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86.浴場で④※

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「一度、抜くよ」

 アレクシスは一言そう呟くと、ずるりと中に埋まっているもの引き抜いた。

「ぁああっ……!!」

 敏感になっている私の体は、少しの刺激でも簡単に反応してしまうようだ。
 引き抜かれる時にも、私は悲鳴のような声を上げた。
 そして完全に剥がされると、足元からは力が抜け、その場にずるずると座り込んでしまう。

「リリア、大丈夫か? 少し飛ばしすぎてしまったようだね。ごめん……」

 アレクシスは直ぐに私と同じ視線の高さになるようにしゃがむと、伸ばした両掌をそっと私の頬を当て、包むように触れてきた。
 心配そうに、そして少し申し訳なさそうに私の顔を覗き込む。

「だ、大丈夫です……」
「本当に?」

「はいっ……」
「それなら良かった」

 私は本気で心配してくる、アレクシスに動揺して慌てて答えた。
 この人は本当にどれだけ過保護なのだろうと、つい思ってしまう。
 だけど、私のことを常に気に掛けてくれることは嬉しい。
 元はと言えばアレクシスが激しくし過ぎたせいでもあるのだが、こんな態度を見せられてしまうと怒るに怒れなくなってしまう。

「あの、続きは……」

 私は恥ずかしそうにぽつりと呟いた。
 激しくされて私は一人で何度も果てていたが、アレクシスはきっとまだなのだろう。

「立ったままだとリリアが辛そうだし、続きは湯浴みを済ませた後にしようか」
「…………」

 アレクシスは私を気遣うように、そう言ってくれた。
 しかし、何となく嬉しくない。
 私は心なしか不満そうな顔を向けていた。

「なに?」
「私ばっかりイかされて、なんかずるいです」

 私の発言にアレクシスは一瞬驚いた表情を見せるが、直ぐにその顔は緩み、口端を上げてクスッと小さく笑った。

「本当に、リリアは可愛いことばかり言うね。それって遠回しにまだ足りないって言っているの?」
「ち、ちがっ……!」

「リリアが大丈夫だと言うのであれば続けるけど、本当にいいの? 次は私が満足するまで止めてあげないよ?」
「……っ、構いません。アレクシス様にも、私で気持ち良くなって欲しい……からっ……」

 言い終わると自分でも分かるほどに、顔が熱に包まれていた。
 こんなことを言ってしまった自分が恥ずかしくて堪らない。

「そこまでいうのなら、続きをしようか? 本当にいいんだね? 後悔しない?」
「し、しませんっ!」

 何度も念を押してくるアレクシスに、私は勢いよく言い放った。
 するとアレクシスはゆっくりと立ち上がった。
 そして私の手を取って引き上げてくれた。

「さすがに立ったままっていうのはリリアが辛そうだから、体勢を変えようか。リリア、鏡に背を向けるように立って」
「……? 分かりました」

 私はアレクシスが何を考えているのか分からないまま、彼の指示に従うように壁に背を向けて立った。

「次は私の首にしっかりと手を巻き付けていて。離したらだめだよ」
「は、はいっ」

 私はアレクシスと鏡に挟まれるようになり、彼の首に両手を巻き付けた。
 これは抱きついているのと同じような体勢であり、私の心拍数は上がっていく。
 しかしアレクシスは更に指示を続けていった。

「次は片足を貰うよ」
「え?」

 アレクシスは返答を聞く前に、私の内膝を抱えるようにして持ち上げた。
 すると自然と折り曲げるような形になってしまい、私は戸惑っていた。

(何をするつもりなの……?) 

「リリア、そのまま大人しくしていてね」
「は、はい……?」

 彼は私の片足を持ち上げたまま、中心の疼いている場所に熱杭を押し当てた。
 
「ぁっ、や、ぁっ……んっ」
「リリアはこうやって擦られるの好きだよね。もう厭らしい声が漏れてるよ。それに、この体勢だとリリアの善がっている顔が目の前で見えて私も興奮するな」

 アレクシスは滾った己の欲望を私の中には入れず、焦らすかのように蜜口に何度も擦り付けてくる。
 それに相まって、彼の羞恥心を煽るような言葉に、再び体の奥が痺れるように疼き始める。

「そ、ん……なに、みな、いでっ……」
「見せて。リリアの全てを私は見たいし、知りたいからね」

 彼は当然のように私の言葉を否定する。
 熱の帯びた鋭い瞳を真っ直ぐに向けられて、私が我慢なんて出来るはずもなかった。
 恥ずかしさから逃れるように、強制的に視線を遮断した。

「リリアはそうやって直ぐに逃げようとする。だから追いかけたくなるんだよ」

 目を瞑っていると、そんな声が響いてきた。
 そして唇に温かいものが重ねられ、啄むようなキスを浴びせられる。
 両方の入り口から甘い誘惑にも似た刺激を与えられ、私の体は再び溶けるように力が抜けていってしまう。

 しかし、そんな一時の快楽に酔いしれていると、蜜口を大きく広げられ、質量を増した彼の塊が私の中へと入ってきた。
 それはとてもゆっくりで、だからこそ、その感覚がはっきりと肌へと伝わってくる。
 
「リリア、そのままちゃんと私の首に手を回しているんだよ。落ちたら大変だからね」
「……?」

 私はその意味が分からないまま、甘いキスに酔いしれていた。
 アレクシスの掌が、私のもう片方の太腿を撫でていることには気付いていた。
 キスに夢中になっていた私は、それ程気にしてはいなかった。
 しかし、突然先程と同じように内膝に彼の腕が巻き付く。
 そして、ふわっと体が浮き上がった。

「……っ!?」

 私はその浮遊感に驚いてキスを止め、しがみ付くようにアレクシスの首にしっかりと抱きついた。

「驚かせちゃった?」
「な、なに!?」

「リリアの足が疲れないように持ち上げたんだよ。私はこれでもそれなりに鍛えているからね。リリアくらい簡単に持ち上げられるよ」
「び、びっくした……。いきなり驚かせないでください」

 私はアレクシスの首元に顔をおきながら、文句を言い始めた。
 その後「ごめんね」と彼が謝ってきたのだが、少しの振動を感じると、私の中で埋まっているものが蠢き、ビクッと体を震わせてしまう。

「やっ、これ……ぁっ、ひぁっ……」
「ふふっ、今のリリアは完全に私の手の中にいるね。これなら逃げるなんてことは無理かな」

 アレクシスは私を抱き上げたまま、下から突き上げてくる。
 彼が動く度にその身は大きく揺さぶられ、自分の重力によってより深い所まで当たってしまう。

「ぁあっ、だめっ、これ、むりっ……ひ、ぁああっ!!」
「ふふっ、ずっと奥に当たっているね」

 私は落とされないように彼にしがみつきながら、嬌声を上げることしか出来ない。

「また何度もイかせてあげるよ。リリアが望んだことなのだから、私が満足するまで解放はしないよ」
「ぁああっ、やぁっ、……まっ、……っっ!! これ、変になるっ……だめっ、ほんとにっ……」

 私は力なく首を横に振って必死に抵抗するも、彼の腰が止まることはない。
 強弱を付けるように色々な刺激を与えられて、私の頭の中は早くも真っ白になりそうだった。

「はぁっ……や、ぁっ……んぅっ……」
「可愛いな。本当に……。リリアが退屈しないように、折角だから耳も可愛がってあげようか」

「だ、だめっ……。そんなことされたら、おかしく、なっちゃうっ……」

 私はしがみついている腕の力を緩めると、顔を元の位置に戻した。

「それなら、リリアからキスして?」
「……っ」

 私は一度躊躇してしまうも、少し考えたあと「わかりました」と告げて彼の唇に自ら口付けた。
 いつもアレクシスがしてくれるように、最初は触れるだけのキスから始めて、啄むように何度も唇を重ねる。
 暫くするとアレクシスの舌先が伸びてきて、私自らも舌先を伸ばしてそれに絡め始めた。

(私、今すごくはしたないことをしてる……)

 そう思う反面、そんなことをしてしまう自分自身に興奮していた。

「はぁっ……んぅっ」
「そのままキスを続けていて。私もそろそろ限界だから、一度このまま果てさせてもらうよ」

 アレクシスの言葉に反応してしまうが、私はそのままキスを続けていた。
 徐々に下からの突き上げが激しくなり、唇が離れ、私の口元からは再び嬌声が漏れ始める。

「ぁああっ、や、ぁ……っっ!!」
「ふふ、リリアは本当に簡単に果ててしまうね。搾り取るようにそんなに締め付けて……。私のためにしてくれているの?」

「ち、がっ……かってに、ぁあああっ!!」
「……っ、そんなに締め付けられると、私ももう……っ」

 アレクシスの息遣いが荒々しいものに変わる。
 お互いの肌は汗ばみ、どれだけ興奮しているのかが伝わってくるようだ。
 私は甲高い声を上げて深い絶頂を迎えると、それから間もなくして中に熱いものが放たれている感覚に気付いた。

(奥に、出てる……)

 私はアレクシスに再びしがみつくように抱きつきながら、呼吸を整えるように大きく肩を揺らしていた。
 耳元からは彼の荒々しい吐息も響いてくる。

「リリア、大丈夫か?」
「……は、い、なんっ、とか……」

 私は気恥ずかしさを感じて、彼と目を合わせることが出来なかった。
 私がいつまでも首元にくっついていると、アレクシスは「しがみつくリリアは、小動物みたいで可愛いらしいね」と冗談を言われ、私は慌てて顔を元の位置に戻した。
 そして彼と視線が合い、大きく鼓動が揺れる。
 
 アレクシスは私の顔を見るなり、嬉しそうに言った。

「やっとこっちを見てくれたね」
「……っ」

 その言葉に私の心臓は飛び跳ねる。
 そしてカーッと顔の奥が一気に熱くなる。

「どうしたの? また照れているのか?」
「ち、ちがいますっ、……あの、早く下ろしてください。アレクシス様も、いつまでもこの体勢はちょっと辛いですよね」 

 私は慌てるように答えた。
 アレクシスを気遣うような言葉に聞こえるが、これは自分の為に出た台詞だ。
 いつまでもこの状態が続けば、私は逃げることも隠れることも出来ない。
 だけど、私のその考えは当然彼には見抜かれていた。

「問題ないよ。さっきも言っただろう。リリア程度ならいくらだって抱えていられるよ。それに私はまだ満足していないからね」
「……っ」

 つい数秒前に私の中に彼の精が放たれたばかりだというのに、埋まっている塊は萎えることなく、再び存在感を私に知らしめてくる。

(うそ……)

 私は引き攣った顔を浮かべてしまうが、アレクシスはにっこりと清々しいほどに微笑んでいた。

「最初はゆっくりにするから。また一緒に気持ち良くなろう」
「……っ」

 私はこのあと、浴場の中でぐったりするまで彼に愛された。
 そして当然それだけで終わることもなく、ここを出た後はベッドの上で朝まで抱き潰されたのであった。
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