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2.夢の世界に…?
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私はぼーっとした頭で昨日の事を思い出すと、最後に見たバルにキスをされている場面を思い出してしまい、顔の奥が一気に熱くなる。
「……っ…なんだったの…昨日の夢…。絶対私の存在に気付いてたよね…、あんなこと今まではなかったのに…」
――それに…夢の筈なのに唇に触れられた感触が今でも残っている様な気がする。
そんな事有り得ない筈なのに…。
私は気付くと自分の唇を指でなぞっていた。
(キスされるの初めてだったな…。本当にされたら…あんな感触なのかなぁ…)
「……って何考えてるの、私…。はぁ…相当重症なのかもしれないな…」
自嘲する様に苦笑すると、私はベッドから起き上がった。
そしてクローゼットの方に移動すると白いワンピースが目に入った。
私はそれを手に取ると着替え始め、その後にメイク、髪のセットと続けていく。
「よし、こんな感じでいいかな」
鏡の前に映る自分を見て納得すると、時計の方に視線を向けた。
「やばっ…もうこんな時間…。急がないと電車に乗り遅れる…!」
私は慌てて鞄を手に取ると玄関に向かい、靴を履いて扉に手を伸ばした。
その瞬間眩しい程の光に包まれる。
(……っ!?眩しっ……な…なに…?)
余りの眩しさに目を開けていられなくなり、私はぎゅっと強く瞑ってしまった。
暫くしてゆっくりと目を開けると先ほどの眩しさは嘘のように消えていた。
そして私は見慣れた玄関に突っ立っていた。
「一体…なんだったの…?」
私は唖然とした顔で辺りに視線を向けるが、普段見る玄関と変わりない風景がそこにはあった。
(何も変わったところは無さそう…だよね…?……って、こんな事を考えてる場合じゃなかった…!急がないと本当に遅刻しちゃうっ…!)
私はハッと我に返り慌てて扉を開くと、今度は見慣れない風景が広がっていた。
***
(……ここは…どこ…?)
大きな部屋だけど周りには家具なども無く、殺風景な印象だった。
そして足元には大きな魔法陣の様な模様が描かれていて、私はその中心に立っていた。
私は戸惑いながら辺りをキョロキョロと落ち着きがなく見渡していると、カツカツと靴が鳴る音に気付きそちらの方へと視線を向ける。
そこにいたのは金髪碧眼で端麗な顔立ちをしている男の姿だった。
その姿には見覚えがあり、それが誰なのかも直ぐに気付いた。
「ああ…今回はちゃんと部屋の中に召喚出来たみたいだね…。良かったよ…」
男は安堵した様な表情で呟くと、私の前でピタリと足を止めた。
私の目の前に立っているのは、ここ毎晩夢に出て来る『バル』と呼ばれる男だった。
真っ白な貴族が着るような衣装を身に纏い、身に着けている装飾品はどれもキラキラと光輝いて見えた。
夢の中では服を着ていない姿だったので、少し不思議な感じだった。
きっとそれは私の世界ではあまり見慣れない、簡単に言えばコスプレの様な服装をしているからだろう…。
「……バル…?」
私は思わず口に出してしまうと、バルはにっこりと優しく微笑んだ。
その表情にドキッとして、私の鼓動は早くなる。
「うん…。僕の事、覚えていてくれたんだね…、嬉しいよ。一応自己紹介はさせてもらうね、僕の名前はバルハルト・エグナー・エーレンベルク。一応この国の第三王子だ…。僕の事は今まで通りバルって呼んでくれたら嬉しいかな…」
「……第三王子?」
私はその言葉に首を傾げた。
私はバルについては『バル』という名前以外の事は一切知らなかったからだ。
だけど王子と聞いて『やっぱり…』と納得はしていた。
(やっぱり王子だったんだ。雰囲気からそんな感じはしていたけど…)
「あれ…?僕が第三王子であることは覚えて無いのかな?……全ての記憶は戻ってないと言う事か…」
バルは何やらブツブツと独り言を呟いている様だった。
「あ、あのっ…」
「ん…?どうしたの…?シロ…?」
バルは私に向かい『シロ』と呼んでいた。
それを聞いて私は確信した。
ここは夢の世界であるのだと言う事に…。
「どうして…私はここに…」
「それは…僕が君の事を呼んだからね。シロは僕にとって…大切な人だから…」
「大事な人って……運命の…番…?」
私は夢の中でバルが言っていた言葉を思い出し、口に出してみた。
するとバルは「そうだよ」と優しい口調で答えた。
「シロは僕にとって特別な女性だ。シロにとって僕もそんな存在だと嬉しいんだけど…多分シロはその辺は何も覚えて無いよね…?」
「……ごめんなさい…」
バルは何処か切なげな表情を浮かべていて、私は少し申し訳ない気持ちになってしまう。
ここは私の夢の世界なのだから、そんなこと気にする必要は無いのだと思う。
だけど切なそうな顔をされると、何とも言えない気持ちになってしまう。
(ここって…夢の中…だよね…?でも今までは遠くから眺めていたけど、今回は私がシロの中に入り込んでるって事なのかな…?……ってことは、毎晩見ているあんなこと…されちゃうってこと…?)
私は突然そんな事を考えてしまうと恥ずかしくなり、顔の奥が一気に熱くなっていくのを感じていた。
「……シロ?」
「え…?あ…、な…なんでもないですっ…」
私は真っ赤になった顔で慌てて答えた。
「随分と顔が真っ赤だけど…どこか体調的に良くない所はあるのかな?」
「どこも、問題ないですっ…、大丈夫ですっ…」
バルは心配そうな顔で私の顔を覗き込んで来た。
私は「お願いだからそんなに近づかないでっ!」と心の中で叫んでいた。
「やっぱり顔は赤い様だね…。少し心配だな…。とりあえずシロの部屋は用意してあるから、そこで少し休むといい」
「本当に私っ…大丈夫ですからっ…」
バルは本気で心配してくれている様なのに、私はいやらしい想像をして顔を赤く染めていることに恥ずかしくなった。
「ふふっ、僕に遠慮は不要だよ。今日はこちらの世界に来たばかりで、身体的に何か影響が出るかもしれないから…ゆっくり休んで欲しい。僕にとってシロは本当に大切な存在だから、無理はさせたくないんだ…。分かってくれると…嬉しいかな…」
「……わかりました…」
「分かってくれて感謝するよ。部屋を案内するから、僕に付いて来て…」
「……っ…なんだったの…昨日の夢…。絶対私の存在に気付いてたよね…、あんなこと今まではなかったのに…」
――それに…夢の筈なのに唇に触れられた感触が今でも残っている様な気がする。
そんな事有り得ない筈なのに…。
私は気付くと自分の唇を指でなぞっていた。
(キスされるの初めてだったな…。本当にされたら…あんな感触なのかなぁ…)
「……って何考えてるの、私…。はぁ…相当重症なのかもしれないな…」
自嘲する様に苦笑すると、私はベッドから起き上がった。
そしてクローゼットの方に移動すると白いワンピースが目に入った。
私はそれを手に取ると着替え始め、その後にメイク、髪のセットと続けていく。
「よし、こんな感じでいいかな」
鏡の前に映る自分を見て納得すると、時計の方に視線を向けた。
「やばっ…もうこんな時間…。急がないと電車に乗り遅れる…!」
私は慌てて鞄を手に取ると玄関に向かい、靴を履いて扉に手を伸ばした。
その瞬間眩しい程の光に包まれる。
(……っ!?眩しっ……な…なに…?)
余りの眩しさに目を開けていられなくなり、私はぎゅっと強く瞑ってしまった。
暫くしてゆっくりと目を開けると先ほどの眩しさは嘘のように消えていた。
そして私は見慣れた玄関に突っ立っていた。
「一体…なんだったの…?」
私は唖然とした顔で辺りに視線を向けるが、普段見る玄関と変わりない風景がそこにはあった。
(何も変わったところは無さそう…だよね…?……って、こんな事を考えてる場合じゃなかった…!急がないと本当に遅刻しちゃうっ…!)
私はハッと我に返り慌てて扉を開くと、今度は見慣れない風景が広がっていた。
***
(……ここは…どこ…?)
大きな部屋だけど周りには家具なども無く、殺風景な印象だった。
そして足元には大きな魔法陣の様な模様が描かれていて、私はその中心に立っていた。
私は戸惑いながら辺りをキョロキョロと落ち着きがなく見渡していると、カツカツと靴が鳴る音に気付きそちらの方へと視線を向ける。
そこにいたのは金髪碧眼で端麗な顔立ちをしている男の姿だった。
その姿には見覚えがあり、それが誰なのかも直ぐに気付いた。
「ああ…今回はちゃんと部屋の中に召喚出来たみたいだね…。良かったよ…」
男は安堵した様な表情で呟くと、私の前でピタリと足を止めた。
私の目の前に立っているのは、ここ毎晩夢に出て来る『バル』と呼ばれる男だった。
真っ白な貴族が着るような衣装を身に纏い、身に着けている装飾品はどれもキラキラと光輝いて見えた。
夢の中では服を着ていない姿だったので、少し不思議な感じだった。
きっとそれは私の世界ではあまり見慣れない、簡単に言えばコスプレの様な服装をしているからだろう…。
「……バル…?」
私は思わず口に出してしまうと、バルはにっこりと優しく微笑んだ。
その表情にドキッとして、私の鼓動は早くなる。
「うん…。僕の事、覚えていてくれたんだね…、嬉しいよ。一応自己紹介はさせてもらうね、僕の名前はバルハルト・エグナー・エーレンベルク。一応この国の第三王子だ…。僕の事は今まで通りバルって呼んでくれたら嬉しいかな…」
「……第三王子?」
私はその言葉に首を傾げた。
私はバルについては『バル』という名前以外の事は一切知らなかったからだ。
だけど王子と聞いて『やっぱり…』と納得はしていた。
(やっぱり王子だったんだ。雰囲気からそんな感じはしていたけど…)
「あれ…?僕が第三王子であることは覚えて無いのかな?……全ての記憶は戻ってないと言う事か…」
バルは何やらブツブツと独り言を呟いている様だった。
「あ、あのっ…」
「ん…?どうしたの…?シロ…?」
バルは私に向かい『シロ』と呼んでいた。
それを聞いて私は確信した。
ここは夢の世界であるのだと言う事に…。
「どうして…私はここに…」
「それは…僕が君の事を呼んだからね。シロは僕にとって…大切な人だから…」
「大事な人って……運命の…番…?」
私は夢の中でバルが言っていた言葉を思い出し、口に出してみた。
するとバルは「そうだよ」と優しい口調で答えた。
「シロは僕にとって特別な女性だ。シロにとって僕もそんな存在だと嬉しいんだけど…多分シロはその辺は何も覚えて無いよね…?」
「……ごめんなさい…」
バルは何処か切なげな表情を浮かべていて、私は少し申し訳ない気持ちになってしまう。
ここは私の夢の世界なのだから、そんなこと気にする必要は無いのだと思う。
だけど切なそうな顔をされると、何とも言えない気持ちになってしまう。
(ここって…夢の中…だよね…?でも今までは遠くから眺めていたけど、今回は私がシロの中に入り込んでるって事なのかな…?……ってことは、毎晩見ているあんなこと…されちゃうってこと…?)
私は突然そんな事を考えてしまうと恥ずかしくなり、顔の奥が一気に熱くなっていくのを感じていた。
「……シロ?」
「え…?あ…、な…なんでもないですっ…」
私は真っ赤になった顔で慌てて答えた。
「随分と顔が真っ赤だけど…どこか体調的に良くない所はあるのかな?」
「どこも、問題ないですっ…、大丈夫ですっ…」
バルは心配そうな顔で私の顔を覗き込んで来た。
私は「お願いだからそんなに近づかないでっ!」と心の中で叫んでいた。
「やっぱり顔は赤い様だね…。少し心配だな…。とりあえずシロの部屋は用意してあるから、そこで少し休むといい」
「本当に私っ…大丈夫ですからっ…」
バルは本気で心配してくれている様なのに、私はいやらしい想像をして顔を赤く染めていることに恥ずかしくなった。
「ふふっ、僕に遠慮は不要だよ。今日はこちらの世界に来たばかりで、身体的に何か影響が出るかもしれないから…ゆっくり休んで欲しい。僕にとってシロは本当に大切な存在だから、無理はさせたくないんだ…。分かってくれると…嬉しいかな…」
「……わかりました…」
「分かってくれて感謝するよ。部屋を案内するから、僕に付いて来て…」
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