上 下
67 / 72
第二章

67.放っておけない-sideロラン-

しおりを挟む
最近ルチアの事があり、シャルとの時間があまり作れていない気がする。
シャルは何も文句は言ってこないが、不満に思っていることは間違いないはずだ。
俺がルチアに会いに行こうとすると、すごく寂しそうな顔を見せる。
そんな顔をさせてしまっている俺自身に腹が立つ。

だけどルチアのことを放っておけないのも事実だ。
それに時間がないのも大きな問題だった。
ルチアの両親は卒業後、直ぐにでも嫁がせようとしているようだ。
それまでに何とかしなければならない。

「ロラン、どうだった?」
「悪い……。だめだった」

昼休み、少し遅れてカフェテラスにやってきた。
端の目立たない席にルチアと向かい合うように座り、昼食を取りながら話をしている。

今話しているのは援助の話だ。
昨日父上にグレイン男爵家への援助を頼めるか聞いてみた。
結果から言えば、だめだった。
援助となれば大きなお金が動くことになる。
そしてグレイン家とも繋がりを持つことにもなる。

俺は余りルチアの家の事を知らなかった。
父上の話では、グレイン家は余り評判のいい家では無いようだ。
男爵は短気でカッとしたらすぐに手を上げるような人間だと聞いた。
その話を聞いて、ルチアのことがすごく心配になった。

そして夫人は浪費家らしい。
援助が無ければやっていくことが出来ない程家は傾いているというのに、一体どこからそんな資金が出ているのだろう。
そんな悪い噂の立つグレイン家に、進んで援助を申し出る者なんていない。

ルチアの婚約は、援助が目的で決められた政略結婚。
両親は欲に眩んで、ルチアの意思など無視して勝手に縁談を決めた。
そんな身売りまがいの事を平気させる、ろくでもない親だ。
俺でもこんな家には援助なんてしたいとは思わないし、何よりこんな家とは関りすら持ちたくない。
ルチアには悪いが、この話を聞いてそう思ってしまった。

「そっか、ダメだったか」
「ごめんな。ぬか喜びさせたよな」

「ううん。そんなことないよ。私の為に動いてくれただけで十分嬉しいから」

ルチアはへらっと表情を緩めて笑っていた。
きっと強がっているのだろう。

(何か、もっといい方法は無いのか……)

「やっぱり、婚約するしか道はないのかも。政略結婚なんて良くある話だし、仕方が無いって諦めちゃった方が楽なのかも」
「そんなに弱気になるなよ。まだ決まった訳はないだろ?俺も一緒に他の解決策を探すからさ」

ルチアは半ば投げやりになっていたが、この男と結婚すれば間違いなく不幸になる。
友人が不幸になる姿なんて誰だって見たくはない。
それに乗り掛かった舟なのだから、最後まで付き合いたいと思ってる。

援助のことはシャルには嘘を付いた。
変に気を遣われても困るし、シャルを巻き込むわけには行かない。
とりあえず落ち込んでいるルチアを励ましながら、なんとか良い方法を探しているというわけだ。

「ロラン、今日の放課後って予定ある?」
「どうしたんだ?」

「あのね、カールが店に来いって連絡してきたの。一人で行くのも少し怖いし、もし良かったら一緒に付いて来てくれないかな?」
「悪い。今日の放課後は予定が……」

今朝、シャルと王都に行く約束をしたことを思い出した。
シャルはすごく嬉しそうな顔をしていたし、今更断るなんて出来ない。

「そっか……」
「悪いな」

俺の言葉を聞いてルチアの表情が一瞬曇った。
その姿を見ていると、放っておけない気持ちになってしまう。
しかもカールも直ぐに手を上げる人間だと聞く。

(シャルには悪いけど、別の日にしてもらうか……)

「やっぱり行く。ルチア一人で行かせるのは心配だ」
「いいの……?でも予定があるんでしょ?無理しなくていいよ」

「いや、大丈夫だ。それは別の日に変更すればいいことだから」
「本当に!?良かった……。本当は一人で行くのすごく怖かったの。だけど他に頼める人なんていないし。ロラン、本当にありがとうっ!」

ルチアは本気で喜んでいた。

(やっぱり怖かったんだな。当然か。シャルには謝らないといけないな……)

しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!

奏音 美都
恋愛
 まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。 「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」  国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?  国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。 「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」  え……私、貴方の妹になるんですけど?  どこから突っ込んでいいのか分かんない。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない

斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。 襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……! この人本当に旦那さま? って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...