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65.彼女との出会い⑤-sideヴィム-

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 あれから3年程の月日が流れ、学園生活に終わりが来た。
 振り返って見ると、ここで過ごした時間は私にとっては人生を変える程の大きな出来事だったように思える。
 その中心にあったのは彼女との出会いだった。

 彼女と出会う事で、私は今まで味わったことのない様々な感情を知ることとなった。
 強い執着心や、傍にいるのに気持ちを打ち明けられないジレンマ。
 我慢することも初めて経験した。
 当然彼女の婚約者には嫉妬だってしたし、全く私の気持ちに気付かない鈍感過ぎる彼女に対して不満を感じたこともある。

 しかし彼女が嬉しそうに笑っている姿を見ていると、これらの負の感情は一瞬で消えていく。
 私は相当に彼女に溺れてしまっている様だ。
 だから日に日に大きくなっていくこの気持ちを隠すのは少し大変だった。
 彼女を前にすると偽りの仮面はいつの間にか外れていて、素顔の自分を曝け出してしまう時が度々ある。
 この時はまだ友人という立場であったから、私の気持ちを知られて気まずさから敬遠されてしまう事を一番に恐れていた。
 この私が彼女によって感情を振り回されていたことになるが、不思議とそれらは嫌では無かった。

 だけど、我慢をする時間はもう終わりだ。
 これから先は彼女を私のものにするべく、行動を開始する。

 私は彼女の能力を買って王宮事務官への道を強く勧めた。
 彼女の性格を知り尽くしていた為、どうすれば彼女が靡くのかは分かっていた。
 褒められる事に弱いのは知っていたし、何より家族を引き合いに出せば彼女の心は簡単に動くと思った。
 彼女の家の詳しい内情までは分からないが、プラーム家は今の彼女にとって足枷になっているのは間違いない。
 複雑な家庭環境に加えて、妹に婚約者まで奪われかけているのだから当然だと言えるだろう。
 彼女をこの場所から救い出して、私が生涯かけて幸せにする。

 手元には今まで調査した彼女の婚約者と妹の浮気現場を押さえた資料が揃っている。
 もし彼女の気持ちが動かなければ、これを見せて納得させるつもりでいた。
 卑怯な手かもしれないが、目的を果たす為ならば手段はなんだって良かった。

 そして私の思惑通り、彼女は卒業と同時に王宮へとやってきた。
 本来ならば長官の下で働くことになるのだが、話を付けて私の傍に置くことにした。
 表向きは見知った人間である彼女を傍に置けば仕事が捗る、という適当な理由を付けて。
 当然私に反発して来る様な人間などいなかった。

 そして前々から改装を頼んでおいた彼女の部屋も完成した。
 結婚したら共同の寝室を使うつもりではいるが、私が王太子であるが故に傍に居られなくなる期間も必ず訪れるだろう。
 その時の為の部屋だ。
 外からの扉は塞ぎ、入り口となる扉は私の部屋の中に設置させた。
 そうする事で余計な者達との接触を断つことが出来る。
 扉には特殊な魔術をかけており、主である私の意思で扉を視界から消すことも可能だ。

 彼女は私にとって一番の宝物だ。
 大切なものは自分の傍に置いて、厳重にしまっておくは当然のこと。

 私の心をこんなにも深く奪ったのだから、絶対に逃がしはしない。
 アリーセ・プラームは私だけのものだ。
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