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6.突然の再会

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 レオンと話す様になってから1か月程が経った。
 私は相変わらず毎日教会に通っているし、レオンも同じだった。

 レオンと悩みを共有する事で、不思議となんでも話せるような仲になっていた。
 私が仕事前に教会に寄ると、その後は私の働く食堂まで付いて来てくれてご飯を一緒に食べる。
 これが最近の習慣になっていて、レオンはいつしか常連客になっていた。


 今日も一日仕事が終わり、片付け作業をしているとリーズさんが私に話しかけて来た。

「ニナちゃん、最近明るくなったよね」
「そうですか…?」

 私が不思議そうに答えると、リーズさんは「そうだよ!」ときっぱりと答えた。

「レオンさんのおかげだよね。優しそうな人じゃない…」
「たしかに…。レオンさんってすごく良い人なんですよっ…!たまに意地悪ですけど…」

 レオンの話をされると、私の顔は明るくなり、その姿を見ていたリーズは安堵の表情を浮かべていた。

「ねぇ、ニナちゃん…。もうジルの事は忘れても良いんじゃない…?あれからもう1年よ…。帰って来るか分からない人間を待つより、目の前にいる人との未来を考えた方がいいと思うわ…」
「私、レオンさんとはそんな関係ではありませんよっ…!それに…ジルは帰ってきます…。だから…そんな事…言わないでくださいっ…」

 私が泣きそうな顔で答えると、リーズは辛そうな表情をして私の事を優しく抱きしめてくれた。

「馬鹿な子ね。認めてしまえば楽なのに…、どうして辛い道に進もうとするのよ…」
「ジルは…私を救ってくれた人で…。私にとっては特別な人なんです。だから死んだって確証がない限り、私は待ち続けるつもりです。だって可哀そうじゃないですか…、生きてるのに皆に忘れられるなんて…。それにジルは私に言ってくれたんです。戻ったら結婚しようって…。ジルとなら幸せな未来を思い描くことが出来たから…。だから私は待ちたいんですっ…」

 今言った言葉は私の本心だった。
 ジルは私を必要としてくれた、私の居場所を作ってくれた。そして愛してくれた…。
 こんなにも私の事を思ってくれる人なんて他にはいないだろう。

 私は1年待ち続けた。
 1年待てたのだから、もう1年くらい…きっと待てるはずだ。


 ***


 それから数日後の事だった。

 いつもの様に私は教会に行った後、レオンと共に食堂へと向かった。
 そして扉を開いた瞬間、懐かしい顔が視界に映った。

「……ジ…ル…?」

 私は幽霊でも見るかの様な顔で、声を震わせながらその名前を呼んだ。
 私に気付くと、ジルは私の方を向き視線が絡んだ。
 ジルも私を見つめた時の表情は少し驚いた顔をしている様に見えた。

(本物…だよね?やっぱり…生きていたんだ…!)

「……ニナ…」

 その声は間違いなく、待ち焦がれていたジルの声だった。

 心の中に一気に感情が溢れて来て、目の奥が熱くなる。
 ジルが生きていたんだと思うと嬉しくて、泣きそうになりながら笑顔が零れていた。
 だけど私を見つめるジルの瞳は何処か動揺している様に見えた。

「ニナ…ごめん…」

 私が笑顔を見せて近寄ろうとした瞬間、ジルは謝って来たので私は逸る気持ちを抑えて立ち止まった。

(ごめん…?ずっと連絡が取れなくて…?)

「リーズから話は聞いた…」
「え…?」

 私はそう言われてリーズの方に視線を向けると、リーズは腑に落ちない顔でジルを睨んでいた。
 
 どうしてリーズはそんな表情をしているのだろうと疑問に思った。
 リーズはジルが戻って来て嬉しくないのだろうか?
 いや、それは絶対に無い思う。二人の方が私よりも付き合いは長いし、リーズもジルの安否をずっと心配していたことを私は知っている。
 だけど二人の表情を見ていると、次第に胸騒ぎを感じてしまう。

(二人共…どうしたんだろう。何かあったのかな…?)

「ジル、ここでする話じゃないよ。奥でちゃんとニナちゃんに説明してあげて…」

 リーズは明らかに怒っているみたいだ。
 そして私はジルにやっと再会出来て嬉しいはずなのに、どうしようもない不安を感じ始めていた。

「ああ、分かってる。ニナ…、少し話せるかな?」
「はい、大丈夫ですっ…」

 私がそう答えると、ジルは弱弱しく笑って「ありがとう」と答えた。

 私はジルの背中を眺めながら奥の部屋へと入って行った。
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