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12.王子からの提案②
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「ところで、リリアはこれからどこで生活するつもりなの? さすがに住む場所までは用意していないよね?」
「そうですね。婚約破棄をされるとは思っていなかったので、そこまでは考えていませんでした。とりあえず職が見つかるまでは、王都の宿屋に滞在しようと思っています。暫くは節約生活になりそうです」
今まで大きな屋敷で、身の回りのことは全て使用人が手伝ってくれた。
食事も当たり前の様に用意されていたし、衣食住で困ることは一切無かった。
しかし貴族をやめるということは、今まで当たり前のようにされていたことを、これからは全て自分の力でやらなければならないということだ。
一人で生活していく上で一番必要なものは、まずはお金だろう。
当面の間は資金面で困ることはないとは思うが、生活を安定させるために早めに職を見つけたいと考えている。
「王都には巡回騎士や、常駐している兵士もいるから比較的安全とされているけど、危険な場所も存在しているからね。危ないところには決して近づいたらいけないよ」
「分かっています。なるべく南地区には近づかないようにします」
王都というくらいなので、ここに生活の拠点を置いている者は多い。
そして貿易も盛んなので、各地から色々な者達がこの国に入ってくる。
いい意味でも、悪い意味にも取れるということだ。
王城の近くには貴族が暮らすタウンハウスが多くあり、貴族街と呼ばれる高価なものを取り扱う店が並び、警備も厚い。
そして中央の一番広い地帯が、一般地区と言われている場所だ。
常に活気に溢れていて、多くの商店が開かれ、各地から色々な者達が訪れる。
冒険者ギルドもここに存在している。
最後に南地区と言うのは一番治安が悪いとされている場所だ。
放浪者やならず者が集まっているとか、闇市があるなどと噂で聞いたことがある。
当然危険な場所とされているので、一度も近づいたことはない。
「それがいい。節約と言っていたから、住居は一般地区で探すの?」
「そのつもりです。近くにはギルドもあるので。暫くはここにお世話になるかもしれませんし」
「まさかとは思うけど、冒険者になろうなんて思っていないよね?」
「え? それは考えていませんでした。だけど補助魔法も少し使えるし、その方向で考えるのもありかもしれませんね」
仕事が中々見つからなかった場合、冒険者として活動するのもありなのかもしれない。
たしか……、討伐の他に採取や護衛などの依頼もあると聞いたことがある。
「リリア、危ないことは駄目だよ」
「大丈夫です。学園の授業で実践もありましたし」
「それはあくまでも授業の一環としての話だろう。最初から安全が約束されていた戦闘だ。本来の魔物は時として想定外な行動に出たり、思っている以上の力を持っていたりするものだ。言い方は悪いけど、温室育ちだったリリアに冒険者は無理だよ」
「…………」
アレクシスの言うとおりだと思う。
彼は今まで騎士として、最前線で多くの魔物と戦ってきた人間だ。
きっと危険な場所に行く機会も多かったと思うし、それこそ命がけで戦ってきたに違いない。
そんな相手に、ちょっと授業で戦ったくらいで出来る気になって、『大丈夫』なんて言ってしまった自分が恥ずかしい。
アレクシスの前で、何も考えずに発言してしまった事を深く後悔した。
(今のは完全に軽率な発言だった……)
私は表情を曇らせ、唇をきゅっと噛み締めた。
嫌われてしまったらどうしよう、と不安を感じていた。
「少し言い方がきつくなってしまったな。すまない。自分の実力を見誤って、早死にしていく者を多く見てきたから心配なんだ」
「ごめんなさい……」
「謝らないで。これは私が勝手に心配しているだけだから、ね。だけどこれから屋敷の外で生活することになるのなら、ある程度の護身術は身に付けておいた方がいいかもしれないな」
「……え?」
アレクシスは考えた様にブツブツと呟き始めていた。
先程の私の失言を思った程気にしていないみたいで内心ほっとしていた。
(良かった。これからはもうちょっと考えて発言しないと……)
「そうですね。婚約破棄をされるとは思っていなかったので、そこまでは考えていませんでした。とりあえず職が見つかるまでは、王都の宿屋に滞在しようと思っています。暫くは節約生活になりそうです」
今まで大きな屋敷で、身の回りのことは全て使用人が手伝ってくれた。
食事も当たり前の様に用意されていたし、衣食住で困ることは一切無かった。
しかし貴族をやめるということは、今まで当たり前のようにされていたことを、これからは全て自分の力でやらなければならないということだ。
一人で生活していく上で一番必要なものは、まずはお金だろう。
当面の間は資金面で困ることはないとは思うが、生活を安定させるために早めに職を見つけたいと考えている。
「王都には巡回騎士や、常駐している兵士もいるから比較的安全とされているけど、危険な場所も存在しているからね。危ないところには決して近づいたらいけないよ」
「分かっています。なるべく南地区には近づかないようにします」
王都というくらいなので、ここに生活の拠点を置いている者は多い。
そして貿易も盛んなので、各地から色々な者達がこの国に入ってくる。
いい意味でも、悪い意味にも取れるということだ。
王城の近くには貴族が暮らすタウンハウスが多くあり、貴族街と呼ばれる高価なものを取り扱う店が並び、警備も厚い。
そして中央の一番広い地帯が、一般地区と言われている場所だ。
常に活気に溢れていて、多くの商店が開かれ、各地から色々な者達が訪れる。
冒険者ギルドもここに存在している。
最後に南地区と言うのは一番治安が悪いとされている場所だ。
放浪者やならず者が集まっているとか、闇市があるなどと噂で聞いたことがある。
当然危険な場所とされているので、一度も近づいたことはない。
「それがいい。節約と言っていたから、住居は一般地区で探すの?」
「そのつもりです。近くにはギルドもあるので。暫くはここにお世話になるかもしれませんし」
「まさかとは思うけど、冒険者になろうなんて思っていないよね?」
「え? それは考えていませんでした。だけど補助魔法も少し使えるし、その方向で考えるのもありかもしれませんね」
仕事が中々見つからなかった場合、冒険者として活動するのもありなのかもしれない。
たしか……、討伐の他に採取や護衛などの依頼もあると聞いたことがある。
「リリア、危ないことは駄目だよ」
「大丈夫です。学園の授業で実践もありましたし」
「それはあくまでも授業の一環としての話だろう。最初から安全が約束されていた戦闘だ。本来の魔物は時として想定外な行動に出たり、思っている以上の力を持っていたりするものだ。言い方は悪いけど、温室育ちだったリリアに冒険者は無理だよ」
「…………」
アレクシスの言うとおりだと思う。
彼は今まで騎士として、最前線で多くの魔物と戦ってきた人間だ。
きっと危険な場所に行く機会も多かったと思うし、それこそ命がけで戦ってきたに違いない。
そんな相手に、ちょっと授業で戦ったくらいで出来る気になって、『大丈夫』なんて言ってしまった自分が恥ずかしい。
アレクシスの前で、何も考えずに発言してしまった事を深く後悔した。
(今のは完全に軽率な発言だった……)
私は表情を曇らせ、唇をきゅっと噛み締めた。
嫌われてしまったらどうしよう、と不安を感じていた。
「少し言い方がきつくなってしまったな。すまない。自分の実力を見誤って、早死にしていく者を多く見てきたから心配なんだ」
「ごめんなさい……」
「謝らないで。これは私が勝手に心配しているだけだから、ね。だけどこれから屋敷の外で生活することになるのなら、ある程度の護身術は身に付けておいた方がいいかもしれないな」
「……え?」
アレクシスは考えた様にブツブツと呟き始めていた。
先程の私の失言を思った程気にしていないみたいで内心ほっとしていた。
(良かった。これからはもうちょっと考えて発言しないと……)
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