたらめで、ロジェは王女殿下に騙されたってこと?)
「姉上にとっての一番のメリットは望んでいない婚約話が白紙に戻ることだ。相手が侯爵家の嫡男なら、嫁ぎ先としても悪くは無い。更に、姉上が気に入っている彼まで手に入る。婚約が正式に決まれば、幽閉も解かれる事になるだろう」
「そんな……」
私は青ざめた顔で小さく声を漏らした。
その声は僅かに震えている。
一連の話を聞いていると一番の被害者は間違いなくロジェな気がしていた。
ロジェは最初から利用されていたのだろうか。
王女が私達をターゲットにしたのは、婚約を白紙に戻させる目的の為だったのか。
頭の中で色々な物事がぐるぐると回り、何が正しいのか次第に分からなくなっていた。
ロジェとはもう関わりたくないと思っているのに、胸の奥が苦しくなるのを感じる。
これは同情心なのだろうか。
それとも罪悪感なのか、分からない。
イリアのおかげであの後はロジェに捕まることもなく、帰る支度をしていると突然聞き覚えのある声に名前を呼ばれた。
「フェリシア」
「あ……、エルネスト様!」
振り返るとそこには優しい表情で立っているエルネストがいて、目が合うと思わず表情が綻ぶ。
ずっと会いたかったエルネストに会うことが出来て、ほっとしていたのだと思う。
一度会ってちゃんと話がしたいとずっと思っていたからだ。
「久しぶりの学園はどうだった?」
「色々ありました」
ロジェが教室に来たことや新しい友人が出来たことなど、思った以上に色々あった一日だった。
私が答えるとエルネストは「そうか」と小さく呟く。
その表情はどこか穏やかで、優しい雰囲気に包まれていた。
(今日はもう会えないかと思ってた)
「あのっ、エルネスト様と話がしたいと思っていたんです!」
「最近は色々あってフェリシアの屋敷に顔を出せてなかったからな。私もフェリシアと話したいと思っていたよ」
(やっぱり忙しかったんだ。王女殿下のことかな)
エルネストも私と話したいと思っていてくれた事を知り、なんだか嬉しくなった。
そして私達はいつものあの部屋に向かうこととなった。
***
「ここに来るのもすごく久しぶりな気がします」
「そうだろうな。暫くフェリシアは学園を休んでいたからね」
「はい。今日はグランさんはいらっしゃらないんですか?」
「グランには少し遣いを頼んでいてね。直に戻って来ると思うよ」
「そうなんですね」
「それまでに色々と話しておきたいことがあるから、早速だけど話を始めてもいいかな?」
「はい!大丈夫です」
きっと話というのは間違いなく王女殿下のことだろう。
直ぐに本題に入ることになり、ドクドクと胸の鼓動が早くなるのを感じる。
私達はテーブルを挟んで対面する様に座っていた。
室内はとても静かで、久しぶりなこともあり何となく緊張してしまう。
(ただ話をするだけなのに。なんで私、こんなにも緊張しているの)
「まずはフェリシアも噂等で聞いているとは思うけど、姉上と君の元婚約者であるロジェ・オクレールの婚約は近々正式に決まるだろう」
「あの噂って本当だったんですね」
「フェリシアはどこまで知っているのかな?」
「婚約のことは学園に来て始めて知りました。二人はすでに深い仲で、王女殿下のお腹にはロジェの子供がいて……」
私が気まずそうに話すと、エルネストは「そういう事になってるのか」とぼそりと呟いた。
「半分は誤りだな」
「え?どういうことですか?」
「姉上と彼が深い関係であると言うことは、王宮内で以前から噂されていた。毎日のように私室に通っていたのだから、そういう関係であると思われても仕方はない事だと思う。だけど姉上に子供が出来たというのは誤りだ。勝手に噂が一人歩きして、そんな風に伝わってしまったんだろうな。そういう行為に及んだのは間違いないとは思うが、相手が本当に彼かは分からない」
「え……?そう言えばロジェは王女殿下に嵌められたって言ってました」
「やはりな。私もそうだろうと思っていた。オクレール子息が相手だと証言すれば、姉上にとってのメリットはかなり大きいからな」
「…………」
エルネストは深くため息を漏らした。
今の話を聞いて私の心は大いに動揺していた。
(あの噂は全部でたらめで、ロジェは王女殿下に騙されたってこと?)
「姉上にとっての一番のメリットは望んでいない婚約話が白紙に戻ることだ。相手が侯爵家の嫡男なら、嫁ぎ先としても悪くは無い。更に、姉上が気に入っている彼まで手に入る。婚約が正式に決まれば、幽閉も解かれる事になるだろう」
「そんな……」
私は青ざめた顔で小さく声を漏らした。
その声は僅かに震えている。
一連の話を聞いていると一番の被害者は間違いなくロジェな気がしていた。
ロジェは最初から利用されていたのだろうか。
王女が私達をターゲットにしたのは、婚約を白紙に戻させる目的の為だったのか。
頭の中で色々な物事がぐるぐると回り、何が正しいのか次第に分からなくなっていた。
ロジェとはもう関わりたくないと思っているのに、胸の奥が苦しくなるのを感じる。
これは同情心なのだろうか。
それとも罪悪感なのか、分からない。
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