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101.新しい人生の幕開け
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翌日、私は自室で荷物を纏めていた。
また後日来る事にはなるが、服や身の回りの物をいくつか持って行こうと整理をしていた。
「随分と散らかっているな」
「……え? わっ、ヴィムっ、なんでここにっ!」
背後から声が聞こえて、振り返ると目の前にヴィムが立っていて私は驚いた声を上げてしまう。
「ここがお前の部屋なんだな。入るのは初めてだ」
「そ、そうね。恥ずかしいから、あんまり見ないでっ! 普段はこんなに散らかってはないわよ! 今は整理をしていて……」
ヴィムは私の室内に視線を巡らし、感心したように呟いた。
私は慌てるように必死に誤魔化そうとする。
(なんでよりにもよって、こんなに散らかっているところを見られてしまうの……。だらしないなんて思われたらやだな)
「俺も何か手伝おうか?」
「もうすぐ終わりそうなので大丈夫ですっ!」
「全く終わりそうな気配はないけどな」
「うっ……」
まさかヴィムが迎えに来るとは思わず、ゆっくりと作業をしていた。
ヴィムには少しだけ手伝ってもらうことにした。
「私ね、お母様とちゃんと話しが出来たの」
「そうか、良かったな。ってことは、お前を悩ませるものは全て消えたと言うことか?」
「そうなるかな」
「ならば、これから先お前の心は俺だけのものに出来るってことだな」
ヴィムはサラリと言ってきたので、私は気付かず「そうですね」と普通に返してしまう。
「やっとお前を独占出来ると言うことか。漸く俺の願いが叶う時が来るんだな」
「え、……っ、いきなり何を言うんですかっ! わ、私の心は既にヴィムだけのものです……」
私は恥ずかしそうに小さく答えた。
「それは俺も同じだ。俺の心はアリーセ、お前だけのものだ。絶対にお前を幸せにすると誓う。俺の傍にいることを後悔させない」
「はい……」
私達は微笑み、心が通じ合っているのを確認するかのように口付けを交わした。
(ヴィム、大好き……)
私の新しい人生はまたここから始まろうとしている。
これから先、どんな苦悩があっても二人で力を合わせれば乗り越えられる。
そう信じている。
***
準備を終えると私達は階段を降りて、玄関の前に立っていた。
そこには見送るように両親とニコルの姿がある。
「ヴィム殿下、アリーの事をどうかよろしくお願いします」
母は丁寧に挨拶をすると、深々と頭を下げた。
「ああ、絶対にアリーセは私の手で幸せにする。さっきアリーセにもそれを誓ったからな」
「……っ、こんな所でそんなこと言わないでっ」
ヴィムは相変わらずサラリと恥ずかしい事を言ってくる。
私は一人で照れて、困った様に答えた。
(嬉しいけど、家族の前でそんな風に言われると恥ずかしいわ……)
「お姉様、寂しくなったらいつでも帰ってきてくださいね!」
「ニコル、ありがとう」
私が笑顔で答えると、ニコルは泣きそうな顔で抱き着いて来た。
「絶対に誰よりも幸せになってくださいっ!」
「うん……、ニコルもね」
私が優しく抱きしめ返すと、ニコルは小さく頷いていた。
「アリーのおかげで私達家族はあるべき姿に戻れた。本当に自慢の娘だ」
「お父様、言い過ぎです……」
父は私に感謝する様に穏やかな声で告げる。
さっきから恥ずかしさを感じているのは私だけな気がする。
だけど嫌な気持ちは一切無かった。
まるで私の新しい門出を祝ってくれているようで、嬉しかった。
「アリーセ、行こうか」
「はいっ!」
ヴィムは私の前に手を差し出してくれたので、それを嬉しそうに取り歩き出した。
-end-
**********************
あとがき
これでこちらのお話は終わりになります。
短編のつもりで始めたのに、こんなにも長々となってしまい申し訳ありません。
本当は綺麗に100話で終わる予定だったんですが、長すぎてしまったので分けました。
自分でもこんなに長くなるなんて予想していませんでした(汗)
最後まで読んで頂きありがとうございました!(感謝)
また後日来る事にはなるが、服や身の回りの物をいくつか持って行こうと整理をしていた。
「随分と散らかっているな」
「……え? わっ、ヴィムっ、なんでここにっ!」
背後から声が聞こえて、振り返ると目の前にヴィムが立っていて私は驚いた声を上げてしまう。
「ここがお前の部屋なんだな。入るのは初めてだ」
「そ、そうね。恥ずかしいから、あんまり見ないでっ! 普段はこんなに散らかってはないわよ! 今は整理をしていて……」
ヴィムは私の室内に視線を巡らし、感心したように呟いた。
私は慌てるように必死に誤魔化そうとする。
(なんでよりにもよって、こんなに散らかっているところを見られてしまうの……。だらしないなんて思われたらやだな)
「俺も何か手伝おうか?」
「もうすぐ終わりそうなので大丈夫ですっ!」
「全く終わりそうな気配はないけどな」
「うっ……」
まさかヴィムが迎えに来るとは思わず、ゆっくりと作業をしていた。
ヴィムには少しだけ手伝ってもらうことにした。
「私ね、お母様とちゃんと話しが出来たの」
「そうか、良かったな。ってことは、お前を悩ませるものは全て消えたと言うことか?」
「そうなるかな」
「ならば、これから先お前の心は俺だけのものに出来るってことだな」
ヴィムはサラリと言ってきたので、私は気付かず「そうですね」と普通に返してしまう。
「やっとお前を独占出来ると言うことか。漸く俺の願いが叶う時が来るんだな」
「え、……っ、いきなり何を言うんですかっ! わ、私の心は既にヴィムだけのものです……」
私は恥ずかしそうに小さく答えた。
「それは俺も同じだ。俺の心はアリーセ、お前だけのものだ。絶対にお前を幸せにすると誓う。俺の傍にいることを後悔させない」
「はい……」
私達は微笑み、心が通じ合っているのを確認するかのように口付けを交わした。
(ヴィム、大好き……)
私の新しい人生はまたここから始まろうとしている。
これから先、どんな苦悩があっても二人で力を合わせれば乗り越えられる。
そう信じている。
***
準備を終えると私達は階段を降りて、玄関の前に立っていた。
そこには見送るように両親とニコルの姿がある。
「ヴィム殿下、アリーの事をどうかよろしくお願いします」
母は丁寧に挨拶をすると、深々と頭を下げた。
「ああ、絶対にアリーセは私の手で幸せにする。さっきアリーセにもそれを誓ったからな」
「……っ、こんな所でそんなこと言わないでっ」
ヴィムは相変わらずサラリと恥ずかしい事を言ってくる。
私は一人で照れて、困った様に答えた。
(嬉しいけど、家族の前でそんな風に言われると恥ずかしいわ……)
「お姉様、寂しくなったらいつでも帰ってきてくださいね!」
「ニコル、ありがとう」
私が笑顔で答えると、ニコルは泣きそうな顔で抱き着いて来た。
「絶対に誰よりも幸せになってくださいっ!」
「うん……、ニコルもね」
私が優しく抱きしめ返すと、ニコルは小さく頷いていた。
「アリーのおかげで私達家族はあるべき姿に戻れた。本当に自慢の娘だ」
「お父様、言い過ぎです……」
父は私に感謝する様に穏やかな声で告げる。
さっきから恥ずかしさを感じているのは私だけな気がする。
だけど嫌な気持ちは一切無かった。
まるで私の新しい門出を祝ってくれているようで、嬉しかった。
「アリーセ、行こうか」
「はいっ!」
ヴィムは私の前に手を差し出してくれたので、それを嬉しそうに取り歩き出した。
-end-
**********************
あとがき
これでこちらのお話は終わりになります。
短編のつもりで始めたのに、こんなにも長々となってしまい申し訳ありません。
本当は綺麗に100話で終わる予定だったんですが、長すぎてしまったので分けました。
自分でもこんなに長くなるなんて予想していませんでした(汗)
最後まで読んで頂きありがとうございました!(感謝)
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もも様
感想ありがとうございます(o*。_。)oペコッ
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最後まで読んで頂きありがとうございました!