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33.解放された心

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 部屋を出て数歩歩いた所で緊張の糸が切れたのか、急に力が抜けてその場に倒れ込みそうになってしまう。
 しかし、すぐ隣にいたレオンが直ぐに支えてくれた。

「ニナ、大丈夫か?」
「ほっとしたら急に体から力が抜けちゃったみたいです…」

 私がへらっと力なく笑うと、レオンは突然私の事を横向きに抱き上げた。

「え…?ちょ、ちょっと…レオンさんっ…!いきなりこんな所で何するんですかっ…」
「このままだとニナは歩けなさそうだから、運んでやろうと思ってな…」

 突然レオンに抱き抱えられ私は驚いてしまった。
 レオンはここが王宮だと言う事を忘れているのだろうか?
 周りには執事や兵士の姿があり、私は恥ずかしくて下ろしてもらおうと足をじたばたと動かした。

「ニナ、そんなに暴れても下ろすつもりはないから、諦めて大人しくしてくれ…」
「レオンさんっ…ここ王宮っ!それにさっきから色んな人に見られてるからっ…」

「ああ、知ってる。もう少しで休憩出来る部屋に着くから、我慢してくれ」
「……っ…」

 私は廊下にいる誰かと視線を合わすのが恥ずかしくなり、レオンの首にしがみ付く様に捕まると肩に顔を埋めた。

「いい子だな、そのまま大人しくしててくれ」
「レオンさんの意地悪っ…」

 それから暫くすると、どこかの部屋へと入った。
 やっと周囲の視線から解放され私はほっとしていた。


 ***


 部屋に入ると、レオンは中央に置かれているソファーに私の事をゆっくりと下ろしてくれた。

 私は部屋をぐるりと見渡していた。
 先程の部屋よりも大分広くて、ゆったりとした空間が広がっていた。
 大きな窓がいくつもあり、先程の部屋の様に日差しが入り室内はとても明るい。
 そしてここは2階なのか、窓の方に視線を向けると外には大きな庭園が広がっていた。

 レオンは私を下ろすと、すぐ隣に座ってそのまま私の事を抱きしめてくれた。
 突然の事に私はドキドキしてしまう。

「ニナ、良く頑張ったな。ニナが伝えたかった事、全て伝えられたか?」
「……っ…、全然あんなんじゃ足りないっ!!お父様泣いていたけど…今更なんなのって感じだよっ…!泣く程後悔するなら、どうしてあの時もっと私に寄り添ってくれなかったの?って思うし、後からなら言葉でどうとでも言えるよね!今までの態度を見てきた私としては、あんな薄っぺらい言葉で信じる程…私、馬鹿じゃないもんっ!!本当に腹立つっ……っ…」

 私はレオンの胸の中で盛大に文句を言い、何故か泣いていた。
 悲しかった訳でも、辛かった訳でもない。
 ただ虚しさと、悔しさと…なんだか良く分からない気持ちが合わさって文句を言わずにはいられなかった。

「ニナが耐えて来た長い時間を思うと、あの程度の言葉だけで信じるって言うのは無理があるよな…」
「本当にそうですよっ…!私が家を追い出された時に直ぐに駆け付けたって言うけど…、それならどうして私を連れ戻しに来てくれなかったの?って思う。あの時、来てくれたら…まだ考え直したかもしれないけど…、結局いつも逃げる事しか出来ないんだよ…あの人は。今回だってレオンさんが動いてくれなければ、何も変わらなかったと思うし。だから私は後悔してない。やっとあの人から解放されて…私、きっとほっとしてるんだと思う」

 言いたい事を吐き出して、落ち着きを取り戻していくと、私は甘える様にレオンにぎゅっと抱き着いていた。

「ニナが納得出来たなら、今回ここに来た意味はあったな。ニナは良く頑張ったよ。まだ言い足りない様なら愚痴はいつでも聞くから、全部俺に吐き出してしまっていいぞ…」

 レオンは優しい声で呟くと、私の髪を柔らかく撫でてくれた。
 それがとても心地よく感じた。

「レオンさんがいてくれて本当に良かった。これからもずっと…私の傍にいてね…」
「ああ、当然だ。ニナの事は幸せにすると言ったからな。その言葉はきちんと守るよ」

 レオンは静かに答えると私の額にそっと口付けた。

 まだもやもやした気持ちは残っていたけど、レオンの温もりを感じていると怒りもどこかに消えて行ってしまう様だった。
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