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1.報われない気持ち
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「――どうか、誰のものにもならないで。こんな気持ちを持ってはいけない事は分かってる。だけど好きなんだ、君の事がどうしようもなく……」
あの時の光景を思い出すと、今でも胸の奥が締め付けられる様に痛くなる。
それは私の婚約者が寝ている妹に告げていた言葉だった。
愛されているのは婚約者の私ではなく、妹だったのだと知った瞬間でもあった。
***
私の名前はアリーセ・プラーム、伯爵家の長女であり、現在19歳。
ミルキーブロンドのふんわりとした髪に、ストロベリー色の少し大きめな瞳が印象的に見えるのかもしれない。
肌の色は白く、顔立ちは少し幼さが残る為、そこはメイク等でカバーしている。
私は王宮に仕える身である為、きっちりとした格好を日頃から心がけている。
身長も高い方ではないので、そこはヒールの高い靴で誤魔化し、髪をアップにし、更には眼鏡をかけてクールビューティーを演じているつもりだ。
そんな私には物心がついた頃から婚約者がいた。
彼の名前はルシアノ・ツェルナー、侯爵家の嫡男であり私より2歳年上の21歳だ。
サラサラのプラチナブロンドの長い髪は後ろで一纏めにし、性格から滲み出るような優しい顔立ちをしている。
婚約は家同士の繋がりを目的とした、いわゆる政略結婚ではあったが、ルシアノは私にはいつも優しく接してくれていて、私はそんなルシアノのことがずっと大好きだった。
だから始まりは政略結婚ではあったが、きっと幸せな結婚生活が送れるのではないかとずっと夢見ていた。
しかし、そんな私の思いはあの日のあの瞬間から、無残にも崩れ落ちていった。
衝撃の告白を聞いたのは今から2年程前の事だった。
当時、私は王都にある王立学園に通っていた。
幼い頃から私は負けず嫌いなところがあり、勉学にも勤しんでいた為、成績は常に上位にいた。
その事もあり同級生だった王子とは仲良くなり、卒業後は是非自分の元で働いてくれないかと誘われる程だった。
しかし、あの光景を見るまでは学園を卒業したら直ぐにでもルシアノの元へ嫁ぎたいと思っていた為、その誘いを一度は断った。
だけどあんな場面を見てしまい、未来が見えなくなってしまった私はこのままルシアノと結婚してしまって良いのかと思うようになっていった。
やっぱりこんな気持ちのまま結婚なんて出来ないと思った私は結婚を先送りにする為、両親に就職したいと話をしてみることにした。
すると王子の元で仕えることは名誉な事であり、私がやりたいのであれば応援すると後押ししてくれたのだ。
そしてその事をルシアノに伝えたら、「結婚は急いでいないから、アリーがやりたいのならやってみればいいよ」と優しく受け入れてくれた。
そして私は現在、この国の王太子であるヴィム・フレイ・ザイフリートの元で事務官として働いている。
主にヴィムの執務の補佐が仕事であり、仕事中は常にヴィムの傍にいる。
ヴィムとは学園時代からの知り合いという事で、それなりに上手くはやれていると思う。
しかし相手は王太子なので緊張してしまう時もあるのだが、私がリラックスして仕事が出来る様にと、私の前では素の姿を見せる様になっていった。
ヴィムは私と同い年の19歳で、金色の柔らかい髪質に、吸い込まれそうな碧い瞳を持つ。
そして誰が見ても見惚れてしまいそうな程の端麗な顔立ちに、スラッとした体形であり、何処から見ても王子にしか見えない風貌をしている。
一つ疑問なのは王太子であるにも関わらず学生時代も、今現在もヴィムには婚約者候補すらいない事だった。
隠しているだけなのだろうかと思っていたが、不思議な程に女の影は見えなかった。
あの時の光景を思い出すと、今でも胸の奥が締め付けられる様に痛くなる。
それは私の婚約者が寝ている妹に告げていた言葉だった。
愛されているのは婚約者の私ではなく、妹だったのだと知った瞬間でもあった。
***
私の名前はアリーセ・プラーム、伯爵家の長女であり、現在19歳。
ミルキーブロンドのふんわりとした髪に、ストロベリー色の少し大きめな瞳が印象的に見えるのかもしれない。
肌の色は白く、顔立ちは少し幼さが残る為、そこはメイク等でカバーしている。
私は王宮に仕える身である為、きっちりとした格好を日頃から心がけている。
身長も高い方ではないので、そこはヒールの高い靴で誤魔化し、髪をアップにし、更には眼鏡をかけてクールビューティーを演じているつもりだ。
そんな私には物心がついた頃から婚約者がいた。
彼の名前はルシアノ・ツェルナー、侯爵家の嫡男であり私より2歳年上の21歳だ。
サラサラのプラチナブロンドの長い髪は後ろで一纏めにし、性格から滲み出るような優しい顔立ちをしている。
婚約は家同士の繋がりを目的とした、いわゆる政略結婚ではあったが、ルシアノは私にはいつも優しく接してくれていて、私はそんなルシアノのことがずっと大好きだった。
だから始まりは政略結婚ではあったが、きっと幸せな結婚生活が送れるのではないかとずっと夢見ていた。
しかし、そんな私の思いはあの日のあの瞬間から、無残にも崩れ落ちていった。
衝撃の告白を聞いたのは今から2年程前の事だった。
当時、私は王都にある王立学園に通っていた。
幼い頃から私は負けず嫌いなところがあり、勉学にも勤しんでいた為、成績は常に上位にいた。
その事もあり同級生だった王子とは仲良くなり、卒業後は是非自分の元で働いてくれないかと誘われる程だった。
しかし、あの光景を見るまでは学園を卒業したら直ぐにでもルシアノの元へ嫁ぎたいと思っていた為、その誘いを一度は断った。
だけどあんな場面を見てしまい、未来が見えなくなってしまった私はこのままルシアノと結婚してしまって良いのかと思うようになっていった。
やっぱりこんな気持ちのまま結婚なんて出来ないと思った私は結婚を先送りにする為、両親に就職したいと話をしてみることにした。
すると王子の元で仕えることは名誉な事であり、私がやりたいのであれば応援すると後押ししてくれたのだ。
そしてその事をルシアノに伝えたら、「結婚は急いでいないから、アリーがやりたいのならやってみればいいよ」と優しく受け入れてくれた。
そして私は現在、この国の王太子であるヴィム・フレイ・ザイフリートの元で事務官として働いている。
主にヴィムの執務の補佐が仕事であり、仕事中は常にヴィムの傍にいる。
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しかし相手は王太子なので緊張してしまう時もあるのだが、私がリラックスして仕事が出来る様にと、私の前では素の姿を見せる様になっていった。
ヴィムは私と同い年の19歳で、金色の柔らかい髪質に、吸い込まれそうな碧い瞳を持つ。
そして誰が見ても見惚れてしまいそうな程の端麗な顔立ちに、スラッとした体形であり、何処から見ても王子にしか見えない風貌をしている。
一つ疑問なのは王太子であるにも関わらず学生時代も、今現在もヴィムには婚約者候補すらいない事だった。
隠しているだけなのだろうかと思っていたが、不思議な程に女の影は見えなかった。
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