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第一部
28.ローレンとシレーネ
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それから数日の間、シリルは学園でローレンとシレーネの事を探って来てくれた。
そして今、私はシリルからその報告を聞いていた。
「ローレン・アレクシア公爵令息については調べた限りでは学園内では悪い噂は特に聞かなかったな、恐らく人前では本性を隠しているって事になるのか…」
「多分、そうだと思う。私もローレンに付き纏われる前は全然あんな事する人だなんて思いもしなかったし…」
私は思い返す様にそう言った。
そして私はここには私達二人だけしかいないし、ローレンなんかに敬称をつける必要は無いと言った。
シリルは苦笑しながらも「それもそうだな」と納得した。
「シレーネ嬢は暫くの間体調を崩していて休んでいた様だけど最近漸く学園に通えるようになったって話だ。理由は…お前の事だな。大事な親友が居なくなったんだからショックを受けるのは当然だよな。噂では献身的にローレンが支えて学園復帰出来たとか…聞いたな」
シリルは少し言いずらそうに話した。
きっとシレーネの事、私に気を遣ってくれているんだろう。
私はシレーネの事を考えると胸の奥が痛くなった。
それと同時にそうなった原因を作ったローレンを憎んだ。
「ローレン…本当に許せない…」
私はぎゅっと掌をきつく握りしめた。
ローレンは私の事だけでなく、私の大切な人の心を傷付けた。
私は絶対にローレンを許さない。
「俺が見る限り…だが、あの二人は…ローレンとシレーネ嬢は仲良さそうに見えたな。シレーネ嬢と同じクラスの令嬢の話でも、シレーネ嬢は大事にされていて羨ましいって話してた位だ。周りからは仲が良い婚約者同士って見えているのかも知れないな」
「皆騙されてるんだよ、ローレンに。……私も最初はそう思ってた。二人はいつも仲良くて、上手くいってるってずっと思ってた…」
だけど一つだけ言えることは、ローレンはシレーネの事を絶対に大事には思っていない。
本当にシレーネの事を思っているなら、親友の私に手を出したりなんてしない。
自分から幸せを壊すようなことなんて…絶対にしないと思う。
ローレンを許せないと思う気持ちと、なんだか分からないけど…もやもやとした気持ちが私の中には存在していた。
「お前にも手を出してる時点で誠実とは言えないよな、こんな言い方するのも何だけど…ローレンはお前とシレーネ嬢の二人を手に入れたいと思っているんじゃないのか?」
「………」
シリルの言葉を聞いて、胸の奥がチクっとした。
私は自分がショックを受けていることを認めたくなかった。
ショックを受けると言う事は私は少なからずローレンの事を気にしているという事になるから…。
あんな最低な男なんか…絶対に好きになんてならない…。
自分に言い聞かせる様に何度も頭の中でそう思った。
「悪い。少し不謹慎な言葉だったな…」
シリルは思い詰めた顔をしている私に気付くとすぐさま謝った。
私は顔を上げて「そんなことないよ」と笑って誤魔化した。
「あと…婚約についてはまだ継続しているそうだ。これも噂の話なんだが、ローレンが成人の儀を迎えたらすぐにでも結婚させられるとか聞いたな。なんでもそれはアレクシア公爵の強い意思らしい。早く婚姻を結ばせたいのは最近少し体調を崩している様で…早く爵位を継がせてローレンに任せたいんだろうな」
「え…?アレクシア公爵様が…?」
私は思わず驚いた顔で聞き返した。
前に会った時はあんなに元気そうだったのに、一体何があったんだろう。
アレクシア公爵には幼い頃から良くしてもらっていた。
だから私は心配になった。
「あくまでも噂だから信憑性はないけど、婚約が白紙になったって話は誰からも聞いていない。シレーネ嬢の傍に未だにいる事を考えれば婚約については継続で間違いないだろうな」
「……シレーネ…大丈夫かかな…」
私はシレーネの事を考えると心配で仕方が無かった。
ローレンは私の時の様にシレーネにも同じような事をすることだって無いとは言えない。
考えたくはないけど、もっと酷い事をされてるってことだってあるかもしれない。
「シレーネ…私に言ったんです。『ローレンには騙されないで』って…。それってシレーネの前でもローレンは本性を晒してる可能性が高いって事だよね…」
「騙されないで…か。何かしら知ってる可能性はあるな…」
やっぱりこのまま放っておくなんて私には無理だ。
そもそも全ての始まりを作ってしまったのは私なのかもしれない。
私が前世を思い出して小説とは違う行動に出たせいで物語が変わってしまった事…ずっと気にしてた。
このままシレーネだけに辛い思いなんてさせられない。
「シリル様…お願いがあります…」
「なんだ?」
私は神妙な面持ちでシリルを見つめた。
「シレーネと一度話をしたいんです。ローレンがしたこと…全てシレーネに話そうと思います。このままじゃ…シレーネが第二の私になってしまうかもしれないから…。もう時間が無いし迷ってなんていられません…」
私は必死な顔で訴えた。
時間がない。
結婚が成立してしまえば、もう私の力ではどうにも出来なくなってしまう。
その前にローレンの悪事を全てシレーネに伝えようと思う。
それで考えて直してくれれば良いと思うけど…
もし、それでもシレーネがローレンと結婚したいというのであれば私はもう止めない。
二人の前から完全に姿を消そう。
アリアは本当に死んだ事にして、私は別人としての道を進もうと思う。
「俺はシレーネ嬢と話す機会を作れば良いって事だな。分かった、機会を見計らってシレーネ嬢に接触してみる。ただローレンの事を気にしながらになるから直ぐには無理かもしれないが…少し待っていてくれ」
シリルは私の言葉を受け止めてくれて、理解してくれた様だった。
本当にシリルには頭が上がらない程に感謝している。
「ありがとうございます、シリル様。やっぱりシリル様は神ですねっ!」
そして今、私はシリルからその報告を聞いていた。
「ローレン・アレクシア公爵令息については調べた限りでは学園内では悪い噂は特に聞かなかったな、恐らく人前では本性を隠しているって事になるのか…」
「多分、そうだと思う。私もローレンに付き纏われる前は全然あんな事する人だなんて思いもしなかったし…」
私は思い返す様にそう言った。
そして私はここには私達二人だけしかいないし、ローレンなんかに敬称をつける必要は無いと言った。
シリルは苦笑しながらも「それもそうだな」と納得した。
「シレーネ嬢は暫くの間体調を崩していて休んでいた様だけど最近漸く学園に通えるようになったって話だ。理由は…お前の事だな。大事な親友が居なくなったんだからショックを受けるのは当然だよな。噂では献身的にローレンが支えて学園復帰出来たとか…聞いたな」
シリルは少し言いずらそうに話した。
きっとシレーネの事、私に気を遣ってくれているんだろう。
私はシレーネの事を考えると胸の奥が痛くなった。
それと同時にそうなった原因を作ったローレンを憎んだ。
「ローレン…本当に許せない…」
私はぎゅっと掌をきつく握りしめた。
ローレンは私の事だけでなく、私の大切な人の心を傷付けた。
私は絶対にローレンを許さない。
「俺が見る限り…だが、あの二人は…ローレンとシレーネ嬢は仲良さそうに見えたな。シレーネ嬢と同じクラスの令嬢の話でも、シレーネ嬢は大事にされていて羨ましいって話してた位だ。周りからは仲が良い婚約者同士って見えているのかも知れないな」
「皆騙されてるんだよ、ローレンに。……私も最初はそう思ってた。二人はいつも仲良くて、上手くいってるってずっと思ってた…」
だけど一つだけ言えることは、ローレンはシレーネの事を絶対に大事には思っていない。
本当にシレーネの事を思っているなら、親友の私に手を出したりなんてしない。
自分から幸せを壊すようなことなんて…絶対にしないと思う。
ローレンを許せないと思う気持ちと、なんだか分からないけど…もやもやとした気持ちが私の中には存在していた。
「お前にも手を出してる時点で誠実とは言えないよな、こんな言い方するのも何だけど…ローレンはお前とシレーネ嬢の二人を手に入れたいと思っているんじゃないのか?」
「………」
シリルの言葉を聞いて、胸の奥がチクっとした。
私は自分がショックを受けていることを認めたくなかった。
ショックを受けると言う事は私は少なからずローレンの事を気にしているという事になるから…。
あんな最低な男なんか…絶対に好きになんてならない…。
自分に言い聞かせる様に何度も頭の中でそう思った。
「悪い。少し不謹慎な言葉だったな…」
シリルは思い詰めた顔をしている私に気付くとすぐさま謝った。
私は顔を上げて「そんなことないよ」と笑って誤魔化した。
「あと…婚約についてはまだ継続しているそうだ。これも噂の話なんだが、ローレンが成人の儀を迎えたらすぐにでも結婚させられるとか聞いたな。なんでもそれはアレクシア公爵の強い意思らしい。早く婚姻を結ばせたいのは最近少し体調を崩している様で…早く爵位を継がせてローレンに任せたいんだろうな」
「え…?アレクシア公爵様が…?」
私は思わず驚いた顔で聞き返した。
前に会った時はあんなに元気そうだったのに、一体何があったんだろう。
アレクシア公爵には幼い頃から良くしてもらっていた。
だから私は心配になった。
「あくまでも噂だから信憑性はないけど、婚約が白紙になったって話は誰からも聞いていない。シレーネ嬢の傍に未だにいる事を考えれば婚約については継続で間違いないだろうな」
「……シレーネ…大丈夫かかな…」
私はシレーネの事を考えると心配で仕方が無かった。
ローレンは私の時の様にシレーネにも同じような事をすることだって無いとは言えない。
考えたくはないけど、もっと酷い事をされてるってことだってあるかもしれない。
「シレーネ…私に言ったんです。『ローレンには騙されないで』って…。それってシレーネの前でもローレンは本性を晒してる可能性が高いって事だよね…」
「騙されないで…か。何かしら知ってる可能性はあるな…」
やっぱりこのまま放っておくなんて私には無理だ。
そもそも全ての始まりを作ってしまったのは私なのかもしれない。
私が前世を思い出して小説とは違う行動に出たせいで物語が変わってしまった事…ずっと気にしてた。
このままシレーネだけに辛い思いなんてさせられない。
「シリル様…お願いがあります…」
「なんだ?」
私は神妙な面持ちでシリルを見つめた。
「シレーネと一度話をしたいんです。ローレンがしたこと…全てシレーネに話そうと思います。このままじゃ…シレーネが第二の私になってしまうかもしれないから…。もう時間が無いし迷ってなんていられません…」
私は必死な顔で訴えた。
時間がない。
結婚が成立してしまえば、もう私の力ではどうにも出来なくなってしまう。
その前にローレンの悪事を全てシレーネに伝えようと思う。
それで考えて直してくれれば良いと思うけど…
もし、それでもシレーネがローレンと結婚したいというのであれば私はもう止めない。
二人の前から完全に姿を消そう。
アリアは本当に死んだ事にして、私は別人としての道を進もうと思う。
「俺はシレーネ嬢と話す機会を作れば良いって事だな。分かった、機会を見計らってシレーネ嬢に接触してみる。ただローレンの事を気にしながらになるから直ぐには無理かもしれないが…少し待っていてくれ」
シリルは私の言葉を受け止めてくれて、理解してくれた様だった。
本当にシリルには頭が上がらない程に感謝している。
「ありがとうございます、シリル様。やっぱりシリル様は神ですねっ!」
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