ずっと好きだった人が親友の婚約者になった。応援したら粘着されたので逃げることにした【Ｒ１８】

第二部

39.使用人始めました

ライラッドに来てから半年が過ぎていた。
私は現在シリルの屋敷で住込みの使用人として働かせてもらっている。

シリルの屋敷は王都からは少し離れた場所にある。
ここに来た当初は、部屋を与えてもらって客人として扱ってもらっていた。
だけど、これ以上お世話になり続けるのは流石に申し訳なくなってきた。

そこで外で働き口を探しに行くとシリルに話した所、見事に反対された。
元々の目的はローレンから引き離し、保護する為に私を自国に連れて来てくれた。
さすがに隣国までは追っては来ないと思うけど確実にそうとは言い切れない。
今までローレンがして来た事を考えれば、手段は選ばないだろう。

それに貴族である私にはそんなことをさせられないと言われてしまった。
だけど伯爵令嬢のアリア・ルーシェはもういない。
今の私はただのアリアだ。貴族でも何でもない。

そして必死に説得したところ、どうしても働きたいというのであれば、この屋敷で使用人として働くなら許すと漸く許可がもらえた。
そして2週間程前から私はシリルの屋敷で使用人見習いとして働かせてもらっている。



「アリアさん、良く働いてくれるわね。ありがとう、こっちはもういいわ…。シリル様の所にお茶をお持ちして頂けるかしら？…一緒に休憩してきていいわよ…」
「ありがとうございます…！」
先輩の使用人に挨拶をすると、お茶の準備をして執務室へと向かった。

トントン、と部屋をノックして「お茶をお持ちしました」と声を掛けると部屋の中から「はいってくれ」と声が響き私は扉を開いた。

「失礼します…」
私は部屋に入ると軽くお辞儀をした。

「アリアのメイド姿も見慣れて来たな…」
「もう2週間経つし…」
部屋の奥にある机に座っていたシリルは中央にあるソファーの方へと移動した。

「アリアの淹れたお茶…結構美味いんだよな、最近はそれが楽しみになってるんだ」
「…お世辞、ありがとうございますっ…」
私は褒められると少し照れてしまい、顔を隠す様に下を向きながらお茶の準備を始めた。

「お世辞じゃないよ、本当に美味いよ。ありがとう…。アリアも一緒に休憩しようか」
「はい…」
私は二人分のカップを用意すると紅茶を注いだ。
準備が出来ると向かい合うように私もソファーに腰を掛けた。

「そういえば…アリアはここに来てから一度も外には出たことはなかったよな…」
「たしかに…そうかも。外は危険って言われたから…」
私がぽろっと漏らすととシリルは苦笑した。

「心配なんだ、アリアの事。だけど一人じゃなければ問題ないな。週末俺と王都に行くか？」
「え…？いいんですかっ！？」
私はシリルの言葉に目を輝かせるように飛びついた。

「くくっ…アリアは素直だな。俺が王都を案内してやるよ…」
「ありがとうございますっ！楽しみにしてます！」
私は笑顔で答えた。

初めてのライラッドの街、楽しみだな！