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第一章:私の婚約者を奪おうとしないでくださいっ!
11.新たな友人!?
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エルネストに連れられて、再び応接間に戻って来た。
出て行った時の勢いは完全に無くなり、どんよりと肩を落としていた。
あの場から遠ざかった事で、少しづつではあるが落ち着きを取り戻していく。
「フェリシア嬢、平気か?」
「……なんとか」
エルネストの心配そうな顔を見てしまい、私は困った様に力なく笑った。
折角私の為に用意してくれた機会を無駄にしてしまったからだ。
(王子殿下、ごめんなさい……)
「タイミングが悪かった様だな。フェリシア嬢、そんなに気にすることは無い。きっと君の婚約者は姉上に逆らえなくて、あのような態度を取らされていただけだ。君がそんなに落ち込んでいたら、それこそ姉上の思う壺になってしまうよ」
「……本当に、そうなのかな」
私は悲しそうな顔をエルネストに向けた。
私だって、今日まではそう思っていた。
ロジェが大人しく従っているのは、王女の目から私達の存在を早く逸らせる目的の為。
だけど実際はどうなのだろう。
王女は未だにロジェにべったりだし、以前よりも仲良くなっている気がする。
そして、極めつけに先程見た光景だ。
あれは私が思っている事実とは、何もかもが違って見えていた。
「姉上は平気で卑怯な手を使う人間だ。あの涙も君の婚約者を誑かせる為に見せた演技だって可能性もある。疑って苦しむくらいなら、直接婚約者と話をしてみるのはどうだ?」
「でも、会う事は……」
エルネストの言葉に私は表情を曇らせた。
ミレーユに会う事を禁じられているからだ。
その所為でもう一ヶ月もロジェとは話をしていない。
「姉上に止められているのだったな。そのことに関しては私の方で何とかする」
「どうして、そこまで私に良くしてくださるのですか?」
「そもそもの原因を作ったのは姉上だ。弟である私がその尻拭いをするのは致し方ない事だよ。王家の人間は酷い扱いを平気でする、なんて悪いイメージを君に持たれるのは嫌だからな。それに……」
「……?」
エルネストは優しい瞳で私の事を見つめてきたので、ドキッとしてしまう。
「君と話していると、なんだか楽しい気分になれる。君の事を気に掛けるようになってから、友人のような存在だと勝手に思っていたのかもな。そんな友人だと思っている者のことを傷付けられて腹が立った、というところだな」
「私なんかが王子殿下の友人だなんて、そんな……」
「どうした?私と友人になるのは嫌か?」
「い、嫌だなんて滅相も無いですっ!寧ろ勿体なさ過ぎます……。私なんかより素敵な方は沢山いらっしゃいますし」
突然エルネストから友人扱いされて、かなり戸惑ってしまう。
エルネストならもっと身の丈に合った相手がいくらだっているはずだ。
(どうして、私なの……)
「随分と謙遜してくるな。私から言わせて貰えば、フェリシア嬢は十分素敵に見えるよ。折角の機会だし、君にお願いをしようかな。私と友人になってもらえないか?」
「……っ!?」
「答えは『はい』か『いいえ』で答えて」
「……っ、はい」
エルネストは意地悪そうな顔で言った。
余計な言い訳を封じられてしまい、私はそう答えるしか出来なかった。
「いい返事だ。今日から私達は友人同士だな。そうだな、今日から私の事はエルネストと呼んで欲しい」
「ま、待ってくださいっ!……そんなの無理です」
「どうして?君は私の友人になったのだから問題ないよ。それに、いつまでも王子殿下などと畏まった呼び方をされるのもつまらないからな」
「つまらないって……」
「早速練習がてら呼んでみて。言っておくが、ちゃんと呼んでくれるまでは、ここから出してあげないよ」
エルネストはこの状況を完全に楽しんでいる様子だ。
先程から口端を上げて、意地悪そうな顔で私の事を見つめている。
(やっぱり腹黒王子だ……)
「フェリシア嬢、早く」
「え?……スト殿下」
「聞こえないな。それと殿下はいらない」
「……エルネスト。……っ!?さ、さまっ!」
私は動揺し過ぎていたせいか、呼び捨てにしてしまった。
暫くしてからその事に気付き、慌てる様に『さま』を付け加えた。
それを眺めていたエルネストはクスクスと楽しそうに笑っていた。
「やっぱり君は面白い子だな。良い友人が出来て嬉しいよ」
「……っ」
エルネストの事はやはり苦手だ。
だけど今日の事で少しだけエルネストについて知れた気がする。
それから数日後、ミレーユは暫くの間学園を休むことになった。
私にロジェと話す機会を与える為に、エルネストが手を回してくれたらしい。
ミレーユの存在が傍にあれば、お互い気が散って本音を語る事が出来なくなる。
それを見越して、このような機会をつくってくれたのだろう。
本当にエルネストには頭が上がらない程、私は感謝ばかりしている気がする。
そして一ヶ月振りにロジェと二人で話をすることになった。
出て行った時の勢いは完全に無くなり、どんよりと肩を落としていた。
あの場から遠ざかった事で、少しづつではあるが落ち着きを取り戻していく。
「フェリシア嬢、平気か?」
「……なんとか」
エルネストの心配そうな顔を見てしまい、私は困った様に力なく笑った。
折角私の為に用意してくれた機会を無駄にしてしまったからだ。
(王子殿下、ごめんなさい……)
「タイミングが悪かった様だな。フェリシア嬢、そんなに気にすることは無い。きっと君の婚約者は姉上に逆らえなくて、あのような態度を取らされていただけだ。君がそんなに落ち込んでいたら、それこそ姉上の思う壺になってしまうよ」
「……本当に、そうなのかな」
私は悲しそうな顔をエルネストに向けた。
私だって、今日まではそう思っていた。
ロジェが大人しく従っているのは、王女の目から私達の存在を早く逸らせる目的の為。
だけど実際はどうなのだろう。
王女は未だにロジェにべったりだし、以前よりも仲良くなっている気がする。
そして、極めつけに先程見た光景だ。
あれは私が思っている事実とは、何もかもが違って見えていた。
「姉上は平気で卑怯な手を使う人間だ。あの涙も君の婚約者を誑かせる為に見せた演技だって可能性もある。疑って苦しむくらいなら、直接婚約者と話をしてみるのはどうだ?」
「でも、会う事は……」
エルネストの言葉に私は表情を曇らせた。
ミレーユに会う事を禁じられているからだ。
その所為でもう一ヶ月もロジェとは話をしていない。
「姉上に止められているのだったな。そのことに関しては私の方で何とかする」
「どうして、そこまで私に良くしてくださるのですか?」
「そもそもの原因を作ったのは姉上だ。弟である私がその尻拭いをするのは致し方ない事だよ。王家の人間は酷い扱いを平気でする、なんて悪いイメージを君に持たれるのは嫌だからな。それに……」
「……?」
エルネストは優しい瞳で私の事を見つめてきたので、ドキッとしてしまう。
「君と話していると、なんだか楽しい気分になれる。君の事を気に掛けるようになってから、友人のような存在だと勝手に思っていたのかもな。そんな友人だと思っている者のことを傷付けられて腹が立った、というところだな」
「私なんかが王子殿下の友人だなんて、そんな……」
「どうした?私と友人になるのは嫌か?」
「い、嫌だなんて滅相も無いですっ!寧ろ勿体なさ過ぎます……。私なんかより素敵な方は沢山いらっしゃいますし」
突然エルネストから友人扱いされて、かなり戸惑ってしまう。
エルネストならもっと身の丈に合った相手がいくらだっているはずだ。
(どうして、私なの……)
「随分と謙遜してくるな。私から言わせて貰えば、フェリシア嬢は十分素敵に見えるよ。折角の機会だし、君にお願いをしようかな。私と友人になってもらえないか?」
「……っ!?」
「答えは『はい』か『いいえ』で答えて」
「……っ、はい」
エルネストは意地悪そうな顔で言った。
余計な言い訳を封じられてしまい、私はそう答えるしか出来なかった。
「いい返事だ。今日から私達は友人同士だな。そうだな、今日から私の事はエルネストと呼んで欲しい」
「ま、待ってくださいっ!……そんなの無理です」
「どうして?君は私の友人になったのだから問題ないよ。それに、いつまでも王子殿下などと畏まった呼び方をされるのもつまらないからな」
「つまらないって……」
「早速練習がてら呼んでみて。言っておくが、ちゃんと呼んでくれるまでは、ここから出してあげないよ」
エルネストはこの状況を完全に楽しんでいる様子だ。
先程から口端を上げて、意地悪そうな顔で私の事を見つめている。
(やっぱり腹黒王子だ……)
「フェリシア嬢、早く」
「え?……スト殿下」
「聞こえないな。それと殿下はいらない」
「……エルネスト。……っ!?さ、さまっ!」
私は動揺し過ぎていたせいか、呼び捨てにしてしまった。
暫くしてからその事に気付き、慌てる様に『さま』を付け加えた。
それを眺めていたエルネストはクスクスと楽しそうに笑っていた。
「やっぱり君は面白い子だな。良い友人が出来て嬉しいよ」
「……っ」
エルネストの事はやはり苦手だ。
だけど今日の事で少しだけエルネストについて知れた気がする。
それから数日後、ミレーユは暫くの間学園を休むことになった。
私にロジェと話す機会を与える為に、エルネストが手を回してくれたらしい。
ミレーユの存在が傍にあれば、お互い気が散って本音を語る事が出来なくなる。
それを見越して、このような機会をつくってくれたのだろう。
本当にエルネストには頭が上がらない程、私は感謝ばかりしている気がする。
そして一ヶ月振りにロジェと二人で話をすることになった。
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