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第一章:聖女から冒険者へ
65.二人の案内人①
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私は無事に目的地であるアイリスの街へと到着した。
「案内、ありがとうございました。最初は少し怖かったけど、すごく楽しかったです」
「少しでも楽しんで頂けたのなら、私としても嬉しいです。あ、それから、お連れの方の使いが出口でお待ちだと窺っております。たしか、名前はシェナ様だったと思います」
初めて耳にする名前に少し戸惑ってしまったが、彼女も詳細までは聞かされていないだろうと察し「分かりました」とだけ答えて、私は出口へと向かって歩き出した。
今の伝言からして、まだイザナ達とは再会出来ないようだ。
(どうして、イザナもゼロも私には何も伝えてくれなかったんだろう……)
魔法都市ジースから離れることは急遽決まったことであり、私に事情を説明する時間がなかったことは何となく納得できる。
だけど、一言くらい伝えてくれても良かったはずだ。
あのイザナが何も言わなかったというのが、少し頭に引っかかっていた。
だけど、その疑問も彼らに会えば直ぐに解決出来るだろうと私は安易に考えていた。
「あの……、失礼ですが、もしかしてルナ様ですか?」
出口付近に着くと、傍にいた少女に話しかけられた。
年齢は十五歳くらいで、ふんわりとした茶色いくせ毛が妙に可愛らしく見える。
「えっと、もしかして、シェナ様?」
「はいっ! そうです。お待ちしておりました。奥に馬車を用意しているので、どうぞこちらへ」
彼女は笑顔で答えると、私を馬車のところまで案内してくれた。
まさか、使いが私よりも幼い少女とは思わず少し動揺してしまったが、早くイザナ達と再会したかったので彼女の言葉に従う。
「ささっ、どうぞお乗りください。見てくれは少しボロいですが、我慢してくださいねっ」
彼女の言う通り、一部塗装が剥がれ、近くで見るとあちらこちら傷だらけのまま放置されている。
お世辞にも綺麗とは言い難いくらい傷んでいて、私は思わず苦笑した。
そして、この馬車を見て急に不安を感じ始め、足を止めてしまう。
(本当にこの子がイザナの用意した使いなのかな)
イザナは大国の王太子であったこともあり、宿泊所も船も驚くような豪華な部屋を当たり前のように用意していた。
そんな彼が、わざわざこんな馬車を用意させるとは到底思えない。
ジースでの一件や、一人でいる心細さから、次第に不安になっていく。
すると、私の様子に気付いたのか、シェナは私の傍に近付き耳元で小さな声で囁いた。
「ルナ様、お願いです。早く馬車に乗って下さい。ここに長居したら、計画が無駄になっちゃう」
「え? 計画?」
彼女の言っていることは、私には全く理解出来ていなかったが、じっとこちらを見る瞳はまるで懇願しているようにも見え、さらに私は戸惑っていく。
「詳しいことは、中にいるお姉様が説明してくれます」
開けられた場所の中を覗くと、若い女性が一人座っており、不意に視線が合う。
一瞬ドキッとして私が固まっていると、その隙にシェナに手首を引っ張られた。
「あ、ちょっと待って……」
「ルナ様、事情は全てお話します。イザナ様やゼロ様にお会いしたいのであれば、今は私達に従ってください」
私が抵抗しようとすると、今度はシェナの姉が口を開いた。
その言葉に困惑し、私は眉を顰めた。
ますます怪しく感じるが、彼女たちは間違いなくイザナやゼロのことを知っている。
となれば、本当に二人が用意した使いの可能性もある。
もちろん、その逆も可能性としてはあるが、ここに留まれば事情を知ることはできない。
そこで、私は覚悟を決めると「分かりました」と答え、馬車に乗り込んだ。
私の言葉を聞くと、二人は顔を見合わせるように安堵した表情を浮かべていた。
シェナは姉の隣に座り、私は二人と対面するように腰掛ける。
私が座ったのを確認すると、シェナの姉が「出して」と御者に向かって伝え、ゆっくりと馬車は走り始めた。
(大丈夫、だよね……)
不安は大きいが、いざとなったら隙を見て逃げればいい。
(まずは事情を探らないと……)
まさかこのアイリスで、こんなことになるなんて私は思ってもいなかった。
「案内、ありがとうございました。最初は少し怖かったけど、すごく楽しかったです」
「少しでも楽しんで頂けたのなら、私としても嬉しいです。あ、それから、お連れの方の使いが出口でお待ちだと窺っております。たしか、名前はシェナ様だったと思います」
初めて耳にする名前に少し戸惑ってしまったが、彼女も詳細までは聞かされていないだろうと察し「分かりました」とだけ答えて、私は出口へと向かって歩き出した。
今の伝言からして、まだイザナ達とは再会出来ないようだ。
(どうして、イザナもゼロも私には何も伝えてくれなかったんだろう……)
魔法都市ジースから離れることは急遽決まったことであり、私に事情を説明する時間がなかったことは何となく納得できる。
だけど、一言くらい伝えてくれても良かったはずだ。
あのイザナが何も言わなかったというのが、少し頭に引っかかっていた。
だけど、その疑問も彼らに会えば直ぐに解決出来るだろうと私は安易に考えていた。
「あの……、失礼ですが、もしかしてルナ様ですか?」
出口付近に着くと、傍にいた少女に話しかけられた。
年齢は十五歳くらいで、ふんわりとした茶色いくせ毛が妙に可愛らしく見える。
「えっと、もしかして、シェナ様?」
「はいっ! そうです。お待ちしておりました。奥に馬車を用意しているので、どうぞこちらへ」
彼女は笑顔で答えると、私を馬車のところまで案内してくれた。
まさか、使いが私よりも幼い少女とは思わず少し動揺してしまったが、早くイザナ達と再会したかったので彼女の言葉に従う。
「ささっ、どうぞお乗りください。見てくれは少しボロいですが、我慢してくださいねっ」
彼女の言う通り、一部塗装が剥がれ、近くで見るとあちらこちら傷だらけのまま放置されている。
お世辞にも綺麗とは言い難いくらい傷んでいて、私は思わず苦笑した。
そして、この馬車を見て急に不安を感じ始め、足を止めてしまう。
(本当にこの子がイザナの用意した使いなのかな)
イザナは大国の王太子であったこともあり、宿泊所も船も驚くような豪華な部屋を当たり前のように用意していた。
そんな彼が、わざわざこんな馬車を用意させるとは到底思えない。
ジースでの一件や、一人でいる心細さから、次第に不安になっていく。
すると、私の様子に気付いたのか、シェナは私の傍に近付き耳元で小さな声で囁いた。
「ルナ様、お願いです。早く馬車に乗って下さい。ここに長居したら、計画が無駄になっちゃう」
「え? 計画?」
彼女の言っていることは、私には全く理解出来ていなかったが、じっとこちらを見る瞳はまるで懇願しているようにも見え、さらに私は戸惑っていく。
「詳しいことは、中にいるお姉様が説明してくれます」
開けられた場所の中を覗くと、若い女性が一人座っており、不意に視線が合う。
一瞬ドキッとして私が固まっていると、その隙にシェナに手首を引っ張られた。
「あ、ちょっと待って……」
「ルナ様、事情は全てお話します。イザナ様やゼロ様にお会いしたいのであれば、今は私達に従ってください」
私が抵抗しようとすると、今度はシェナの姉が口を開いた。
その言葉に困惑し、私は眉を顰めた。
ますます怪しく感じるが、彼女たちは間違いなくイザナやゼロのことを知っている。
となれば、本当に二人が用意した使いの可能性もある。
もちろん、その逆も可能性としてはあるが、ここに留まれば事情を知ることはできない。
そこで、私は覚悟を決めると「分かりました」と答え、馬車に乗り込んだ。
私の言葉を聞くと、二人は顔を見合わせるように安堵した表情を浮かべていた。
シェナは姉の隣に座り、私は二人と対面するように腰掛ける。
私が座ったのを確認すると、シェナの姉が「出して」と御者に向かって伝え、ゆっくりと馬車は走り始めた。
(大丈夫、だよね……)
不安は大きいが、いざとなったら隙を見て逃げればいい。
(まずは事情を探らないと……)
まさかこのアイリスで、こんなことになるなんて私は思ってもいなかった。
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