2 / 72
第一章
2.隣国王女の登場
しおりを挟む
ざわざわしている教室の前扉が開かれると、教師と共に綺麗なプラチナブロンドの令嬢が入って来た。
その令嬢の姿に皆見惚れているのか、ざわめきが嘘の様にびたりと止まり、教室内は静かになっていた。
「今日は編入生を紹介する…。もう噂等で知っている者も多いとは思うが、彼女は隣国イエーリス国の第三王女だ。来たばかりで分からない事も多いと思うので、何かと気に掛けてやって欲しい…」
「皆さん、初めまして…。私はアリエル・カム・イエーリスと申します。一応王女ですが、皆さんとは仲良く学園生活を過ごしていきたいと思っているので…気兼ねなく話しかけてくれると嬉しい限りです。どうぞ、よろしくお願いします…」
アリエルがにこっと微笑むと、周りの生徒達はドキドキしている様子で頬を染めている者も数名いる程だった。
(すごく綺麗な人…。さすが王女様って感じがするわ…)
アリエルはプラチナブロンドの長い綺麗な髪に、はちみつ色の瞳。
妖艶な大人っぽさと、それでいて気品さも兼ね揃えていて、さすが王女だと感心する程だった。
「ロラン……すごく素敵な人ね…」
私は隣に座るロランに小声で話しかけた。
「そうだな…」
ロランはアリエルを眺めながらぼそっと答えた。
私はロランの反応を見て少し驚いていた。
今までどの令嬢にも反応を示さなかったロランが、アリエルを見て『そうだな』と答えた。
普段なら無言か、『興味が無い』で終わるはずなのに…今日はいつもと違う。
(……やっぱり、王女様はそこら辺の令嬢達とは格が違うって事かしら…。やっぱりロランは綺麗な大人の雰囲気の女性が好みだったのね)
「ロラン…、私応援するわ」
「……は?何の話だ…?」
私が意気込んで呟くと、ロランは僅かに眉を寄せた。
「アリエル王女の席は……」
「あの、先生…宜しいですか?」
教師が空いてる席を探していると、隣に立つアリエルは声を掛けた。
「私、授業をしっかりと聞きたいと思っているので、前の席に座りたいと思っています…。例えば……、こちらの席とか…」
アリエルは私の座ってる席を指さした。
その時私はアリエルと初めて視線が合い、それに気付いたアリエルは私に微笑んだ。
(……え?)
「いや…しかし…そこの席は…」
「アリエル王女…、申し訳ないのですが…こちらは彼女の席です。どうしてもこの席が良いと言うのであれば、僕が変わりますよ…」
教師が困っていると、私の隣に座るジェラルドが口を開いた。
「……もしかして、ジェラルド王子ですか…?」
アリエルがジェラルドに声を掛けると、ジェラルドは「そうですが…」と答えた。
それを聞いた瞬間、アリエルはキラキラとした瞳で嬉しそうな顔を浮かべた。
「私、ずっとジェラルド王子にお会いしてみたいと思っていたの…。何でもこなせて聡明な方だと伺っていたから…一緒に授業を受けるのを楽しみにしていんです」
アリエルは両指を小さく顔の下で合わせて、声を弾ませ本当に楽しそうに話している様に見えた。
(ジェラルドは…別の国の人間にも知られているのね…。でも…この王女、もしかしてジェラルドに気があるのかな……。そうだったら…どうしよう…)
「そんな風に思っていただけるのは有難い事ですが、僕はそれ程出来た人間ではありませんよ」
「先生、私…ずっと憧れていたジェラルド様の隣で授業を受けたいと思っているのですが…、無理でしょうか?」
アリエルは切なげな顔で教師を見つめると、教師は困惑した顔を浮かべながら何故か僅かに頬を染めている様にも見えた。
「……シャルロッテ嬢、申し訳ないのだが…少しの間だけ…その席をアリエル王女に譲ってもらえないだろうか?」
「シャルロッテさん…って言うのね。私からもお願いします……」
二人に見つめられ私は困ってしまう。
きっと教師は王女であるアリエルの願いを簡単には断れないのだろう。
これは仕方がない事だ…。
「わ…分かりました。少しの間だけなら……」
私が仕方なくそう答えると、教師はほっとした顔を浮かべ「ありがとう」と私に感謝していた。
「シャル…ごめん。少しの間だけ我慢していて…。僕が彼女を説得してみるよ…」
「うん、ありがとう」
私は荷物を机の中から出すと、指定された後ろの方の席へと移動した。
授業が始まると、私の席だった場所に座っているアリエルの方へと視線を向けていた。
アリエルは時折、分からない事を隣のジェラルドに聞いたりしていた。
そして気付いてしまった。
アリエルは、間違いなくジェラルドの事が好きなんだと言う事に。
今日会ったばかりだけど、ジェラルドを見るアリエルの瞳はキラキラしていて恋をしている顔だ。
私も長年ジェラルドに恋心を持っていたから分かる。
(どうしよう……。ジェラルドを奪われたくない。でもあんな素敵な人相手に…勝てるわけ…ないよっ…)
私の胸は不安で膨らんでいく。
そんな事ばかり考えていたせいで授業には全く身が入らなかった。
その令嬢の姿に皆見惚れているのか、ざわめきが嘘の様にびたりと止まり、教室内は静かになっていた。
「今日は編入生を紹介する…。もう噂等で知っている者も多いとは思うが、彼女は隣国イエーリス国の第三王女だ。来たばかりで分からない事も多いと思うので、何かと気に掛けてやって欲しい…」
「皆さん、初めまして…。私はアリエル・カム・イエーリスと申します。一応王女ですが、皆さんとは仲良く学園生活を過ごしていきたいと思っているので…気兼ねなく話しかけてくれると嬉しい限りです。どうぞ、よろしくお願いします…」
アリエルがにこっと微笑むと、周りの生徒達はドキドキしている様子で頬を染めている者も数名いる程だった。
(すごく綺麗な人…。さすが王女様って感じがするわ…)
アリエルはプラチナブロンドの長い綺麗な髪に、はちみつ色の瞳。
妖艶な大人っぽさと、それでいて気品さも兼ね揃えていて、さすが王女だと感心する程だった。
「ロラン……すごく素敵な人ね…」
私は隣に座るロランに小声で話しかけた。
「そうだな…」
ロランはアリエルを眺めながらぼそっと答えた。
私はロランの反応を見て少し驚いていた。
今までどの令嬢にも反応を示さなかったロランが、アリエルを見て『そうだな』と答えた。
普段なら無言か、『興味が無い』で終わるはずなのに…今日はいつもと違う。
(……やっぱり、王女様はそこら辺の令嬢達とは格が違うって事かしら…。やっぱりロランは綺麗な大人の雰囲気の女性が好みだったのね)
「ロラン…、私応援するわ」
「……は?何の話だ…?」
私が意気込んで呟くと、ロランは僅かに眉を寄せた。
「アリエル王女の席は……」
「あの、先生…宜しいですか?」
教師が空いてる席を探していると、隣に立つアリエルは声を掛けた。
「私、授業をしっかりと聞きたいと思っているので、前の席に座りたいと思っています…。例えば……、こちらの席とか…」
アリエルは私の座ってる席を指さした。
その時私はアリエルと初めて視線が合い、それに気付いたアリエルは私に微笑んだ。
(……え?)
「いや…しかし…そこの席は…」
「アリエル王女…、申し訳ないのですが…こちらは彼女の席です。どうしてもこの席が良いと言うのであれば、僕が変わりますよ…」
教師が困っていると、私の隣に座るジェラルドが口を開いた。
「……もしかして、ジェラルド王子ですか…?」
アリエルがジェラルドに声を掛けると、ジェラルドは「そうですが…」と答えた。
それを聞いた瞬間、アリエルはキラキラとした瞳で嬉しそうな顔を浮かべた。
「私、ずっとジェラルド王子にお会いしてみたいと思っていたの…。何でもこなせて聡明な方だと伺っていたから…一緒に授業を受けるのを楽しみにしていんです」
アリエルは両指を小さく顔の下で合わせて、声を弾ませ本当に楽しそうに話している様に見えた。
(ジェラルドは…別の国の人間にも知られているのね…。でも…この王女、もしかしてジェラルドに気があるのかな……。そうだったら…どうしよう…)
「そんな風に思っていただけるのは有難い事ですが、僕はそれ程出来た人間ではありませんよ」
「先生、私…ずっと憧れていたジェラルド様の隣で授業を受けたいと思っているのですが…、無理でしょうか?」
アリエルは切なげな顔で教師を見つめると、教師は困惑した顔を浮かべながら何故か僅かに頬を染めている様にも見えた。
「……シャルロッテ嬢、申し訳ないのだが…少しの間だけ…その席をアリエル王女に譲ってもらえないだろうか?」
「シャルロッテさん…って言うのね。私からもお願いします……」
二人に見つめられ私は困ってしまう。
きっと教師は王女であるアリエルの願いを簡単には断れないのだろう。
これは仕方がない事だ…。
「わ…分かりました。少しの間だけなら……」
私が仕方なくそう答えると、教師はほっとした顔を浮かべ「ありがとう」と私に感謝していた。
「シャル…ごめん。少しの間だけ我慢していて…。僕が彼女を説得してみるよ…」
「うん、ありがとう」
私は荷物を机の中から出すと、指定された後ろの方の席へと移動した。
授業が始まると、私の席だった場所に座っているアリエルの方へと視線を向けていた。
アリエルは時折、分からない事を隣のジェラルドに聞いたりしていた。
そして気付いてしまった。
アリエルは、間違いなくジェラルドの事が好きなんだと言う事に。
今日会ったばかりだけど、ジェラルドを見るアリエルの瞳はキラキラしていて恋をしている顔だ。
私も長年ジェラルドに恋心を持っていたから分かる。
(どうしよう……。ジェラルドを奪われたくない。でもあんな素敵な人相手に…勝てるわけ…ないよっ…)
私の胸は不安で膨らんでいく。
そんな事ばかり考えていたせいで授業には全く身が入らなかった。
0
お気に入りに追加
1,610
あなたにおすすめの小説
【R18】ヤンデレ侯爵は婚約者を愛し過ぎている
京佳
恋愛
非の打ち所がない完璧な婚約者クリスに劣等感を抱くラミカ。クリスに淡い恋心を抱いてはいるものの素直になれないラミカはクリスを避けていた。しかし当のクリスはラミカを異常な程に愛していて絶対に手放すつもりは無い。「僕がどれだけラミカを愛しているのか君の身体に教えてあげるね?」
完璧ヤンデレ美形侯爵
捕食される無自覚美少女
ゆるゆる設定
【R18】幼馴染な陛下と、甘々な毎日になりました💕
月極まろん
恋愛
幼なじみの陛下に、気持ちだけでも伝えたくて。いい思い出にしたくて告白したのに、執務室のソファに座らせられて、なぜかこんなえっちな日々になりました。
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない
斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。
襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……!
この人本当に旦那さま?
って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!
義兄様に弄ばれる私は溺愛され、その愛に堕ちる
一ノ瀬 彩音
恋愛
国王である義兄様に弄ばれる悪役令嬢の私は彼に溺れていく。
そして彼から与えられる快楽と愛情で心も身体も満たされていく……。
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら
夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。
それは極度の面食いということ。
そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。
「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ!
だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」
朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい?
「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」
あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?
それをわたしにつける??
じょ、冗談ですよね──!?!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる