上 下
19 / 45

19.大事な話

しおりを挟む
体が包まれている感じでとても温かくて心地が良い。
そんな事を思いながら瞼をゆっくりと開くと薄っすらと広がる室内に視線を見渡した。

あれ?ここって私の部屋じゃ…ない?
まだ眠そうな顔で起き上がろうとした。
だけど何かに体に絡まっていて体を動かすことが出来ない。

私は自分の腰の方に視線を向けると誰かの手が私の事を抱きしめる様に置かれていた。
その瞬間意識を飛ばした前の記憶が蘇り、顔の奥が熱くなっていくのを感じた。

ゆっくりと後ろを振り返るとそこにはハーラルトの寝顔があった。
眠る顔も綺麗で、思わずドキドキしてしまう。
私はゆっくりと再び元の方へと顔を戻した。

どうしよう…!
胸の奥がバクバクと激しい音で脈だっている。
恥ずかしくて今にも逃げ出したいのに、腰をがっちり後ろから抱きしめられているから動けない。
それに気持ち良さそうに寝ているハーラルトを起こすのも悪い気がしてしまう。
私が頭の中で一人で葛藤していると、突然耳元に熱い吐息がかかりビクッと体が反応した。

「……っ!?……ぁっ…な…に?」
そしてそのまま耳朶を舐められゾクッと体が震える。
そのまま耐えてると舐められていた耳朶を甘噛みされ、さすがに耐えられなくなり後ろを振り返ろうとする。

「動いたら耳、可愛がってやれないよ」
「そんなの…っ…頼んでないっ…ぁっ…」
ハーラルトの熱い舌が私の耳の淵に添うように這って行く。
その度に卑猥な水音が頭の奥まで響いて来て、体をビクビクと震わせてしまう。

「やめていいの…?こうされるの好きな癖に」
「違っ…お願いだから…っ…耳元で囁かないでっ……っ」
私が震えた声で小刻みに体を震わせていると、ハーラルトは更に耳の奥に舌を滑り込ませてきた。
頭の中に響くいやらしい水音が更に鮮明に響いて、おかしくなりそうになる。

「ぁっ……それ…やだっ…」
「リリーがあまりにも可愛いから虐め過ぎたかな」
漸く解放されると、私は振り返り顔を赤く染めながらハーラルトを睨みつけた。

「耳も顔も真っ赤だな、可愛いよ…リリー」
「ハルの…意地悪っ…」
私が恥ずかしそうに怒ると「ごめん」と謝って来たけど、表情から愉しんでいるようにいる様に見えた。

「リリーのその態勢だと辛いだろ?こっちに体ごと向けて」
「……うん」
私は向かい合うように体の向きを変えると、真直ぐに見つめられドキドキしてしまう。

「さっきからリリーは興奮しているんだね」
「そ…んな事…ない…」

「知ってるよ。リリーの鼓動の音、早くなってるの…」
「……っ!!」
見透かしたように言われ恥ずかしさが込み上げますます顔が赤く染まっていく。

「本当に可愛いな、リリーは。…僕はそんなリリーが大好きだ」
ハーラルトは優しい声で言いながら私を見つめると唇に優しく口付けた。

「昨日はすまなかったな。優しくするつもりではいたんだが…リリーが余りにも可愛すぎて理性を保つことが出来なかった。激しくし過ぎてしまったけど体は平気か?」
「……っ……!」
思い出すと更に恥ずかしくなり、熱を持った顔をハーラルトの胸に押し込めて隠そうとした。

「思い出して照れているのか?本当に可愛い奴だな…」
「言わないでくださいっ…」
ハーラルトはそのまま私の事を抱きしめてくれた。




「リリー、大事な話があると言った事覚えてるか?」
暫くするとハーラルトが話始め、そう言えばそんな事を言っていたことを思い出した。

「大事な話って何ですか…?」
「リリーも知っているとは思うが、来月から社交シーズンに入る。一応僕は王子だから王家主催のものには出席しなくてはならない。そこでリリーを僕のパートナーにしたいと思っている」

「それって…」
「間違いなく周りはリリーが僕の婚約者候補であると思うだろうな。リリーにとっても悪い話ではないと思う。このままだとリリーは元婚約者に振られた憐れな令嬢だと周りは見るだろうからな、もう元婚約者の影に悩むのも嫌だろう?僕の事を利用してくれて構わないよ。まぁ…そう言う僕もリリーは自分のモノだと周りに誇示したいだけなんだけどな。」
『元婚約者』という言葉を聞いて私は表情を曇らせた。

たしかにハーラルトの言う通りだと思う。
世間は婚約者と取られた可哀そうな令嬢だと見られているのは知ってた。
いつまでもマティアスの影で悩むのは嫌だ。
もう私は前に歩き出した訳だし、ちょうど良いきっかけなんだと思う。

ハーラルトとはまだ婚約はしてないけど、体の関係も結んでしまった以上遅かれ早かれそうなることはもう決まったも同然だと思うし、この話を受けることに決めた。
私には迷いはもう無かった。

「リリーの気持ちに任せるよ。嫌ならはっきりそう言ってくれて構わない」
「いえ、是非そうさせてください。私はもう…前の婚約者の事で悩むのは嫌なんです…」
私がはっきりとした口調で答えると、ハーラルトは「そうか」と少し嬉しそうな顔で言った。


「リリーがそう言ってくれて嬉しいよ」
「どうぞ、よろしくお願いします」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

私の知らぬ間に

豆狸
恋愛
私は激しい勢いで学園の壁に叩きつけられた。 背中が痛い。 私は死ぬのかしら。死んだら彼に会えるのかしら。

離縁希望の側室と王の寵愛

イセヤ レキ
恋愛
辺境伯の娘であるサマリナは、一度も会った事のない国王から求婚され、側室に召し上げられた。 国民は、正室のいない国王は側室を愛しているのだとシンデレラストーリーを噂するが、実際の扱われ方は酷いものである。 いつか離縁してくれるに違いない、と願いながらサマリナは暇な後宮生活を、唯一相手になってくれる守護騎士の幼なじみと過ごすのだが──? ※ストーリー構成上、ヒーロー以外との絡みあります。 シリアス/ ほのぼの /幼なじみ /ヒロインが男前/ 一途/ 騎士/ 王/ ハッピーエンド/ ヒーロー以外との絡み

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

夜会の夜の赤い夢

豆狸
恋愛
……どうして? どうしてフリオ様はそこまで私を疎んでいるの? バスキス伯爵家の財産以外、私にはなにひとつ価値がないというの? 涙を堪えて立ち去ろうとした私の体は、だれかにぶつかって止まった。そこには、燃える炎のような赤い髪の──

国王陛下は愛する幼馴染との距離をつめられない

迷い人
恋愛
20歳になっても未だ婚約者どころか恋人すらいない国王ダリオ。 「陛下は、同性しか愛せないのでは?」 そんな噂が世間に広がるが、王宮にいる全ての人間、貴族と呼ばれる人間達は真実を知っていた。 ダリオが、幼馴染で、学友で、秘書で、護衛どころか暗殺までしちゃう、自称お姉ちゃんな公爵令嬢ヨナのことが幼い頃から好きだと言うことを。

処理中です...