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30.大事にしてくれる人
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私は救出されると、入り口で待機してあった馬車に乗り込んだ。
「シンリー、悪いけど少しだけ待っててもらえないか?少し兵士と話をしてくる…」
「……はい」
私が不安そうな顔でルカルドを見つめると、ルカルドは私の手をぎゅっと握り優しい表情をした。
「この馬車は安全だ。王家直属の従者を数名付けている…だから安心していい。俺もすぐ戻って来るから、少しだけ待っていて…」
「わかりました…」
私が小さく答えると、ルカルドは「ありがとう」と言って馬車を離れた。
ルカルドが居なくなり私は色々考えていた。
記憶の一部を取り戻したことで、ラヴィニアの死は病死ではない事が明らかになった。
ルカルドの考えは間違っていなかったのだ。
だけど…どうしてオルヴィス帝国はラヴィニアの死を病死と発表させたのだろう。
思いたくはないけど、お父様が私を殺させるように指示させた…?
ううん、多分違う。
記憶で見た誘拐犯は、お父様が誰かを怒らせたと話していた。
その人物こそ、私を消そうとした黒幕なのだろう…。
過去にお父様になにかしらされて恨みを持っている人物なのだろうが、お父様は皇帝だ。
そんな頂点に立つ人間だからこそ、敵は数えられないくらい大勢いるのかもしれない。
その中から絞り出すのは不可能に近い。
でも私を誘拐することが出来る者と考えると、ある程度は絞られてくる。
私の行動を把握していること、そして皇女である私と距離が近い者。
ルカルドが言うように、やっぱり身内に私の誘拐を指示した者がいるのかもしれない…。
***
そんなことを考えていると、馬車の入口が開き息を切らしながらルカルドが戻って来た。
「ルカ様…、走って来てくれたんですか?」
「1秒でも早くシンリーの顔が見たかった…」
ルカルドの言葉に私はドキッとしてしまった。
(ルカ様は私がラヴィニアだと知ったら…どう思うんだろう…)
ルカルドが合図をすると馬車は走り始めた。
「とりあえず、学園に戻ろう。今日は疲れただろ…?」
「はい…。折角のルカ様との…デートだったのに…」
私が残念そうに答えるとルカルドは小さく笑った。
「デートならまた今度行けばいい。俺はシンリーとなら毎週だって構わないからな…」
「……っ…!」
突然そんなことを言われてしまうと、嬉しさと恥ずかしさから私は顔を赤く染めてしまった。
ルカルドは本当に私を喜ばせる天才だ。
私はいつだってルカルドの言葉に反応して、一人で一喜一憂してしまう。
ルカルドの存在は私にとってはそれだけ大きなものになっていた。
「こんな時だけど、シンリーに渡すものがあるんだ。シンリーを待たせてる間、これを取りに行ってた…」
「え…?」
ルカルドはポケットから小箱を取り出し、私に渡した。
私は受け取り「開けてもいいですか?」と聞くと、ルカルドは小さく頷いた。
箱を開けると琥珀色の花の形をした可愛らしい髪飾りが入っていた。
私は手に取り、暫くじっと見つめていた。
(すごく可愛い…。それにこの色って…私の瞳の色と一緒だ…)
「気に入ってくれたら、付けてくれると嬉しい…」
「もちろんですっ…!すごく可愛い…、本当に私がもらってしまっていいんですか?」
「ああ、シンリーの為だけにつくらせたからな」
「ありがとうございます…っ…、大事にしますね!」
私は嬉しそうに笑顔で答えると、ルカルドも優しく笑んでいた。
ルカルドはいつだって私の味方でいてくれて、大事にしてくれる。
ルカルドなら信じられる。
だから私は決心した。
私の記憶の真相をルカルドに伝えることを…。
ずっと知りたかったラヴィニアの真実を…。
だけどそのことを伝えたら、ルカルドはどう思うんだろう。
「シンリー、悪いけど少しだけ待っててもらえないか?少し兵士と話をしてくる…」
「……はい」
私が不安そうな顔でルカルドを見つめると、ルカルドは私の手をぎゅっと握り優しい表情をした。
「この馬車は安全だ。王家直属の従者を数名付けている…だから安心していい。俺もすぐ戻って来るから、少しだけ待っていて…」
「わかりました…」
私が小さく答えると、ルカルドは「ありがとう」と言って馬車を離れた。
ルカルドが居なくなり私は色々考えていた。
記憶の一部を取り戻したことで、ラヴィニアの死は病死ではない事が明らかになった。
ルカルドの考えは間違っていなかったのだ。
だけど…どうしてオルヴィス帝国はラヴィニアの死を病死と発表させたのだろう。
思いたくはないけど、お父様が私を殺させるように指示させた…?
ううん、多分違う。
記憶で見た誘拐犯は、お父様が誰かを怒らせたと話していた。
その人物こそ、私を消そうとした黒幕なのだろう…。
過去にお父様になにかしらされて恨みを持っている人物なのだろうが、お父様は皇帝だ。
そんな頂点に立つ人間だからこそ、敵は数えられないくらい大勢いるのかもしれない。
その中から絞り出すのは不可能に近い。
でも私を誘拐することが出来る者と考えると、ある程度は絞られてくる。
私の行動を把握していること、そして皇女である私と距離が近い者。
ルカルドが言うように、やっぱり身内に私の誘拐を指示した者がいるのかもしれない…。
***
そんなことを考えていると、馬車の入口が開き息を切らしながらルカルドが戻って来た。
「ルカ様…、走って来てくれたんですか?」
「1秒でも早くシンリーの顔が見たかった…」
ルカルドの言葉に私はドキッとしてしまった。
(ルカ様は私がラヴィニアだと知ったら…どう思うんだろう…)
ルカルドが合図をすると馬車は走り始めた。
「とりあえず、学園に戻ろう。今日は疲れただろ…?」
「はい…。折角のルカ様との…デートだったのに…」
私が残念そうに答えるとルカルドは小さく笑った。
「デートならまた今度行けばいい。俺はシンリーとなら毎週だって構わないからな…」
「……っ…!」
突然そんなことを言われてしまうと、嬉しさと恥ずかしさから私は顔を赤く染めてしまった。
ルカルドは本当に私を喜ばせる天才だ。
私はいつだってルカルドの言葉に反応して、一人で一喜一憂してしまう。
ルカルドの存在は私にとってはそれだけ大きなものになっていた。
「こんな時だけど、シンリーに渡すものがあるんだ。シンリーを待たせてる間、これを取りに行ってた…」
「え…?」
ルカルドはポケットから小箱を取り出し、私に渡した。
私は受け取り「開けてもいいですか?」と聞くと、ルカルドは小さく頷いた。
箱を開けると琥珀色の花の形をした可愛らしい髪飾りが入っていた。
私は手に取り、暫くじっと見つめていた。
(すごく可愛い…。それにこの色って…私の瞳の色と一緒だ…)
「気に入ってくれたら、付けてくれると嬉しい…」
「もちろんですっ…!すごく可愛い…、本当に私がもらってしまっていいんですか?」
「ああ、シンリーの為だけにつくらせたからな」
「ありがとうございます…っ…、大事にしますね!」
私は嬉しそうに笑顔で答えると、ルカルドも優しく笑んでいた。
ルカルドはいつだって私の味方でいてくれて、大事にしてくれる。
ルカルドなら信じられる。
だから私は決心した。
私の記憶の真相をルカルドに伝えることを…。
ずっと知りたかったラヴィニアの真実を…。
だけどそのことを伝えたら、ルカルドはどう思うんだろう。
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