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19.恋人

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 私達は街に向かって歩いていた。
 レオンは馬車も用意出来ると言ってくれたけど、歩いて行くことにした。
 その方が少しでも長く話していられる様な気がしたから…。

「食堂に行く前に教会に寄りますよね?」
「いや、もうあそこには行く必要は無くなったからな」

 私が聞くとレオンは静かに答えた。

(それはどういう意味なんだろう。私はもう祈る理由は無くなったけど…レオンさんはいいのかな?)

「俺もいい加減、過去に囚われたままでいるのは止めようと思うんだ。いくら謝っても過去が変えられる事は無いし、罪も消えるわけじゃないからな。あの場所はとても静かで心が落ち着くから通っていたんだ。以前は毎晩の様に悪夢に魘されていたからな。教会に通う様になってからは魘されることは殆ど無くなった。でも、今はそれ以上に安心出来る存在が出来たからな…」

 レオンは私に視線を向けると、優しい瞳で見つめていた。
 私はレオンが言いたい事が何となく分かってしまい、なんだか照れてしまった。

(それって、私の事…だよね?)

「ま、任せてくださいっ!」

 私が突然意気込んだ様に答えると、レオンは「頼もしいな」と小さく笑った。

「私もレオンさんに頼ってもらえるような人になりたいので頑張りますっ…!」
「もう十分そうなっているよ。ニナは俺の傍にいてくれるだけでいいんだ…」

 私が嬉しそうに答えると、レオンは優しく微笑み私の額にそっと口付けた。
 すると見る見るうちに私の顔は赤く染まっていく。

「ニナ、どうしてそこで赤くなるんだ?」
「レオンさんっ!ここ、外だってこと忘れてますよね?」

「ああ、そういえばそうだったな。忘れていたわけではないけど、したくなったからしただけだ…」
「……っ…!!」

 レオンは悪びれた様子もなく、さらりと答えた。

「ニナは気にし過ぎじゃないか?別に周りから見たら俺達は仲の良い恋人に見えるだけだろ?」
「こ…こ…恋人…!?」

 恋人と言う言葉に私は動揺してしまう。

「違うのか…?…それなら少し気は早いけど、夫婦と言った方が良かったか?」
「……夫婦……」

 夫婦と言われて私の顔はますます赤くなってしまう。
 そんな様子を隣で見ていたレオンはどこか嬉しそうな顔をしていた。

「本当にニナは可愛いな」
「……っ…」


 そんな話をしながら歩いていると、時間が経つのはあっという間で食堂の前まで到着していた。

「レオンさん、ありがとうございましたっ!お昼食べて行きますよね…?」
「悪い、今日は少しやることがあるんだ。終わったらまた来るよ…」

「そう…ですか、分かりました…」
「ニナ、そんなに悲しそうな顔をするなよ。また後ですぐに会えるだろう?」

 レオンは困った顔で私を見つめていた。
 私は自分でも気付かないうちにそんな顔をしていることに恥ずかしくなった。

「じゃあ、また後でな」
「はいっ…」


***


 レオンと別れると店内へと入った。
 するとすぐにリーズと目が合い、リーズは心配そうな顔で私の元へと近づいて来た。

「ニナちゃん、平気?今日も休んでもいいわよ?」
「いえ、大丈夫ですっ…!リーズさん…」

 私は少し恥ずかしそうな顔を見せると、リーズの耳に手を寄せて小声でレオンと恋人同士になった報告をした。

「うそっ!本当なの…?それっ…」
「はいっ…」

 その話を聞いたリーズは驚いた顔を見せるも、直ぐに笑顔に変わりそのまま私の事を抱きしめた。
 突然リーズに抱きしめられてしまい私は驚いてしまったが、喜んでくれているみたいで嬉しくなった。

「そっか、そっか。でも私は絶対ニナちゃんはレオンさんとくっつくと思ってたけどね…」
「え…?そうなんですか?」

 私が不思議そうな顔で聞くと、リーズはにこっと笑った。

「見てれば分かるわよ。ニナちゃん、レオンさんといる時すっごく楽しそうな顔してるもん。まさかあれで無自覚だったの?」
「そんなに私、顔に出てました…?」

 私が恥ずかしそうに聞くとリーズは「誰が見ても分かる程に」とはっきりと答えられてしまい、ますます顔に熱が籠って行った。

「リーズさん、そう言う事なので…私はもう大丈夫です!着替えて来ますねっ…」

 これ以上話していたらリーズに色々と突っ込まれそうだったので、私は逃げる様に奥の部屋へと入って行った。


 ***


(リーズさんにバレバレだったんだ。恥ずかしいっ…)

 そんなことを考えながら仕事着に着替えて部屋から出ると、扉の傍に立っているジルと目が合った。
 突然、目の前にジルの姿が入って来て私は驚いてしまった。

(うわっ…びっくりした…。ジルも今日からここで仕事するのかな…)


「ニナ、昨日は部屋に帰らなかったの?ニナと話がしたくて…待っていたんだ…」
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