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第一章:私の婚約者を奪おうとしないでくださいっ!
27.突然の来訪者②
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暫くの間、大人しく部屋で休養をとるようにと言われてしまった。
特にやることもなく、退屈な時間は流れるのもゆっくりで、先程から欠伸ばかり出てきてしまう。
私はベッドに横になり、ぼけーっと天井を見つめていた。
(暇過ぎるのも辛いな。後で本でも持ってきて貰おうかな)
そんなことを考えていると、トントンと扉を叩く音が響いた。
丁度良い時に使用人が来てくれたのだと思い、私は体を起こす。
「シア、エルネスト殿下が来てくださった。開けるよ」
奥から父の声が響き、その後直ぐにガチャッと扉の開く音が聞こえた。
エルネストが来ていのだと分かると、私は次第に焦り始める。
(な、なんでこんなに急に!?お父様には、次からは勝手に部屋に案内しないでって言ったのに。今日も殆ど変わってないじゃない!)
今更焦った所で、どうにもならないことは分かっている。
だけど三日間寝ていたこともあり、髪もぐちゃぐちゃだし、顔だって何もしていない。
王族相手にこんな酷い格好を見せてしまっていいのだろうか。
良くないと判断した私は、慌てて布団の中に身を隠した。
(不敬罪に問われたら、お父様のせいだから!)
「フェリシア嬢、失礼させてもらうよ」
確かにその声はエルネストのものだった。
私は『どうしよう』と布団の中で何度も繰り返していた。
足音はベッドの前でぴたりと止まる。
「シア、何をしているんだ?」
「…………」
父の怪訝そうな声が響く。
布団が盛り上がっているのを見て、不審がっているのだろう。
こうなれば寝たふりをして誤魔化す以外方法は無いはずだ。
私は布団の中でうずくまるようにして丸まっていた。
(お願い、今日は帰って……。こんな酷い姿、見せたくない!)
私は必死に心の中でそう祈っていた。
しかし父は無情にも私の布団を捲ろうとしたのだ。
私はそれに気付いて必死に中から引っ張った。
「シア、何をしているんだ?起きなさい。エルネスト殿下に失礼だろう。殿下はシアを心配して駆けつけてくださったのだぞ」
「いや、急に来てしまって済まない。フェリシア嬢の具合を確認したかっただけなんだ。また後日改めて来させて頂くよ」
(エルネスト様、是非そうしてください!)
「……そうですか?本当に申し訳ありません」
父は済まなそうに謝っていた。
私がほっとして力を抜いた瞬間、辺りが急に明るくなった。
「あ……」
「……え?」
頭上から声がしたので顔を上げると、エルネストと視線が合ってしまう。
「……っ!!」
その後は気まずさから三人とも黙ってしまう。
だけどその沈黙は直ぐに破られた。
「シア、なんて格好をしているんだ!」
「……っ、申し訳ありませんっ」
私は慌てて体を起こして、ベッドの上で正座をした。
「フェリシア嬢は、この上で正座をするのが好きなのか?」
「え?」
「前も同じような事をしていたから。というか、以前と全く同じ展開だな」
そう言ってエルネストは楽しそうに笑っていた。
突然笑われてしまい、私は恥ずかしくて顔から火が出そうになる。
「エルネスト殿下、大変失礼しました」
「いや、謝らないでいい。急に訪ねてしまった私も悪い。だけど元気そうで良かったよ。いつものフェリシア嬢だ」
エルネストは満足そうに優しく微笑んでいた。
「今日はこれで失礼させてもらうよ」
「もう宜しいのですか?」
(もう、帰っちゃうの?)
先程までは早く帰って欲しいと思っていたのに、エルネストの顔を見た後は名残惜しく感じてしまう。
「ああ。彼女はまだ病み上がりだ。長居して疲れさせてしまったら大変だからな」
「それでは玄関までお送りします」
「フェリシア嬢、また様子を見に来るよ」
そう言ってエルネストは部屋から出て行った。
再び部屋に一人きりになってしまうと、寂しさを感じた。
特にやることもなく、退屈な時間は流れるのもゆっくりで、先程から欠伸ばかり出てきてしまう。
私はベッドに横になり、ぼけーっと天井を見つめていた。
(暇過ぎるのも辛いな。後で本でも持ってきて貰おうかな)
そんなことを考えていると、トントンと扉を叩く音が響いた。
丁度良い時に使用人が来てくれたのだと思い、私は体を起こす。
「シア、エルネスト殿下が来てくださった。開けるよ」
奥から父の声が響き、その後直ぐにガチャッと扉の開く音が聞こえた。
エルネストが来ていのだと分かると、私は次第に焦り始める。
(な、なんでこんなに急に!?お父様には、次からは勝手に部屋に案内しないでって言ったのに。今日も殆ど変わってないじゃない!)
今更焦った所で、どうにもならないことは分かっている。
だけど三日間寝ていたこともあり、髪もぐちゃぐちゃだし、顔だって何もしていない。
王族相手にこんな酷い格好を見せてしまっていいのだろうか。
良くないと判断した私は、慌てて布団の中に身を隠した。
(不敬罪に問われたら、お父様のせいだから!)
「フェリシア嬢、失礼させてもらうよ」
確かにその声はエルネストのものだった。
私は『どうしよう』と布団の中で何度も繰り返していた。
足音はベッドの前でぴたりと止まる。
「シア、何をしているんだ?」
「…………」
父の怪訝そうな声が響く。
布団が盛り上がっているのを見て、不審がっているのだろう。
こうなれば寝たふりをして誤魔化す以外方法は無いはずだ。
私は布団の中でうずくまるようにして丸まっていた。
(お願い、今日は帰って……。こんな酷い姿、見せたくない!)
私は必死に心の中でそう祈っていた。
しかし父は無情にも私の布団を捲ろうとしたのだ。
私はそれに気付いて必死に中から引っ張った。
「シア、何をしているんだ?起きなさい。エルネスト殿下に失礼だろう。殿下はシアを心配して駆けつけてくださったのだぞ」
「いや、急に来てしまって済まない。フェリシア嬢の具合を確認したかっただけなんだ。また後日改めて来させて頂くよ」
(エルネスト様、是非そうしてください!)
「……そうですか?本当に申し訳ありません」
父は済まなそうに謝っていた。
私がほっとして力を抜いた瞬間、辺りが急に明るくなった。
「あ……」
「……え?」
頭上から声がしたので顔を上げると、エルネストと視線が合ってしまう。
「……っ!!」
その後は気まずさから三人とも黙ってしまう。
だけどその沈黙は直ぐに破られた。
「シア、なんて格好をしているんだ!」
「……っ、申し訳ありませんっ」
私は慌てて体を起こして、ベッドの上で正座をした。
「フェリシア嬢は、この上で正座をするのが好きなのか?」
「え?」
「前も同じような事をしていたから。というか、以前と全く同じ展開だな」
そう言ってエルネストは楽しそうに笑っていた。
突然笑われてしまい、私は恥ずかしくて顔から火が出そうになる。
「エルネスト殿下、大変失礼しました」
「いや、謝らないでいい。急に訪ねてしまった私も悪い。だけど元気そうで良かったよ。いつものフェリシア嬢だ」
エルネストは満足そうに優しく微笑んでいた。
「今日はこれで失礼させてもらうよ」
「もう宜しいのですか?」
(もう、帰っちゃうの?)
先程までは早く帰って欲しいと思っていたのに、エルネストの顔を見た後は名残惜しく感じてしまう。
「ああ。彼女はまだ病み上がりだ。長居して疲れさせてしまったら大変だからな」
「それでは玄関までお送りします」
「フェリシア嬢、また様子を見に来るよ」
そう言ってエルネストは部屋から出て行った。
再び部屋に一人きりになってしまうと、寂しさを感じた。
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