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78.深い後悔②-sideニコル-
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今まで何度もルシ様に『酷い』という言葉を浴びせてきたが、本当に酷い事をしていたのは間違いなく私だ。
本来結ばれるはずの二人の仲を引き裂き、人生を狂わせてしまったのだから。
その結果、大切だったルシ様も、ずっと傍にいてくれたお姉様も失おうとしている。
幼い頃の楽しかった思い出が、全て泡になって消えてしまうような気がして怖い。
あの時幸せだと思えたのは二人がいてくれたからだ。
どちらかが欠けていたとしたら、あの様な日々は送れなかっただろう。
そう思うという事は、私はルシ様も、お姉様も大好きだったという事になる。
(私、そういえばお姉様のこと、結構好きだったんだ……)
いつも強気で絶対に負けを認めようとしないお姉様に少し呆れてはいたが、そんなところもお姉様らしいなと思っていて結構気に入っていた。
頼りになりそうで、頼りないから、私が傍にいてあげないとダメだなと思ったこともある。
だけど、一緒に過ごしていくうちに私とお姉様の間に、絶対に縮まらない差があることに気付いてしまった。
私は孤児でお姉様は貴族。
身代わりだとか、孤児である事を気にしていたのは私自身だった。
嫉妬や劣等感に囚われ、不安からあるべき姿を見失っていたのだろう。
(あんなにずっと傍にいたのに、私は一体何を見て来たんだろう。お姉様、ごめんないっ……、ごめんなさい)
私の目からは止めどなく涙が溢れ、両手で顔を覆いながら声を押し殺すように泣き続けた。
「ニコル、今は泣いている場合ではないだろう。しっかりしなさい」
「……っ、はい……」
お父様の声でハッと我に返り、私は涙でぐちゃぐちゃになった顔を上げた。
厳しい声に聞こえて一瞬ドキッとしてしまったが、その表情は優しかった。
(そうよね、泣いていても解決しないわ。私はルシ様を止めるためにここに来たのに、何をしているんだろう)
私は涙で濡れている目元を何度も指で擦った。
現実に引き戻されると、事の重大さを感じているせいか涙はピタッと止んだ。
私に泣いている暇なんてない。
今はそんなことよりも、やらなければいけない事がある。
「ニコル、今から出掛ける準備をしてきなさい。私も用意をするから」
「え……?」
「今から侯爵家に向かう。ルシアノ殿がどれくらい本気なのかは分からないが、早い方が良い。行動に移す前に説得出来ればいいんだが……」
「私の所為で迷惑ばかりかけてしまって、ごめんなさい……」
「謝る相手は私ではないはずだ。ニコルにはもう分かっているよね」
「……はい。私、急いで準備してきますっ!」
謝って許してもらえるかは分からないけど、今の私に出来ることはそれしかない。
どんなに罵倒されても、許してもらえるまで何度だって謝るつもりだ。
だけど、ルシ様との結婚は諦めたわけではない。
私は今でもルシ様の事が好きだし、結婚するのなら好きな人としたい。
その気持ちだけはどんなことがあっても変わらないだろう。
私はソファーから立ち上がり軽くお辞儀をすると、走って自分の部屋まで向かった。
大変な事になっているのに、ここに来る前より心は軽くなっていた。
お父様が私の味方でいてくれて、本当の娘だと思っていると知れたからだろう。
私は一人じゃないと言ってくれているみたいで、とても心強かった。
***
部屋に戻り大急ぎで準備を済ませると、階段を降りてエントランスへと移動した。
使用人に化粧を直して貰い、見せられる程度にはなったが、真っ赤に腫れた瞳だけは隠しきれなかった。
お父様は階段の下で執事と何やら話をしている様子だった。
階段から降りていく私に気付くと、お父様の視線が私の方へと移動した。
「ニコル、用意は出来たか?」
「はい、大丈夫です!」
私は緊張で強張った顔をしてしまうが、はっきりとした口調で答えた。
(しっかりしなきゃ……)
「それでは私達はツェルナー侯爵家に向かうので、後の事は頼む」
「旦那様、畏まりました」
「ニコル行こうか」
「はいっ!」
私は掌をぎゅっと握りしめ、覚悟を決めると屋敷を後にした。
本来結ばれるはずの二人の仲を引き裂き、人生を狂わせてしまったのだから。
その結果、大切だったルシ様も、ずっと傍にいてくれたお姉様も失おうとしている。
幼い頃の楽しかった思い出が、全て泡になって消えてしまうような気がして怖い。
あの時幸せだと思えたのは二人がいてくれたからだ。
どちらかが欠けていたとしたら、あの様な日々は送れなかっただろう。
そう思うという事は、私はルシ様も、お姉様も大好きだったという事になる。
(私、そういえばお姉様のこと、結構好きだったんだ……)
いつも強気で絶対に負けを認めようとしないお姉様に少し呆れてはいたが、そんなところもお姉様らしいなと思っていて結構気に入っていた。
頼りになりそうで、頼りないから、私が傍にいてあげないとダメだなと思ったこともある。
だけど、一緒に過ごしていくうちに私とお姉様の間に、絶対に縮まらない差があることに気付いてしまった。
私は孤児でお姉様は貴族。
身代わりだとか、孤児である事を気にしていたのは私自身だった。
嫉妬や劣等感に囚われ、不安からあるべき姿を見失っていたのだろう。
(あんなにずっと傍にいたのに、私は一体何を見て来たんだろう。お姉様、ごめんないっ……、ごめんなさい)
私の目からは止めどなく涙が溢れ、両手で顔を覆いながら声を押し殺すように泣き続けた。
「ニコル、今は泣いている場合ではないだろう。しっかりしなさい」
「……っ、はい……」
お父様の声でハッと我に返り、私は涙でぐちゃぐちゃになった顔を上げた。
厳しい声に聞こえて一瞬ドキッとしてしまったが、その表情は優しかった。
(そうよね、泣いていても解決しないわ。私はルシ様を止めるためにここに来たのに、何をしているんだろう)
私は涙で濡れている目元を何度も指で擦った。
現実に引き戻されると、事の重大さを感じているせいか涙はピタッと止んだ。
私に泣いている暇なんてない。
今はそんなことよりも、やらなければいけない事がある。
「ニコル、今から出掛ける準備をしてきなさい。私も用意をするから」
「え……?」
「今から侯爵家に向かう。ルシアノ殿がどれくらい本気なのかは分からないが、早い方が良い。行動に移す前に説得出来ればいいんだが……」
「私の所為で迷惑ばかりかけてしまって、ごめんなさい……」
「謝る相手は私ではないはずだ。ニコルにはもう分かっているよね」
「……はい。私、急いで準備してきますっ!」
謝って許してもらえるかは分からないけど、今の私に出来ることはそれしかない。
どんなに罵倒されても、許してもらえるまで何度だって謝るつもりだ。
だけど、ルシ様との結婚は諦めたわけではない。
私は今でもルシ様の事が好きだし、結婚するのなら好きな人としたい。
その気持ちだけはどんなことがあっても変わらないだろう。
私はソファーから立ち上がり軽くお辞儀をすると、走って自分の部屋まで向かった。
大変な事になっているのに、ここに来る前より心は軽くなっていた。
お父様が私の味方でいてくれて、本当の娘だと思っていると知れたからだろう。
私は一人じゃないと言ってくれているみたいで、とても心強かった。
***
部屋に戻り大急ぎで準備を済ませると、階段を降りてエントランスへと移動した。
使用人に化粧を直して貰い、見せられる程度にはなったが、真っ赤に腫れた瞳だけは隠しきれなかった。
お父様は階段の下で執事と何やら話をしている様子だった。
階段から降りていく私に気付くと、お父様の視線が私の方へと移動した。
「ニコル、用意は出来たか?」
「はい、大丈夫です!」
私は緊張で強張った顔をしてしまうが、はっきりとした口調で答えた。
(しっかりしなきゃ……)
「それでは私達はツェルナー侯爵家に向かうので、後の事は頼む」
「旦那様、畏まりました」
「ニコル行こうか」
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私は掌をぎゅっと握りしめ、覚悟を決めると屋敷を後にした。
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